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46号 ワクチンで防げる病気
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これまでワクチンは多くの人々の生命を守り、健康を維持してきた。当然のことながら、院内感染対策でも必須のものである。しかし、インフルエンザ、麻疹、風疹、ムンプス、水痘などのワクチンが利用できるにも拘わらず、積極的には接種しない人々がいる。
CDCが「ワクチンで防げる病気(VPD: vaccine preventable disease)」の写真を提示しているので1 ) 、特に臨床症状の写真をピックアップして紹介する[ 註1 ]。
麻疹
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麻疹の発症後 3日目の患者の皮膚の写真。この患者はニューヨークの病院にて治療された。ワクチンが広く使用される前には、麻疹は小児では普通にみられる感染症であり、幼児や小児は 12歳までに90%以上が感染した。
1993年以降は年間 1,000 症例以下の報告数となっている。
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麻疹の小児の眼の写真
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前発疹期の第 3病日の麻疹による口蓋の「コプリック斑(Koplik spots)」の写真。麻疹は感染力が極めて強いウイルス性の急性疾患であり、発熱、結膜炎、鼻感冒、咳、コプリ ック斑を呈する。コプリック斑は口腔の粘膜表面にみられる青白い中心部をもった小さな赤色の不規則な形の斑である。
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前発疹期の第 3病日の麻疹の発症の始まりを示す「コプリック斑(Koplik spots)」の写真。前駆期もしくは病初期には、麻疹の発症のサインの 1つとして、頬および舌の粘膜に「コプリ ック斑」がみられる。これは不整型の明赤色のスポットで、しばしば青白い中心点を伴っている。
ムンブス
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ムンプスの小児の写真。唾液腺の腫大による特徴的な頸部の腫脹がみられる。ムンプスに罹患している人の半数までが、症状は軽度もしくは無症状である。そのため、ムンプスに感染していることを知らないこともある。多くみられる症状としては、発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感、食慾不振、片側もしくは両側の唾液腺の腫脹および圧痛(耳下腺炎)がある。感染してから16~18日で症状がみられることが通常であるが、感染後12 ~ 25日のこともある。
風疹
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先天性風疹症候群(CRS: Congenital Rubella Syndrome)による小児の眼の白内障の写真。風疹はすべての年齢の感受性のある人に感染するウイルス性疾患である。発疹は軽度であることが通常である。しかし、妊娠早期に感染すると、先天性風疹症候群として知られる胎児消耗もしくは先天性欠損の確率が高くなる。
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小児の背部の風疹の発疹の写真。その分布は麻疹に似ているが、病変の赤色の程度は麻疹より軽い。
水痘
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特徴的な全身の水痘の病変がみられる小児の写真。水疱様病変には膿の詰まったような中心部があり、これは顔面、頭皮、体幹にみられる。水痘は感染性が高く、咳やくしゃみにて拡散する。合併症には皮膚の細菌感染、脳浮腫、肺炎などがある。
破傷風
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患者は破傷風菌の外毒素による「後弓反張」として知られる姿勢を示している。全身性破傷風は最も頻度の高いタイプ(約 80%)であり、下行性のパターンが通常である。すなわち、開口障害で始まり、その後は項部硬直となり、嚥下困難、腹筋の硬直となる。
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この患者は顔面破傷風を呈している。咬筋および頸筋の収縮がみられる。破傷風は破傷風菌(Clostridium tetani)(創部で嫌気性に増殖する)の外毒素によって引き起こされる。破傷風では有痛性の筋肉収縮(特に咬筋およびその他の大きな筋肉)が特徴である。
ジフテリア
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このジフテリアの小児は特徴的な頸部腫脹(「猪首(bull neck)」といわれることがある)を呈している。ジフテリアは主に扁桃、咽頭、喉頭、鼻、皮膚、ときどき他の粘膜を巻き込む急性細菌性感染症である。粘膜病変には周辺に炎症を伴った粘着性の灰色膜のパッチがみられる。
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下肢のジフテリアの皮膚病変の写真。ジフテリア菌(Coryne-bacterium diphtheriae)は呼吸器系のみならず、皮膚にも影響し、そこでは開放創がみられる。
インフルエンザ菌
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インフルエンザ菌に感染した脳の下面の写真。米国およびその他の先進国では、インフルエンザ菌の血清型タイプ b(H . influenzae serotype b)の症例の 50%以上が発熱、頭痛、項部硬直を伴う髄膜炎を呈する。症例の 3 %-6 %が致死的であり、生存者の 20%までが永久的な聴力消失となる。
ポリオ
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この小児ではポリオウイルスによって引き起こされたポリオによる右下肢の変形がみられる。ウイルスは最初は口腔咽頭に植えつけられて増殖し、その後、血流に入り込み、それによって中枢神経系に侵入して、脊髄の前角や脳内の運動神経に感染する。
百日咳
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百日咳に罹患してクリニックに受診した女児の写真。百日咳は感染性が高い「ワクチンで防げる病気」であり、百日咳菌(Bordetella pertussis)によって引き起こされる。厳しい咳嗽、ゼーゼー音、咳後嘔吐が何週間も続き、小児を苦しめることが多い。
髄膜炎菌
img_201510_16 ID 1335
髄膜炎菌菌血症によって手および下肢が壊疽となった生後 か月の女児。髄膜炎菌菌血症は動脈閉塞を引き起こす。
肺炎球菌
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アルコール中毒患者の肺炎球菌性髄膜炎の写真。剖検の開頭では硬膜直下に軟膜の化膿性炎症がみられる。

文献

  1. CDC. Vaccines and Immunizations : Photos of Vaccine – Preventable Diseases
    http://www.cdc.gov/vaccines/vpd-vac/photo-all-vpd.htm
  2. CDC. Public Health Image Library(PHIL)
    http://phil.cdc.gov/phil/home.asp

[註1]
CDCは公衆衛生画像ライブラリー(Public Health Image Library : PHIL)に様々な写真を提示しており、 その殆どが著作権フリーである2 ) 。写真のIDはPHILのIDである。

矢野 邦夫

浜松医療センター 副院長
兼 感染症内科長
兼 臨床研修管理室長
兼 衛生管理室長