コラム
COLUMN
乾燥肌になると、肌に赤みが生じるケースがあります。この赤みをメイクでごまかそうにも、カサつく肌はメイクのノリが悪いため、なかなかうまくカバーできないから困りもの。そもそも、なぜ赤みが生じるのでしょうか。今回は、乾燥肌に赤みが生じるメカニズムと、効果的な改善策を紹介します。
乾燥肌に赤みが生じるメカニズム
乾燥肌に見られる赤みは、外部刺激によって肌に炎症が起こるために生じます。まずは炎症とは何かを理解し、その上で、乾燥肌に赤みが生じるメカニズムについて詳しくみていきましょう。
●炎症とは
炎症は、体が外敵から命や健康を守るための免疫システムによる反応です。体は、異物の付着や体内への侵入などを察知すると、これらを排除し、さらにダメージを受けた細胞を取り除こうと働きます。この働きには白血球などの免疫細胞が必要なため、体はトラブルが発生した箇所の毛細血管を拡張させて、皮膚の血液量を一時的に増やして免疫細胞を集めます。その結果、トラブルが生じた箇所に腫れや熱感、そして、赤みといった反応が現れるのです。
●乾燥肌に赤みが生じるメカニズム
体が炎症を起こすと、腫れや熱感、赤みが生じることが分かりました。これは肌でも同じです。そもそも肌には、ウイルスや菌、花粉などの異物が体内へ侵入しないよう、防御する機能(バリア機能)が備わっています。さらにバリア機能は、肌の水分を保持する役割も担っていますが、これは以下のような要因によって崩れることがあります。
① 洗顔時の摩擦
バリア機能は、肌の一番外側にある角質層が整っていることで保たれます。しかし洗顔時に肌をゴシゴシこすってしまうと、角質層が傷つき、バリア機能を低下させてしまいます。また、熱いお湯で洗い流すことでも、バリア機能の維持に必要な皮脂を取り過ぎてしまい、バリア機能を崩す原因になります。
② スキンケアアイテムの刺激
化粧品に含まれる香料や着色料、アルコールなどの成分は、乾燥肌には刺激となることがあります。特に、アルコールは皮脂を取り除く働きがあるので、バリア機能を崩す要因となりやすいです。
③ 紫外線・花粉、ダニやハウスダストによるダメージ
紫外線を浴びたり、花粉やダニなどに触れたりすると、肌はダメージを受け、バリア機能を低下させると考えられています。
④ 生活習慣の乱れによる肌の代謝の低下
バリア機能は、肌が一定のサイクルで生まれ変わる代謝の仕組み(ターンオーバー)によっても維持されています。しかし、睡眠不足や栄養の偏りなど、生活習慣が乱れてしまうと、ターンオーバーが滞り、バリア機能も維持できなくなる可能性があります。
これらの要因によってバリア機能が崩れてしまうと、乾燥肌になるだけでなく、肌は外部刺激に敏感になり、刺激を受けた箇所が炎症を起こしやすくなると考えられています。通常、炎症はずっと続くわけではなく、異物やダメージを受けた細胞が取り除かれると、免疫細胞を集める必要もなくなるため、血管は収縮し、赤みや腫れなどの症状も治まります。しかし、バリア機能が低下した状態にある乾燥肌の場合、肌は外部刺激に弱く、トラブルを繰り返しやすい傾向にあります。トラブルを繰り返すことで、毛細血管の拡張が戻りにくくなり、赤みが続いてしまうことも少なくありません。つまり、乾燥肌による赤みを抑えるためには、肌トラブルを繰り返さないよう、バリア機能をしっかり整えることが大切なのです。
乾燥肌の赤みを放置するとどうなる?
