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101号 COVID-19に罹患した医療従事者の復職基準(CDC)
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日本においても、COVID-19による院内感染が多発し、多くの医療従事者が業務から離れることになった。しかし、COVID-19が蔓延してゆくにつれて、医療従事者が不足してきており、医療崩壊につながる恐れがある。そのため、回復した医療従事者には職場に復帰してもらいたいが、ウイルスが排出される状況で職場復帰すれば、患者や同僚にウイルスを伝播してしまうことになる。そのため、適切な復職基準が設けられなければならない。CDCが「COVID-19が確定または疑われる医療従事者の復職基準(暫定ガイダンス)」1)を公開しているので、その要点を紹介する。

COVID-19が確定または疑われる医療従事者のための復職基準

COVID-19が確定または疑われる医療従事者の復職に関する決定は、地域の状況に応じて行う。選択肢には、「検査に基づく戦略」または「検査に基づかない戦略」(発症からの経過時間、および、回復からの経過時間、による戦略)がある。医療従事者がいつ医療現場に復職できるかを決定するためには、下記の戦略のいずれかを採用する。

1.検査に基づく戦略

下記の3条件が満たされるまで、業務から除外される。

「解熱剤を使用せずに解熱する」
かつ
「呼吸器症状(咳、呼吸苦など)が改善する」
かつ
「24時間以上の間隔をあけて採取された鼻咽頭スワブのPCRが少なくとも2回連続で陰性となる」

2.検査に基づかない戦略

下記の2条件が満たされるまで、業務から除外される。

「回復[註釈]してから少なくとも3日(72時間)が経過する」
かつ
「最初に症状がみられてから、少なくとも7日が経過する」

医療従事者がCOVID-19の検査をしたことがなく、代替診断(インフルエンザが検査陽性など)がなされていれば、復職の基準はその診断に基づく。

復職および業務制限

業務に戻ったあとは、医療従事者は下記を実施すべきである。

  • 「すべての症状が完全に改善するまで」または「発症から14日後まで」のいずれか長い期間、医療施設内にいるときは、常にフェイスマスクを着用する。
  • 重篤な免疫不全の患者(移植、血液腫瘍など)との接触は、発症後14日まで制限する。
  • 手指衛生および咳エチケットを遵守する(咳やくしゃみをするときには鼻と口を覆う。ティッシュは廃棄物容器に捨てる)
  • 症状を自己監視して、呼吸器症状が再発または悪化した場合は、労働衛生局による再評価を求める

人員不足を軽減するための危機戦略

ヘルスケアシステム、ヘルスケア施設、および州、地方、地域、部族の保健当局は、医療従事者の人員不足を緩和する必要があるときには、推奨されるアプローチに従うことができないと判断するかもしれない。そのようなシナリオには下記がある。

  • 上記で推奨されているよりも早く仕事に復帰することの妥当性を判断するために、産業保健部門が医療従事者を評価する。
  • 医療従事者が上記の推奨よりも早く職場に復帰する場合でも、「復職と業務制限」の推奨事項を遵守すべきである。

文献

  1. CDC. Criteria for return to work for healthcare personnel with confirmed or suspected COVID-19 (Interim Guidance)
    https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/return-to-work.html

[註釈]回復
解熱剤を使用せずに解熱し、呼吸器症状(咳、息切れなど)が改善すること

矢野 邦夫

浜松医療センター院長補佐
兼 感染症内科部長
兼 衛生管理室長