淋菌薬剤耐性サーベイランス計画(GRASP)年次報告書の要約

Vol. 12 / No. 37
Gonococcal resistance to antimicrobials surveillance programme (GRASP) annual report in summary

PHEは淋菌薬剤耐性サーベイランス計画(GRASP)年次報告書を発表し、Neisseria gonorrhoiaeaeの薬剤耐性サーベイランスの最新データを示した。
淋病に対する現在のファーストライン治療はセフトリアキソンとアジスロマイシンの併用療法などであるが、その奏功率は抗菌薬耐性化により問題となっている。
2016年から2017年にかけて、淋菌分離株がPHEの定点サーベイランスシステムにより収集され、以下のことが示された。
・セフトリアキソンに対する耐性はみられなかった
・アジスロマイシン耐性は4.7%から9.2%へ増加した
・シプロフロキサシン耐性は33.75から36.4%へ増加した
・セフィキシムの最頻MICは0.015mg/Lから0.03mg/Lへと上昇した
・ペニシリン耐性は13.9%から10.8%へと減少した

しかし、2018年には国立レファレンスラボラトリで1例のセフトリアキソン耐性例が確認された。この症例は広範囲薬剤耐性N. gonorrhoeae(XDR-Ng)で、詳細は別の文書で発表されている。この株はセフィキシム、シプロフロキサシン及びテトラサイクリンにも耐性であったが、スペクチノマイシンには感性であった。この患者には英国に1名の女性パートナーがおり、発症の前月に東南アジアで女性との性交渉を持ったことが報告されている。PHEが行った調査によるとこの菌株の英国内での感染拡大はみられなかった。
臨床医は、全ての淋病患者を国のガイドラインに従って治療、管理を行うように努め、ファーストラインに推奨されている抗菌薬が変更になったことに気をつけなければならない。セクシャルヘルスの医療機関は、オンラインのHIV・STIウェブポータルを通してPHEに治療失敗の可能性例を報告しなければならない。

イングランドで診断された3例目のサル痘

Vol. 12 / No. 37
Third case of monkeypox diagnosed in England

サル痘はまれなウイルス感染症で、動物からヒトに感染する。ヒトでの感染は通常軽症で自然軽快傾向があり、ほとんどの感染例は数週間で回復する。
2018年9月初旬にサル痘の輸入感染例がイングランドで診断され、先日、論文とHPRで詳細が発表された。2例とも直近のナイジェリア渡航歴があり、そこで感染したと考えられている。ナイジェリアでは記録上最大規模のアウトブレークが発生しており、少なくとも262例の疑い例が2017~2018年に26の州から報告されている。最新の情報によると、ナイジェリアで合計115例の確定診断例が報告されている。
前述の2例には英国における疫学的な関連性はない。しかし、9月下旬にイングランドで3例目の感染例が診断され、アフリカ以外で史上初めてのヒト-ヒト感染例となった。この3例目は英国在住でBlackpool Victoria病院勤務の医療従事者で、この病院はイングランドの2例目の患者が受診したところである。この症例は2例目の患者がサル痘と診断される前に医療行為を行った際、感染したと考えられている。
感染力を有する期間にイングランドのサル痘感染例3例と接触した可能性がある者には連絡を取り、経過観察が行われた。3例目には高度な感染予防策がとられている。皮疹を認める24時間前にこの患者と接触した者が特定され、接触の程度によりリスクアセスメントを行い、適切なアドバイスや情報の提供、経過観察が行われた。サル痘が発症しないか確認するため、接触者は暴露後21日間モニタリングを受けた。

英国のリスクアセスメント
英国でサル痘に罹患するリスクは非常に低い。ヒト-ヒト感染は非常にまれであるが、以下の経路で起こりうる。
・感染者が使用した衣類やリネンとの接触
・サル痘の皮膚病変や痂皮との直接接触
・飛沫感染(サル痘患者の咳やくしゃみ)

旅行者のサル痘
旅行者のサル痘感染例は非常にまれである。しかし、サル痘に矛盾しない症状を呈し、サル痘ウイルスが蔓延している地域への渡航歴がある者ではサル痘感染を考慮しなければならない。Public Health Englandによる専門的ガイダンスに従わなければならない。帰国者で原因不明の発熱を認める全ての患者について、地域の細菌、ウイルス及び感染症のコンサルタントと検証を行うべきであり、必要に応じてimported fever serviceにコンサルトすることになる。
興味深いことに2018年10月12日にイスラエル保健省もナイジェリアからのサル痘輸入感染例を報告した。この患者はイスラエル在住で、ナイジェリア南部のPort Harcourtで就労していた。

コンゴ民主共和国東部におけるエボラウイルス感染症アウトブレーク:第2報

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EVD outbreak in eastern DRC: second update

8月1日に宣言されたコンゴ民主共和国東部でのエボラウイルス感染症アウトブレークは現在も続いている。これまで188例の確定診断例及び35例の可能性例が、North Kivu及びItuliの2州における10の医療圏から報告されている。先月には82例の新規確定診断例及び4例の新規可能性例が届出され、2つの新たな医療圏(Komanda及びTchomia)で感染例が発生した。Beni医療圏からは2018年9月以降に報告された全感染例の70%以上が報告されており、現在、伝播の中心となっている。
ここ2週間で罹患率の著明な上昇が報告されている。この上昇は、(a)9月22日に民主同盟軍による市民の殺害を受けた服喪期間(「死の町」とも言われている)、(b)これに反応した者に対する暴動など少数の抵抗部隊の存在により、感染対策(接触者追跡、予防接種、疑い例の隔離、及び安全な埋葬)が不十分になっていることが関係していると考えられる。接触者追跡などの主要な感染対策パラメータの改善がこの数日でみられているが、この地域の複雑な治安情勢のためこれらの活動は非常に阻害されやすい。
10月17日にWHO Emergency Committeeは、現在のアウトブレークは国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)の要件を現時点では満たさないということで一致した。この委員会は、感染対策活動の強化が必要で、警戒を続けていくことがこのアウトブレークの管理には重要であることを強調した。
英国市民に対するリスクは依然として非常に低い~無視できるレベルである。現在の状況を厳重にモニタリングし、定期的にリスクアセスメントの検証を行っていく。

イングランドにおける抗菌薬使用及び薬剤耐性化のサーベイランス計画(ESPAUR)、年次報告書第5報

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English surveillance programme for antimicrobial utilisation and resistance (ESPAUR) fifth annual report

イングランドにおける抗菌薬使用及び薬剤耐性のサーベイランス計画の5報目の年次報告書が10月23日に発表される。ESPAURは政府の枠を超えた英国の5年間のAMR戦略を受けて2013年に策定された。最新の年次報告書では抗菌薬の使用、スチュワードシップ及び過去5年間の薬剤耐性についてまとめられている。
この報告書の発表は「Keep Antibiotics Working」キャンペーンの開始と同時に行われる。このキャンペーンはテレビやラジオ、オンデマンドの動画、SNS、IT及び検索エンジンの広告、地域の薬局や外科クリニック、児童館や図書館など地方自治体の地域拠点とのパートナーシップ、PR活動の協力を受け、8週間行われる。