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102号 新型コロナウイルス感染症に関するデマ
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日本でも、SNSなどで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するデマが飛び交っている。冗談ではないかという内容がまことしやかに拡散しており、それを信じている人も多い。WHOが「怪しい伝説」として回答をホームページで公開しているので紹介する1)

デマ:5GモバイルネットワークによってCOVID-19が拡散する

ウイルスは電波/モバイルネットワーク上を移動できない。COVID-19は、5Gモバイルネットワークを持たない多くの国で流行している。COVID-19は、感染者が咳、くしゃみ、会話するときに、呼吸飛沫を介して拡散する。汚染した環境表面に触れ、次に目、口、または鼻に触れることでも感染する。

デマ:日光に晒されたり、25℃以上の気温であれば、COVID-19には罹患しにくい

天候が晴天であっても、暑くても、COVID-19に罹患しうる。実際、暑い国でも、COVID-19の症例が報告されている。自分自身を守るためには、手を頻繁かつ徹底的に洗い、目、口、鼻に触れないようにする。

デマ:一度、新型コロナウイルスに感染すると、生涯、感染し続ける

COVID-19に罹患した人々のほとんどは回復して、体からウイルスを排除することができる。罹患した場合は、症状について治療することになる。咳、発熱、呼吸困難がある場合は、早めに医療を受ける。ただし、まず電話で医療機関に連絡する。ほとんどの患者は支持療法で回復する。

デマ:咳や不快感を感じずに10秒以上息を止めることができれば、COVID-19やその他の肺疾患に罹患していない

COVID-19の最も一般的な症状は、乾性咳、疲労感、発熱である。一部の人々は肺炎などの深刻な病状になるかもしれない。COVID-19かどうかを確認する最良の方法は、臨床検査である。このような呼吸運動でそれを確認することはできないし、それは危険なことでもある。

デマ:飲酒すればCOVID-19には罹患しない

頻繁または過度の飲酒は、健康上の問題のリスクを高める可能性がある。

デマ:COVID-19ウイルスは、高温多湿な気候の地域では流行しない

これまでのエビデンスから、新型コロナウイルスは、高温多湿の地域を含むすべての地域で伝播する可能性がある。気候に関係なく、COVID-19が報告されている地域に住んでいるか、その地域に旅行する場合は、予防策を講じるようにする。COVID-19から身を守る最善の方法は、頻繁に手を洗うことである。これにより、手に付着しているウイルスを排除し、目、口、鼻に触れることで感染することを回避できる。

デマ:寒い気候と雪は新型コロナウイルスを殺滅する

寒い気候が新型コロナウイルスを殺滅することができると信じる理由はない。外気温や天候に関係なく、通常の人体温度は約36.5~37℃が維持されている。新型コロナウイルスから身を守る最も効果的な方法は、アルコール手指消毒薬か石鹸と水で頻回に手を清潔にすることである。

デマ:熱い風呂に入ればCOVID-19に罹患しない

熱い風呂に入っても、COVID-19に罹患することを防ぐことはない。お風呂やシャワーの温度に関係なく、通常の体温は約36.5~37℃が維持されるからである。非常に熱いお湯の風呂に入ると、やけどをする可能性があり、有害である。COVID-19から身を守る最善の方法は、頻繁に手を洗うことである。これにより、手に付着しているウイルスを排除し、目、口、鼻に触れることで感染することを回避できる。

デマ:新型コロナウイルスは蚊に刺されると感染する

これまでのところ、新型コロナウイルスが蚊によって伝播することを示唆するエビデンスはない。新型コロナウイルスは、感染者が咳やくしゃみをしたときに発生する飛沫または唾液の飛沫や鼻からの分泌物を通じて主に拡散する呼吸器ウイルスである。自分の身を守るには、アルコール手指消毒や石鹸と水での手洗いを頻回にする。また、咳やくしゃみをしている人との密接な接触を避ける。

デマ:新型コロナウイルスを殺滅するのにハンドドライヤーは効果的である

ハンドドライヤーは新型コロナウイルスの殺滅には効果的ではない。新型コロナウイルスから自分を守るためには、アルコール手指消毒もしくは石鹸と水での手洗いを頻繁に行う。手が清潔になったら、ペーパータオルまたは温風乾燥機を使用して手を完全に乾かす。

デマ:紫外線消毒ランプは皮膚に付着している新型コロナウイルスを殺滅する

UVランプは皮膚の炎症を引き起こす可能性があるので、手や他の部分の皮膚の殺菌にUVランプを使用しない。

疑問:新型コロナウイルスに感染した人を見つけ出すのに、温度スキャナーはどのくらい効果的か?

温度スキャナーは、新型コロナウイルスに感染して発熱した(つまり、体温が通常より高い)人々を検出するのに効果的である。しかし、感染していてもまだ発熱していない人は検出できない。これは、感染してから発熱するまでに2~10日を要するからである。

疑問:アルコールや塩素を全身に噴霧することによって、新型コロナウイルスを殺滅することができるか?

アルコールや塩素を全身にスプレーしても、すでに体内に入ったウイルスを殺滅することはできない。このような物質を噴霧すると、衣服や粘膜(目、口など)に有害である。ただし、アルコールと塩素の両方が環境表面の消毒に役立つことは知っておく必要がある。

疑問:肺炎に対するワクチンによって、新型コロナウイルスから守られるか?

肺炎球菌ワクチンやヘモフィルスインフルエンザB型(Hib)ワクチンなどの肺炎に対するワクチンを接種しても、新型コロナウイルスの予防にはならない。ウイルスは非常に新しく、これまでのウイルスとは異なっているので、独自のワクチンが必要である。研究者たちは新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を試みており、WHOはその取り組みを支援している。肺炎に対するワクチンは新型コロナウイルスには効果がないが、健康を守るために接種することを強く推奨する。

疑問:生理食塩水で定期的に鼻うがいすると、新型コロナウイルスによる感染を防ぐことができるか?

生理食塩水で定期的に鼻うがいすることで新型コロナウイルスに感染することを防ぐことができるとするエビデンスはない。生理食塩水で定期的に鼻うがいすることが、普通感冒から早く回復することを助けることができるという限定的なエビデンスはある。しかし、定期的に鼻うがいすることによって、呼吸器感染症を予防するということは証明されていない。

疑問:ニンニクを食べると新型コロナウイルスの感染を防ぐことができるか?

ニンニクは、いくつかの抗菌特性を持つかもしれない健康食品である。しかし、ニンニクを食べることによって、新型コロナウイルスから守られるというエビデンスはない。

疑問:新型コロナウイルスは高齢者に影響を及ぼすか、それとも若い人も感受性はあるか?

すべての年齢層の人々が新型コロナウイルスに感染する可能性がある。高齢者、および既存の疾患(喘息、糖尿病、心臓病など)を持っている人々は、ウイルスによって重症化しやすい。WHOは、すべての年齢の人々にウイルスから身を守るための対策(手指衛生など)を講じることを推奨している。

文献

  1. WHO. Coronavirus disease (COVID-19) advice for the public: Myth busters
    https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/advice-for-public/myth-busters

矢野 邦夫

浜松医療センター院長補佐
兼 感染症内科部長
兼 衛生管理室長