このチェックリストは「病院における抗菌薬スチュワードシッププログラムの核心的要素」に付属するものである1)。このチェックリストは「抗菌薬の適切な処方を確実なものする」および「病院における抗菌薬の過剰使用や誤使用を制限するための重要な要素や活動を計画的に評価する」ことを目的として使用される。CDCはすべての病院が抗菌薬スチュワードシッププログラムを実施することを推奨している。
このチェックリストを使用している施設は、抗菌薬の使用を向上するための原則および活動が適切であるかどうかを明らかにするために、豊富な知識を持つスタッフ(1人もしくは複数)を確保すべきである。このチェックリストにある要素は抗菌薬の使用を向上するために役立つことが過去の研究で示されている。しかし、これらの要素のすべてが全ての病院に適しているということではない。
このチェックリストを使用している施設は、抗菌薬の使用を向上するための原則および活動が適切であるかどうかを明らかにするために、豊富な知識を持つスタッフ(1人もしくは複数)を確保すべきである。このチェックリストにある要素は抗菌薬の使用を向上するために役立つことが過去の研究で示されている。しかし、これらの要素のすべてが全ての病院に適しているということではない。
指導者のサポート【施設で確立しているか?】
A | 貴方の施設では抗菌薬の使用を向上させるための努力(抗菌薬スチュワードシップ)を支持するという、正式に文書化された指導者の声明文はありますか? | ||
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B | 貴方の施設では抗菌薬スチュワードシップ活動を財政的にサポートするための予算化はされていますか?(給与、訓練、情報テクノロジーのサポートなど) |
責任
A | 貴方の施設ではスチュワードシップ活動のプログラムの成果に責任を持つ医師の指導者はいますか? |
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薬剤の専門家
A | 貴方の施設では抗菌薬の使用を向上するための業務に責任を持つ薬剤師の指導者はいますか? |
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抗菌薬スチュワードシッププログラムのための主要なサポート
下記のスタッフのいずれかが、抗菌薬の使用を向上させるためにスチュワードシップ指導者とともに業務していますか?
B | 医師 | ||
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C | 感染予防および医療疫学者 | ||
D | 医療の質向上 | ||
E | 微生物学(検査室) | ||
F | 情報テクノロジー(IT:Information Technology) | ||
G | 看護 |
適切な抗菌薬の使用を支持するための活動
方針【確立された方針】
A | 貴方の施設は、すべての抗菌薬の処方を対象として、投与量、投与期間、適用を医療記録もしくはオーダー入力のときに記録することを処方者に求める方針がありますか? | ||
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B | 貴方の施設にはコモンな臨床的状態での抗菌薬の選択を補助するために、全国的ガイドラインおよび地域の感受性検査に基づいた、施設特有の推奨治療はありますか? |
抗菌薬の使用を向上するための特異的な介入
貴方の施設では、抗菌薬の処方を向上するために下記の活動が実施されていますか?
広範囲の介入【実施された活動】
C | 最初のオーダーから48時間後に、すべての抗菌薬の妥当性をすべての医師が再吟味するための公式な手順はありますか? | ||
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D | 貴方の施設では、特定の抗菌薬について、投与前に医師もしくは薬剤師によって許可(事前許可)される必要がありますか? | ||
E | 貴方の施設では、特定の抗菌薬の治療コースについて、医師もしくは薬剤師によるレビューがなされていますか?(フィードバックを伴った前向き監査) |
薬局の介入
貴方の施設では、下記の活動が実施されていますか?
【実施された活動】
F | 適切な状況における、抗菌薬の静脈投与から経口への自動変更 | ||
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G | 臓器に機能低下のある症例での投与量の調整 | ||
H | 感受性の低下している病原体の治療を最高に効率的にするための投与量の最適化(薬物動態/薬力学) | ||
I | 治療が不必要に重複した状況での自動的警告 | ||
J | 特定の抗菌薬の処方での、時間による自動終了指示 |
感染症および症状に特有の介入
貴方の施設は下記のコモンな感染症を治療するための抗菌薬の最適な使用を確実にする特別な介入がありますか?
【実施された活動】
K | 市中感染肺炎 | ||
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L | 尿路感染 | ||
M | 皮膚および軟部組織感染 | ||
N | 手術前予防 | ||
O | MRSAのエンピリック治療 | ||
P | CDI[註釈]の新規症例における非CDIの抗菌薬 | ||
Q | 培養にて証明された侵襲性感染症の治療(血流感染など) |
追跡:抗菌薬の処方、使用、耐性菌の監視
プロセスの測定【実施された活動】
A | 貴方の施設のスチュワードシッププログラムは、文書化された方針(投与量、期間、適用)の遵守を監視していますか? | ||
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B | 貴方の施設のスチュワードシッププログラムは、施設特有の推奨治療の遵守を監視していますか? | ||
C | 貴方の施設のスチュワードシッププログラムは、特異的な介入の1つ以上の遵守を監視していますか? |
抗菌薬の使用および成果の測定
【実施された活動】
D | 貴方の施設はCDIの発生率を追跡していますか? | ||
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E | 貴方の施設はアンチバイオグラム(蓄積された抗菌薬感受性報告)を作成していますか? |
貴方の施設は下記の測定基準の1つによって病棟レベルもしくは
施設レベルで抗菌薬使用(消費)を監視していますか?
【実施された活動】
F | 患者に投与された1日当たりの抗菌薬の数による測定(DOT:Days Of Therapy) | ||
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G | 使用した抗菌薬のグラム数による測定(DDD:Defined Daily Dose) | ||
H | 抗菌薬の直接的な支出額による測定(購入コスト) |
抗菌薬の使用の向上および耐性菌について、スタッフに情報を報告する
A | 貴方の施設のスチュワードシッププログラムは、抗菌薬の使用についての施設特有の報告を処方者と共有していますか? | ||
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B | 貴方の施設では、現在のアンチバイオグラムが処方者に配布されていますか? | ||
C | 処方者はこれまで、抗菌薬の処方をどのように向上するかについて、個別の連絡を直接的に受けたことがありますか? |
教育
A | 貴方の施設のスチュワードシッププログラムは、菌薬の処方について、医師およびその他の担当者を教育していますか? |
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文献
- CDC. Checklist for core elements of hospital antibiotic stewardship programs
http://www.cdc.gov/getsmart/healthcare/pdfs/checklist.pdf
[註釈] CDI=Clostridium difficile infection(クロストリジウム・ディフィシル感染症)
矢野 邦夫
浜松医療センター 副院長
兼 感染症内科長
兼 臨床研修管理室長
兼 衛生管理室長