コラム
COLUMN
寒い季節、肌のカサつきやかゆみに悩まされた経験はありませんか。乾燥肌は見た目が粉っぽくなったり、皮膚がひび割れてきたりするだけでなく、眠れなくなるほどにかゆみが強くなることもあります。
実は、乾燥肌は放置すると皮膚の病気の原因になることがあり、かゆみが強い場合はすでに皮膚疾患が進行している可能性があります。今回は乾燥肌を原因とする皮膚のトラブルと、対策方法を詳しく解説します。
乾燥肌とはどのような状態?
乾燥肌とは、肌に必要な水分や皮脂が足りていない状態のことをさします。手で触ると肌の表面がカサカサしていたり、見た目もパサついて見えたりします。
とくに乾燥しやすいスネなどは、粉をふいたりうろこ状にひび割れているように見えたりすることもあります。また見た目に変化がなくても、入浴後や洗顔後に肌がつっぱる方は乾燥肌の可能性があります。
乾燥肌の原因は?
そもそも、なぜ乾燥肌になるのでしょうか。乾燥肌の原因として考えられる3つのポイントを詳しく紹介します。
●乾燥肌の原因①:加齢による肌のバリア機能の低下
加齢は乾燥肌の原因の1つだと考えられています。本来、肌には外部刺激から守り内側の水分をキープする「バリア機能」が備わっています。
しかし、年齢を重ねるとバリア機能に必要な皮脂をはじめとした分泌物が減少し、あらゆる刺激から肌を守れなくなり、肌の一番外側にある角質層がダメージを受けます。
角質層がダメージを受けてめくれ上がってしまうと、肌内部の水分が蒸発し、乾燥肌になってしまうのです。
また、加齢によるホルモンバランスの乱れも乾燥肌の原因だといわれています。女性ホルモンの一種「プロゲステロン」は、肌のうるおい保持において重要な役割を果たしています。
そのため加齢によりプロゲステロンが減少すると、乾燥肌になってしまうことがあります。
●乾燥肌の原因②:偏った食事や生活習慣の乱れ
うるおった肌をキープするためには、バランスのとれた食事を毎日3食摂ることが大切です。
単品料理や丼もの、麺類ばかり食べるなど偏った食事を続けていると、肌に必要な栄養素であるタンパク質、必須脂肪酸、ビタミン類が不足してしまいます。
また睡眠不足やストレスは、肌の新陳代謝「ターンオーバー」を乱れさせ、バリア機能を低下させる原因になるといわれています。忙しいときでも、できるだけ睡眠時間は確保し、適度に運動するなどストレス解消するようにしましょう。
●乾燥肌の原因③:紫外線や空気の乾燥による肌の水分蒸発
紫外線や空気の乾燥も乾燥肌を引き起こす原因だといわれています。紫外線を長時間浴びて日焼けした肌は軽い火傷のような状態となり、肌の角質層が炎症を起こして乾燥しやすくなります。
また、空気が乾燥すると肌の水分が蒸発し乾燥してしまいます。とくに空気が冷え大気も乾燥している冬場は、乾燥肌になりやすいので注意が必要です。
寒い季節は暖房やヒーターを使用するため、室内でも空気が乾燥し肌の水分が奪われやすい環境になります。
乾燥肌が原因で皮膚の病気につながる可能性も考えられる
最初は少しカサカサしている程度の乾燥肌でも、放置していると思わぬ皮膚疾患につながる場合があります。乾燥肌が原因で起こる可能性がある皮膚トラブルについて解説していきます。
●アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う湿疹ができる慢性的な皮膚の病気です。乳幼児に多く見られる病気ですが、最近では成人してから発症する方もいます。
原因はさまざまですが、遺伝やアレルギー、大人の場合は偏った食生活や睡眠不足、喫煙などによるバリア機能の低下も関係していると考えられています。
そして肌のバリア機能が低下している乾燥肌は、アトピー性皮膚炎を引き起こすきっかけの1つともいわれています。
アトピー性皮膚炎はさらなる肌の乾燥をまねく可能性がある皮膚の病気なので、疑われる場合は早めに医師に相談するようにしましょう。
●乾皮症(皮脂欠乏症)
乾燥肌が進行すると、乾皮症になる場合があります。乾皮症は、皮膚がカサカサになり剥がれ落ちたり、かゆみを伴ったりすることがある皮膚の病気です。
乾皮症は、肌の皮脂と水分が減少することが原因といわれています。初期は、皮がむけたりひび割れたり肌がゴワゴワする程度ですが、症状が進むと皮膚が亀の甲羅のようにひび割れ、赤みや強いかゆみを生じることもあります。
年齢とともに肌が乾燥しやすくなるため、乾皮症は中高年に多く見られます。男性は女性よりやや若い年代から乾皮症になる方が増えはじめます。
●乾燥性皮膚炎(皮脂欠乏性湿疹)
乾燥肌で炎症し、湿疹が出てきた場合は、乾燥性皮膚炎の可能性があります。乾燥性皮膚炎は乾皮症が悪化した状態で、皮脂欠乏性湿疹ともよばれます。
乾燥肌は進行するとかゆみを伴うことが多く、爪でかいてしまうと炎症を起こし、さらにかゆみが増してしまいます。このかゆみと掻破の悪循環が乾燥性皮膚炎の原因だといわれています。
乾燥肌が皮膚の病気につながらないようにするためにはどうすればよい?
