コラム
COLUMN
乾燥肌にはさまざまな原因がありますが、肌のうるおいを維持する成分の不足も一因です。
肌の保湿力に関係する重要な皮膚構成成分のひとつに「セラミド」があります。そのため、セラミドを補うことで乾燥肌対策ができます。セラミドは、スキンケアに加えて食品などから補うこともできる成分です。
肌の外側からだけでなく内側からもセラミドを補給できるため、適切な方法を知り日頃からの実践を心がけると良いでしょう。
今回は、乾燥肌対策のためにセラミドを補う方法や、日常的に取り入れられる適切なスキンケア・インナーケアを紹介します。乾燥肌の予防にもお役立てください。
乾燥肌の原因はセラミド不足?
肌の角質層には、皮脂、角質細胞間脂質、天然保湿因子の3つがあります。通常は、この3つの働きにより肌の水分が保たれていますが、何らかの原因で減少することにより、乾燥肌になってしまいます。
角質層は肌のバリア機能を有する重要な部分で、肌の水分を保つために欠かせません。角質細胞間脂質の約50%を占める成分がセラミドです。皮膚細胞をつなぐ働きをするとともに、水分や油分をため込む作用もあるため、優れた保湿成分として役立ちます。
セラミドを含む細胞間脂質が減ると、肌のバリア機能が低下します。バリア機能は外部からの異物の侵入や刺激から肌を守るだけでなく、水分の蒸発を防ぐためにも重要です。
そのため、バリア機能が低下すると正常な水分維持ができなくなり、乾燥肌になってしまいます。
セラミドについて、さらに詳しく見ていきましょう。
セラミドは保湿力の高い成分
前述のとおり、セラミドを含む角質細胞間脂質をはじめ、皮脂でできた皮膚膜、天然保湿因子の3つの物質からバリア機能が形成されます。どの物質が欠けてもバリア機能は正常に働きません。
セラミドは水に溶けない成分で、ほかの脂質とともに水分を挟み込むようにして保水します。また、レンガを接着させるセメントのような役割をしながら角質層の細胞間で働き、肌にうるおいをもたらします。
さらに、セラミドは保湿力に優れた成分として有名なコラーゲンやヒアルロン酸よりも、さらに高い保湿性を持つ成分です。
乾燥肌の方は、一般的な肌の方よりセラミドが少ないといわれます。
肌の水分はセラミドに結合することで留まれるため、セラミドが不足すると水分補給しても十分な保湿効果を得られません。そのため、乾燥肌の予防には、肌の水分補給に加えてセラミドの補給も重要です。
セラミドが減少する原因
セラミドは常に一定量が保たれるわけではなく、さまざまな要因で減少してしまいます。
不足を防ぐには、まずセラミドがなぜ減ってしまうのかを知り、適切に対応することが大切です。セラミドが減少する主な原因を見ていきましょう。
加齢
セラミド減少の最も大きな原因は加齢です。加齢による皮膚の自然な老化にともないセラミドも減少し、水分を留められなくなっていきます。
若く健康な肌にはセラミドが豊富に含まれているためうるおいが保たれますが、加齢とともに減少していくことは避けられません。水分を保持できるよう対策が必要です。
個人差はありますが、セラミドは一般的に30歳頃から著しく減少します。40歳頃には20代の半分程度の量に減るといわれています。
加齢は防げないため、セラミドが減少しやすい年代に差しかかったら、一般的な肌の方でもセラミド補給を心がけることが重要です。
気候や環境の変化
セラミドは気候や環境の変化にも影響を受け、減少します。一般的な肌質の方でも、気候や環境により湿度が下がると肌が乾燥しやすくなるため、湿度の低い環境では対策を心がけることが大切です。
本来はセラミドを十分に作り出す力のある肌でも、適切な対策をせずに乾燥した環境にさらされ続けると、乾燥肌になってしまうケースもあるため気を付けましょう。
生活習慣の乱れ
偏った食生活や睡眠不足が続くと、肌が生まれ変わるサイクルを維持するターンオーバー機能が正常に働きにくくなります。
ターンオーバーが乱れると、十分なセラミドが作り出されなくなってしまうこともあるため注意が必要です。
生活習慣の乱れによりターンオーバー機能が低下するだけでも、乾燥肌になるリスクはあがります。加えて、セラミドが不足しやすい状況では乾燥肌が常態化しやすくなってしまいます。