「肌がちょっと赤いぐらいなら、大したことないか……」と、考える人もいるかもしれませんが、肌の赤みを軽視してはいけません。肌に赤みが残っているということは、軽い炎症が慢性的に起こっている状態といえます。こうした状態を放置してしまうと、肌細胞はますますダメージを受けるため、肌の状態が悪化して、かゆみやヒリヒリした感じが生じたり、シミやしわができるなど、肌の老化が進んだりする可能性があります。肌の赤みは放置せず、きちんと対処するようにしましょう。
バリア機能を整えて、乾燥肌の赤みを抑えよう
先に解説した通り、乾燥肌による肌の赤みを改善するには、バリア機能を整え、トラブルを起こしにくい肌状態にしていくことが大切です。以下のポイントを参考に、バリア機能を崩す要因を取り除いていきましょう。
●正しい洗顔方法で優しく洗う
石けんをしっかり泡立て、手指が直接肌に触れないよう、泡で顔を包み込むようにして優しく洗います。すすぐ際は、38~40度程度のぬるま湯で、すすぎ残しのないよう丁寧に行いましょう。
洗顔が終わったら、清潔な柔らかいタオルを肌に押し当て、そっと水分を拭き取ります。
この時も、決して肌をこすらないように気を付けましょう。
●低刺激・保湿剤高配合の化粧品でスキンケア
乾燥肌に刺激を与えてしまう可能性のある、香料や着色料、アルコールなどの含まれていない、低刺激の化粧品を使いましょう。また、スクワランやアミノ酸、セラミドなどの保湿成分が高配合されたアイテムは、肌を効果的に潤し、バリア機能を整えてくれる効果が期待できます。保湿剤を含んだ化粧水や美容液でたっぷり潤いを与え、仕上げは乳液やクリーム、白色ワセリンなどの油分を含むアイテムで潤いをキープするようにしましょう。
●紫外線・花粉・ダニ・ハウスダストなど、外部刺激をブロック
紫外線や花粉は、肌に炎症を起こす元です。外出する際は日焼け止めクリームをしっかり塗り、汗をかいたらこまめに塗り直すようにしましょう。花粉が飛散する季節はマスクを着用し、衣服もつるつるとした花粉のつきにくい素材を選ぶのがオススメです。
ダニやハウスダストも、肌トラブルの原因になります。掃除と換気を定期的に行い、部屋を清潔に保ちましょう。また、皮脂や汗のつく寝具は、ダニの温床になりやすいです。枕カバーやシーツなどのリネン類はこまめに洗い、休日は布団をしっかり干しましょう。
●生活習慣を整える
睡眠不足や栄養の偏りは、自律神経の乱れを起こし、ターンオーバーを狂わせる原因となります。夜更かしは控え、早寝・早起きを心がけましょう。食事は、一日三食、栄養バランスのよい献立が理想的です。特に、肌の原料となるタンパク質、ターンオーバーを整えるビタミンAやビタミンB2、6、12、ビタミンE、亜鉛、皮脂の元となる必須脂肪酸などを積極的に取りましょう。
<各栄養素が豊富に含まれている食材>
タンパク質…肉や魚、豆類
ビタミンA…緑黄色野菜
ビタミンB2…豚レバーや納豆
ビタミンB6…マグロやニンニク
ビタミンB12…アサリや牡蠣
ビタミンE…アボカドや豆乳
亜鉛…牛肉や卵黄
必須脂肪酸…青魚やエゴマ油
●赤みがひどい場合は病院へ
バリア機能を整える対策を行っても、肌の赤みが改善されなかったり、かゆみやヒリヒリした感じをともなう場合には、湿疹やアトピー性皮膚炎など、肌の疾患を起こしている可能性があるため、速やかに皮膚科へかかりましょう。炎症を抑える薬の使用や、医師によるホームケアの指導を受ける必要があります。
まとめ
乾燥肌の赤みの正体は、炎症であることが分かりました。通常の炎症であれば、トラブルが解決されるとともに治まるものの、バリア機能が低下した乾燥肌は、肌トラブルが繰り返されやすいため、赤みも治まりにくくなってしまいます。今回紹介したポイントを参考に、バリア機能をしっかり整えて、肌の赤みを改善してくださいね。
金沢医科大学医学部を卒業後、大学病院で小児科、市中病院で内科医として勤務。皮膚科、美容皮膚科でも研鑽を積み、2018年クリスタル医科歯科クリニックにて内科、アレルギー科、美容皮膚科を開設。内科院長として勤務。
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乾燥肌治療薬
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第2類医薬品
- クリーム
- ローション
- スプレー
- Hクリーム
- 泡フォーム
中島医師よりコメント
乾燥肌のケアをしないと、肌に赤みや痒みがでることがあります。肌の赤みや痒みは肌に炎症が起きている証拠です。保湿剤でも赤みが治まらない場合は、抗炎症剤を使用する必要があるので早めに医療機関を受診するようにしましょう。