コンゴ民主共和国東部で新たなエボラウイルスアウトブレーク

Vol. 12 / No. 30
New Ebola virus outbreak in eastern DRC

2018年8月1日、コンゴ民主共和国(DRC)は国内で10件目のエボラウイルス感染症(EVD)アウトブレークを発表した。今回のアウトブレークはDRC東部で発生した。約2,500Km離れたEquateur州でEVDアウトブレークの終息が宣言されてから、ちょうど1週間が経過したところであった。いずれのアウトブレークもザイールエボラウイルスによるものであるが、両者のウイルス株は異なっていることから、この2件のアウトブレークに関連性はないものと考えられる。
8月15日時点で、DRC保健省は合計51例の確定診断例及び27例の可能性例を報告した。これまで44例の死亡例が報告されており、そのうち17例はEVD確定診断例であった。
確定診断例及び可能性例は2つの州(NorthKivu及びIturi)の6つの医療圏から報告されており、その多く(確定診断例 39例及び可能性例 21例)がこのアウトブレークの中心地と考えられているMabalakoで発生している。
今回発生した最新のEVDアウトブレークの対応はまだ初期の段階であり、アウトブレークの規模(合計患者数及び地理的な拡がり)はまだ十分に把握できていないことは認識しておかなければならない。最初の感染例は5月上旬に死亡したと考えられている。その後に発生した、市中における散発的な死亡例の報告が遅れたのは、この地域の医療従事者によるストライキが影響した可能性がある。
North Kivu及びIturiの各州は、DRCでも最も人口の多い州のうちに入る。North Kivuは他の4つの州及びウガンダ、ルワンダとの国境に接している。Ituli州は、ウガンダに加えてSouth Sudanとの国境にも接している。
WHOは、有効なEVDアウトブレーク対策を行うことでDRC東部の不安定な治安情勢を緩和できる可能性があると述べている。長期にわたる武装勢力の存在、それに対する軍事作戦、コミュニティ間の闘争、及び難民の近隣諸国からの流入や近隣諸国への流出といった問題が全て、政治・治安情勢、人道的状況を悪化させている。
同時にDRCでは、複数の他の感染症(コレラ、マラリア、サル痘、及びワクチンによるポリオなど)のアウトブレークや人道的危機に直面している。この地域の政治的、人道的不安定性により、州内及び近隣諸国間でかなりの人の移動が起こっている。これらの近隣諸国ではEVDの疑い例を迅速に(国境でのスクリーニングや医療機関でのサーベイランスを通して)検出し、調査するためのサーベイランスシステムがすでに確立されている。これまで、複数例の疑い例の発生に対して迅速な調査が行われ、EVDが否定されてきた。
WHOは、公衆保健のリスクはDRCの国家レベル及び地域レベルで高く、世界的には低いと判断している。
英国国民に対するリスクは現在、非常に低い~無視できるレベルである。この状況のモニタリングを緊密に行い、定期的にリスクアセスメントを見直していく予定である。

旅行者へのアドバイス
DRCへの渡航中にEVDに罹患するリスクは滞在する地域や滞在地での行動によって異なるが、概して無視できる~非常に低いレベルである。外務英連邦省は、North Kivu州及びItuli州への全ての渡航、不要不急のGomaおよびNorth Kivu州都への渡航を取りやめるよう勧告している。旅行者の感染予防の目的として使用できる、英国で承認を受けたワクチンはない。
人道的活動のためにアウトブレーク発生地域に渡航する者は、感染対策や保健、安全性のガイダンスに関する詳しいアドバイスを所属する機関に求めるべきである。PHEが運営する帰国就業者スキームは、DRCから英国に帰国する予定の少数と考えられる対策従事者をマネージメントするために構築されている。