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107号 アイスホッケー試合でのCOVID-19アウトブレイク
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米国のアイスホッケー試合でCOVID-19アウトブレイクが発生した。その調査結果がCDCの週報(MMWR)に記載されているので紹介する1)

アウトブレイク

2020年6月16日、フロリダ州タンパベイ地区のアイスリンクでレクリエーションのアイスホッケー試合が行われた。チームAとBは、それぞれ11人のプレーヤー(氷上で6人、ベンチで5人)で構成され、19~53歳の男性が含まれていた。試合後5日間で、15人(22人のプレーヤーのうち14人、およびリンクスタッフ)がCOVID-19症状を経験し、それら15人のうち13人は、SARS-CoV-2の臨床検査が陽性となった[図1]。

図1

発端患者

  • 2020年6月19日、フロリダ州保健局は、チームAのプレーヤー(発端患者)がイブニング試合に参加した翌日の6月17日から、発熱、咳、咽頭痛、頭痛がみられたとの連絡を受けた。その2日後、抗原蛍光イムノアッセイにて鼻検体を検査したところ、SARS-CoV-2が陽性となった。

アウトブレイク

  • フロリダ州保健局の調査によると、チームAのプレーヤー10人中8人(発端患者を除く)、チームBのプレーヤー11人中5人、リンクスタッフ1人が、6月18~21日(ゲーム終了後2-5日)にCOVID-19の症状を経験していた[図2]。
  • 21人のプレーヤー(発端患者を除く)のうち13人(62%)が発病した。このアウトブレイクの15人のうち、11人がPCR陽性となり、2人が抗原検査で陽性であり、2人は検査されなかった。無症状のプレーヤーは検査を求めなかった。2人の氷上審判員のどちらも発病しなかった。

図2

アイスホッケー試合

  • アイスホッケーは、深く重い呼吸を伴う激しいスポーツである。試合中、プレーヤーは激しい呼吸を続けながら、氷面からベンチに移動することがよくある。
  • この試合では、ホッケー特有の顔面保護具は様々であり、それには金属製のケージやプラスチック製のハーフシールド(目と鼻の上部を覆う)が含まれていた。そして、一部のプレーヤーは顔面保護具を着用していなかった。また、更衣室や試合中は、感染予防用の布マスクは使用していなかった。
  • 米国の標準的なアイススケートリンクは、61m×26mの広さであり、約3mの上向きに伸びたボードと樹脂ガラスが氷面を囲み、物理的に分離されたプレイエリアを作り出している。
  • 氷上ではプレーヤーは60分間、互いに1.8メートル以内に頻繁に近寄り、それに加えて、各チームは、試合の前後20分間、別々のロッカールームを使用した。

考察

  • アイスリンクではプレーヤーは深呼吸し、人が互いに近接する屋内環境であるため、COVID-19の伝播に適した環境となっている。
  • 口腔内のウイルス量に基づいて、感染者のSARS-CoV-2放出率を推定したイタリアの研究によると、激しい運動中は、口呼吸しているときに高いウイルス放出率を示すことが示されている。
  • 発端患者がいるチームで感染したプレーヤーの割合が高いのは、ロッカールームとプレーヤーベンチ(プレーヤーが互いに近くに座っている)での発端患者への曝露が原因かもしれない。
  • 屋内空間とホッケー試合中のプレーヤー間の濃厚接触は、プレーヤーの感染リスクを高め、特に市中でCOVID-19が流行していれば、スーパースプレッダーイベント(1人の感染者が多くの人に感染させる)を作り出す可能性がある。スーパースプレッダーイベントは、アウトブレイクの開始時に爆発的な感染者の増加を引き起こし、アウトブレイク後には感染者を持続的に発生させることがある。
  • この試合では、比較的限られた人数のプレーヤーと1人の観客だけが関連したが、通常、ホッケー試合では、2チームのそれぞれに最大20人のプレーヤーと、アリーナにいる多くの観客が巻き込まれる。
  • このアウトブレイクでの感染の割合が高かったことは、激しい身体活動がみられる屋内スポーツ活動中はSARS-CoV-2に感染しやすいというエビデンスを提供している。

文献

  1. Atrubin D, et al. An outbreak of COVID-19 associated with a recreational hockey game ̶ Florida, June 2020.
    https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/pdfs/mm6941a4-H.pdf

矢野 邦夫

浜松医療センター院長補佐
兼 感染症内科部長
兼 衛生管理室長