これまで、米国では帯状疱疹の予防のために帯状疱疹
帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹は局所の通常有痛性の皮膚発疹であり、潜在性水痘帯状疱疹ウイルス(VZV:varicella zoster virus)の再活性化によるものである。帯状疱疹は日常的にみられる疾患であり、米国では年間100万人が罹患している。発生率は年齢とともに増加し、50~59歳では1,000人当たり5症例であるが、80歳以上では1,000人当たり11症例になる。通常、帯状疱疹後神経痛は「帯状疱疹の発疹が治癒してから少なくとも90日間の持続的な疼痛がみられること」と定義され、帯状疱疹の最も頻度の高い合併症である。50歳を越える帯状疱疹症例の10~13%に帯状疱疹後神経痛がみられる。帯状疱疹後神経痛を合併する危険性は年齢とともに増加する。
帯状疱疹生 ワクチン
帯状疱疹
遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチン
2017年10月20日、遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチン(RZV:recombinant zoster vaccine)が、50歳以上の成人の帯状疱疹の予防を目的としてFDAによって認可された。このワクチンは2回接種が必要であり、2~6か月の間隔をあけて筋肉注射される。2017年10月25日、ACIPは50歳以上の正常免疫の成人にRZVを推奨した。
遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチンと帯状疱疹生 ワクチンの比較
複数の臨床研究において、帯状疱疹に対するRZVの有効性はすべての年齢層でZVLよりも高かった。帯状疱疹後神経痛に対する有効性もまた、RZVのほうがZVLよりも高い。これら2種のワクチンの有効性の相違は70歳以上の被接種者で最も著しい。ある研究によると、ZVLの有効性は接種後4年間で相当減弱するが、RZVは接種後4年経過しても有効性の減弱は中等度であった。すなわち、RZVはZVLに比較して、帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛をさらに予防すると推定される。
遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチンの利用法
文献
- CDC. Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices for use of herpes zoster
vaccines
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/67/wr/pdfs/mm6703a5-H.pdf - CDC. Prevention of herpes zoster
https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5705a1.htm - CDC. Update on recommendations for use of herpes zoster vaccine
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6333a3.htm
[註釈1]
帯状疱疹の予防には細胞性免疫が必要である。抗体のみでは帯状疱疹を抑えこむことはできない。実際、水痘帯状疱疹ウイルス抗体が陽性の人で帯状疱疹が発生している。そのため、米国では帯状疱疹生ワクチンが用いられてきた。このワクチンは水痘ワクチンと同じウイルスを用いて製造されているが、ウイルス量が異なる。水痘ワクチンでは1,350PFU(Plaque Formation Unit:プラーク形成単位)以上であるが、帯状疱疹ワクチンは水痘ワクチンの14倍の19,400PFU以上となっている2)。すなわち、細胞性免疫を刺激するために大量のウイルスを投与するのである。
日本での水痘生ワクチンの生物学的製剤基準は1,000PFU以上であるが、実際は製造後5年間の年平均が42,000~67,000PFUである。そのため、帯状疱疹の予防に使用されている。
[註釈2]
60歳以上の成人における帯状疱疹生ワクチンの短期効果を評価した研究は、帯状疱疹の予防効果は接種後1年の62.0%から5年の43.1%に減少することを示した。そして、5年以降の効果は示されなかった。帯状疱疹後神経痛の予防効果については接種後1年の83.4%から2年の69.8%に減少し、3~7年については統計学的には有効性は確認できなかった。すなわち、60歳以上で接種された成人においては、ワクチンの効果は最初の5年で減少し、5年以降の防御効果は明確ではない。それ故、60歳未満でワクチンを接種された成人は帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛の危険性が最大となる時期には防御されないかもしれない3)。
矢野 邦夫
浜松医療センター 副院長
兼 感染症内科長
兼 衛生管理室長