イングランド及びウェールズの住民におけるレジオネラ症の年次報告書2016年版がPublic Health Englandから発表された。この年次報告書には、細菌学的に確定診断された症例(2016年に発症した症例)の疫学の特徴が記載されている。
2016年発症のレジオネラ症確定診断例、合計355例が国のサーベイランス・スキームに報告され、そのうち半数以上が市中で感染源(旅行に関連した感染例も含む)と接触したと考えられた。これは、およそ半数の症例が市中感染であった2015年の状況と一致している。2016年の全症例の一部(41.4%、147例)が海外への渡航と関連していた(2015年は46.1%、177例)。2016年の症例のわずか1.7%(6例)が医療関連感染例であった。レジオネラ症に関連した死亡例は25例発生しており、過去10年間の年間平均32例を大きく下回っていた。
海外への渡航に関連した症例(及び集団感染事例)数の減少は、イングランド及びウェールズの住民のレジオネラ症の年々変動を反映している。2016年のレジオネラ症ではスペインが渡航先として最も多く、28例が潜伏期間内にスペインに渡航していた。しかし、2016年に罹患率が最も高かった渡航先はアラブ首長国連邦で、イングランド及びウェールズの住民の罹患率は100万回の渡航につき26例で、スペインは1.9例であった。
この報告書には、分離培養とともにPHEリファレンス・ラボラトリが実施している従来の尿中抗原検査やPCRによる核酸検出法など、全ての細菌検査法に関するデータを示している。PCRなどの分子生物学的手法の使用はレジオネラ症の感染源を特定するうえで大きな役割を果たしている。例えば、今回の年次報告書には主な暴露パターンごとのシーケンスタイプ(STs)に関するデータが示されており、それによると、海外への渡航に関連した症例はSTsのばらつきが最も大きいが、いくつかのSTsは独立して特定の国への渡航と関連していた。
イングランド及びウェールズにおける国の強化サーベイランス・スキームに関連した改訂ガイダンス及び文書も発表されている。