セラミドの減少は加齢が主な原因ではあるものの、肌のターンオーバー機能は生活習慣から影響を受けます。10代や20代の方でも油断はできません。
間違ったスキンケア
セラミドは、過剰な洗浄により溶け出してしまうといわれます。本来は水に溶けない成分ですが、熱いお湯での洗顔や洗浄力の強すぎる洗浄料の使用により、流れ出てしまうことがあります。
肌に負担をかけるような洗い方をしている場合は、セラミド減少のリスクが高いため注意が必要です。
セラミドを補い乾燥肌を改善するスキンケアのポイント
セラミド不足を防ぐには、生活習慣の改善を心がけるほか、スキンケアによって表面を補う方法もあります。間違ったスキンケアによる流出を防ぐとともに、スキンケアアイテムにより補給しましょう。
過剰な洗浄はセラミドを減少させてしまうため、ゴシゴシ擦るような洗い方、熱いお湯や強い洗浄料の使用を避けることが大切です。
ぬるま湯を使い、洗浄料はよく泡立てて肌を泡で優しくなでるようにしながら洗いましょう。
洗浄後は、保湿剤を塗布するのがおすすめです。セラミドを配合したスキンケアアイテムも市販されています。保湿剤でセラミドを補い、バリア機能の維持に役立てましょう。
セラミドは体の内側からも補給できる
セラミドはスキンケアのみでなく、体の内側から補給することもできます。外側からのスキンケアによるセラミドの流出予防や補給に加え、内側から補うことも大切です。
肌は食べるものからも構成されるため、セラミドを含む食品を日常的に摂取すると良いでしょう。
セラミドを含む主な食品や、セラミドの材料となる成分、セラミドを効率的に摂取しやすいおすすめの食べ方を紹介します。
セラミドを含む食品
セラミドを含む食品には、こんにゃく、大豆、黒豆、小豆、ひじき、ワカメなどがあります。煮物や炒め物、サラダなどに使用しやすい食材が多いため、日頃から献立に取り入れると良いでしょう。
また、α-リノレン酸、DHA、EPAなどのオメガ3系脂肪酸は、セラミドの材料となります。主に、亜麻仁油やえごま油のほか、イワシやサンマなどの青魚にも多く含まれます。
オメガ3系脂肪酸は熱に弱いため、ドレッシングや刺身など生食が望ましいです。また、青魚から摂る場合はできるだけ脂ごと食べましょう。ツナ缶などを活用すると調理に手間がかからずより気軽に摂取できます。
なお、食材からの摂取に加えて、サプリメントの利用もひとつの方法です。セラミドを含むサプリメントも販売されており、皮膚の水分保持能を改善する効果が期待できる商品も販売されています。
しかし、サプリだけに頼るのではなく、1日3食栄養バランスの良い食事とあわせてサプリを摂取するようにしましょう。
乾燥肌対策でセラミド以外に効果が期待できる成分
乾燥肌の改善には、保湿効果の高い成分が含まれたスキンケアアイテムを日常的に使うことが望ましいです。セラミドのほかにも、保湿効果の高い成分は複数あります。
代表的な2つの成分である、ヒアルロン酸とヘパリン類似物質を紹介します。
ヒアルロン酸
肌の構成成分の一種で、水分と結びついて肌を乾燥から守る役割のほか、肌のハリや弾力を生み出す役割があります。
ただし、一般的なスキンケア用品に含まれているヒアルロン酸は、人工的に作られたもので、分子量が大きいため、肌の角質層に浸透させるのは難しいです。
そのため、化粧水などのスキンケア用品が真皮のヒアルロン酸と同じ役割を果たすことはできませんが、肌の表皮の上に留まって肌のうるおいをキープし、バリア機能の改善とターンオーバーの正常化をサポートしてくれます。
肌表面だけでなく角質層内での保湿作用を求める場合は、分子の小さい加水分解ヒアルロン酸を含むものを選ぶと、肌の角質層まで浸透しやすくなります。
ヘパリン類似物質
ヒアルロン酸と同様に、水分子を引き寄せて保持する作用により保湿効果が得られる成分です。
有効成分としてヘパリン類似物質が含まれるものには、医薬品や医薬部外品があります。医薬品の場合は、保湿に加えて乾燥肌の治療薬として使用されます。医薬部外品は、美容目的や毎日のスキンケアに気軽に利用できます。
いずれも、ローションタイプやクリームタイプなど多様な形状の製品があり、性質や使用感がそれぞれ異なります。季節や肌の状態に合わせて選ぶと良いでしょう。
