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19号 ダニ対策
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これからの季節には山や川などでキャンプをしたり、登山したりする人も多くなる。それに伴って、ダニに咬まれる機会も増えることになる。最近、日本でも重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)が報告されるようになった。SFTSウイルスはマダニに咬まれることによって感染するので、マダニに気を付けなければならない。新聞などのマスコミはマダニに咬まれたときには医療機関に相談するよう啓発しているが、相談される我々はどのように回答したらよいのであろうか?これについて、CDCホームページに記載されている関連情報から重要ポイントを抜粋してみた1,2,3)

ダニの生息地

ダニがどのようなところに生息しているのかを知っていることは大切である。ダニは湿気の高い環境に生息しており、とくに木や草の茂ったところにいる。家の周囲であっても、落ち葉の中を歩いたり灌木の近くを歩けば、ダニに接触する危険性がある。従って、ダニを避けるためには小道の中央を歩くようにするとよい1)

昆虫忌避薬[ペルメトリン]

ペルメトリンを含んだ製剤はダニを殺すことができる。この製剤は靴、衣類、蚊帳、キャンプ服の処理に用いることができ、繰り返し洗濯しても効果を維持できる。但し、皮膚には直接塗布してはならない。一般に、有効成分が多ければ多いほど、長時間の有効性を示す1,2)

昆虫忌避薬[DEET]

皮膚にはDEETを含んだ製剤を塗布する。20%以上のDEETを含んだ製剤は数時間の効果がある。実際、23.8%の製剤は蚊に対して平均5時間の効果を示す。20%製剤では4時間、6.65%製剤では2時間、4.75%製剤では1.5時間の効果がある。ただし、効果の持続時間は気温、発汗、水の曝露といった状況によって大きく左右される。

DEETを含んだ製剤を子供に塗布するときは、最初に大人の手に塗布し、その手で小児を擦るようにする。子供の眼や口に塗布することは避け、耳の周囲については控えめにする。子供は手を口に入れる傾向にあるので、手には塗布しない。また、生後2ヶ月未満の幼児には塗布しない。

屋外に出るときには昆虫忌避薬と日焼け止めを同時に用いても構わない。この場合、日焼け止めを最初に塗布して、その後昆虫忌避薬を塗布する。DEETを含む昆虫忌避薬と日焼け止めを合わせた単一製剤を用いることは推奨されない。ほとんどの場合、昆虫忌避薬は日焼け止めほど頻回に再塗布する必要がないからである1,2)

帰宅時の処置

ダニが衣類に付着して家に持ち込まれる可能性があるので、帰宅したときの対応も大切である。とにかく、すべてのダニは除去する必要がある。この場合、衣類を少なくとも1時間、高温の乾燥機に入れておくと、ダニを効果的に殺すことができる。帰宅したら、全身を鏡にてチェックするのがよい。特に、腕の下、耳の中および周囲、臍、膝の裏、毛髪部位とその周囲、股間、ウエストを注意深く調べる。さらに、帰宅後2時間以内にシャワーを浴びることも有効である。シャワーによって、体に咬みついていないダニが洗い流されるし、体表面のダニをチェックする良い機会にもなる1)

ダニの発見時

ダニを見つけたら直ちにピンセットでつまんで引き離す。この場合、皮膚にできるだけ近いところをつまみ、垂直に引き離す[図]。一定の力で引き離すことが大切であるが、すこし力が必要なこともある。ダニをひねったり、一気に引き抜いたりはしない。そのようなことをすると、ダニの口の部分が引き裂かれ、皮膚の中に残ってしまうからである。もし、残ってしまったら、ピンセットで口の部分を取り除く。もし、除去できなければ、そのままにしておいて、皮膚が治癒するのを待つ。ダニを除去したら、咬まれたところおよび手をアルコール、ヨード、石鹸と水などで十分に清潔にする3)

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文献

  1. CDC. DEET, showers, and tick checks can stop ticks.
    http://www.cdc.gov/Features/StopTicks/
  2. CDC. Insect repellent use and safety.
    http://www.cdc.gov/ncidod/dvbid/westnile/qa/insect_repellent.htm
  3. CDC. Tick removal.
    http://www.cdc.gov/ticks/removing_a_tick.html

矢野 邦夫

浜松医療センター 副院長
兼 感染症内科長
兼 臨床研修管理室長
兼 衛生管理室長