乾燥肌が原因といわれている皮膚疾患を予防するためには、基本的な乾燥対策をしっかり行うことが大切です。乾燥肌にならないために、日頃からぜひ実践していただきたい対策方法を解説します。
あくまで乾燥肌の方が皮膚の病気にならないための方法の紹介ですので、すでに赤みやかゆみなどの症状がある方は、一度皮膚科を受診して医師のアドバイスを受けるようにしてください。
●化粧品や保湿剤を使ったスキンケアをしっかり行う
乾燥肌を悪化させないためには、化粧品や保湿剤を使って肌をしっかり保湿することが大切です。
洗顔後や入浴後は、ヒアルロン酸やセラミド、グリセリンなど保湿効果が期待できる成分が配合された化粧水や乳液をたっぷり塗ります。肌が弱い方は、香料や着色料、アルコールなどが含まれていない刺激の少ないものを選ぶようにしましょう。
肌が敏感になっているときは、化粧水とヘパリン類似物質のみにするなど、シンプルなケアにします。ヘパリン類似物質は尿素より刺激が少ないため、乾燥肌の方にも安心して使っていただけます。
心配な方は一度二の腕などに塗ってしばらく時間をおいて、かゆみや赤みの反応がないか確かめてから使ってみてください。
●毎日入浴して肌を清潔に保つ
乾燥肌から皮膚の病気に進行させないためには、肌を清潔に保つことも大切です。毎日、入浴やシャワーなどで、肌の表面に付着している酸化した皮脂や汗、古い角質、ほこりなどを洗い流します。
顔や体を洗うときは、洗浄力の高い石けんなどを避け、なるべく低刺激なものを使います。石けんや洗顔料は、泡立てネットなどでしっかり泡立てて、優しく洗いましょう。
洗顔後や入浴後は、肌内部の水分の蒸発を防ぐ皮脂も洗い流されているので、早めに保湿するようにしてください。
●加湿器を使って部屋の湿度を上げる
どんなにスキンケアをしても、乾燥した空間にいるだけで肌の水分は蒸発していってしまいます。部屋が乾燥している場合は、加湿器を活用して湿度を上げましょう。
エアコンは1年を通して、室内を乾燥させる原因になります。冷房の設定温度は高め、暖房の設定温度は低めにするようにし、なるべく部屋を乾燥させないようにしましょう。
とくに秋から冬にかけては乾燥しやすい季節なので、湿度管理には注意してください。暖房やヒーターをつけると、さらに乾燥しますので、加湿器がない場合は濡れタオルを室内にかけておくなど工夫してみてください。
乾燥肌は病気の原因のひとつ。気になることは皮膚科で相談しましょう
最初は肌がカサカサする程度の乾燥肌ですが、放置することで皮膚の病気につながる可能性があります。かゆくてつらい皮膚の病気になる前に、日頃から乾燥対策を行うことが大切です。
また、かゆみや赤みがあるなど、皮膚疾患が疑われる場合は、早めに皮膚科を受診するようにしましょう。
内科医・糖尿病内科・統合医療医・漢方医。
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。
現在は、自身のクリニック:みやま市工藤内科で地域医療に力を注いでいる。
専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など多岐にわたる。
テレビ・ラジオなどのメディアでは、ジャンルを問わず様々な医療の最新情報を発信している。
NHK「ガッテン!」では、2018年度の最高視聴率を獲得した。
著書は15万部突破のベストセラー「やせる出汁」をはじめ、50冊以上に及ぶ。
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
このコラムが気に入ったらシェアしよう!
乾燥肌治療薬
-
第2類医薬品
- クリーム
- ローション
- スプレー
- Hクリーム
- 泡フォーム
工藤医師よりコメント
乾燥肌が進むと不快な症状を感じるだけでなく、肌年齢が低下したり、見た目にも老けてみられることがあります。また、乾燥肌を放置すると肌のバリア機能が低下し様々な皮膚疾患を併発したり、悪化させる可能性もあるため、乾燥がすすむ冬場はしっかり対策を行って頂きたいです。