ただし、肌荒れがひどい場合には自己判断でスキンケアアイテムを使用するのは避け、まずは速やかに医療機関を受診しましょう。
乾燥肌を改善するために日常でできること
乾燥肌を改善するためには、セラミド補給や保湿を意識したスキンケアだけでなく、日常生活の中でできることもあります。
食品からのセラミド補給など食事によるケアを含め、日常の習慣からアプローチすることをインナーケアと呼びます。適切なスキンケアとインナーケアを継続することが、乾燥肌の改善や予防には重要です。
以下では、乾燥肌改善のために日常的に心がけると良いことを紹介します。
睡眠時間の確保と適度な運動
十分な睡眠時間を確保すると、成長ホルモンが分泌されやすくなります。成長ホルモンはターンオーバー機能の維持に役立つため、肌が生まれ変わるサイクルが正常化し、肌の調子が改善されます。
睡眠時間を確保するためには、就寝前の食事、スマートフォンやテレビの視聴を控え、入眠しやすいよう環境を整えると良いでしょう。
また、適度な運動を取り入れると血行が良くなり、ターンオーバー機能の乱れが改善されます。運動は継続することが重要なため、ストレッチやウォーキングなど、習慣化しやすいものを無理のない方法で行うことが望ましいです。
栄養バランスの良い食事と水分補給
セラミドを含む食品の摂取に加えて、タンパク質やビタミン類を中心に栄養バランスの整った食事を摂ることも大切です。
例えば、ビタミンB2とタンパク質は肌のターンオーバーの正常化に役立つ栄養素です。レバー、豚肉、うなぎ、納豆、牛乳などにはビタミンB2とタンパク質のいずれも含まれているため、日常的に食事に取り入れると良いでしょう。
また、水分補給が足りないと肌が乾燥してしまうこともあるため注意が必要です。水を飲むことで肌の内側から水分が補われ、ターンオーバー機能も改善されやすくなります。
必要な水分の量は活動量などによっても異なりますが、一般的には1日あたり2リットルが水分摂取の目安量とされています。一度に大量に飲むのではなく、こまめに摂取することが望ましいです。
室内の加湿
冬季など空気が乾燥している季節は、室内の加湿を行い適切な湿度を維持する必要があります。50~60%を保てるよう心がけましょう。湿度が低い場合は、加湿器を使用したり濡れタオルを干したりして、室内の乾燥を防ぐことが大切です。
また、見落とされがちですが、夏場もエアコンの使用により湿度が下がりやすくなります。エアコンが効いた室内に長時間滞在する場合、肌が乾燥しやすくなるため注意が必要です。
外出先のオフィスや学校などでは、加湿するのが難しい場合もあるかもしれません。夏場は、乾燥対策ができるような化粧水ミストを持ち歩くなど、工夫すると良いでしょう。
乾燥肌予防に欠かせないセラミドを補給して健康的な肌を目指そう
セラミドは肌の角質細胞間脂質の主成分です。細胞間で水分を挟み込むようにする働きがあるため、肌のうるおいを保つのに欠かせません。
セラミド不足すると、肌のバリア機能が低下し乾燥肌を招いてしまいます。セラミドは加齢や気候などの環境因子により減少するため、対策が必要です。
スキンケアだけでなく食品からもセラミドを補い、肌の外側と内側の双方からケアすると良いでしょう。
さらに、セラミド補給だけでなく、生活習慣や環境にも日ごろから気を付けながら、乾燥肌を予防しましょう。
日本皮膚科学会皮膚科専門医。
琉球大学医学部卒業/東京大学医学部附属病院皮膚科・都内美容皮膚科・形成外科勤務後、ココメディカルクリニックを開業。一般皮膚科、美容皮膚科、アレルギー外来、女性外来を行い、漢方薬などを用いた近代西洋医療と補完代替医療、伝統医学等を組み合わせて行う統合医療を積極的に取り入れている。
このコラムが気に入ったらシェアしよう!
乾燥肌治療薬
-
第2類医薬品
- クリーム
- ローション
- スプレー
- Hクリーム
- 泡フォーム
泉医師からのコメント
肌を美しく保つ上でとても重要な役割を果たしているセラミドは、化粧品などで外側からも取り入れやすい成分です。「天然」「ヒト」「植物」「疑似」の4種類に分かれ、配合量も化粧品によって異なるので、セラミド化粧品を選ぶ際に確認することをおすすめします。