コラム
COLUMN
健やかな肌を維持するには、ターンオーバー機能を正常に保つ必要があります。「肌のターンオーバー」という言葉は聞いたことがあっても、内容を詳しく理解している方は少ないかもしれません。
今回は、肌のターンオーバーとは何か、重要性や乱れてしまう原因、乱れるとどうなるかなど、詳しく説明します。また、ターンオーバーを正常に保つために日頃からできることも紹介します。
肌のターンオーバーとは?
肌のターンオーバーとは、皮膚が新しく生まれ変わる仕組みのことです。皮膚の基底層で新しい表皮細胞ができて、少しずつ押し上げられて角質細胞となります。古くなった角質細胞は、垢やフケとして剥がれ落ちます。
正常な肌の場合、約4週間(28日間)がターンオーバーの周期とされますが、部位によっても適切な周期は異なります。ターンオーバーが乱れると、肌トラブルにつながるため注意が必要です。
肌のターンオーバーが乱れているサイン
ターンオーバーの乱れは、肌に何らかのサインとしてあらわれやすいため、日頃から肌の状態をチェックすると良いでしょう。
ターンオーバーが乱れているときによく見られるサインを紹介します。
くすみ
古い角層細胞が剥がれ落ちずに蓄積して角層の一部が厚くなり、肌表面がいびつな状態になることでくすんで見えます。
肌がくすむと透明感がなくなり、顔色が暗く見えてしまいます。また、肌がごわつく「角質肥厚」もくすみと同様の現象です。
ニキビ
ターンオーバーが乱れると、毛穴の周りの角質が厚くなり、毛穴が詰まりやすくなります。毛穴が詰まることでニキビができやすくなります。
さらに、皮脂や古い角質、メイク汚れなどにより角栓ができると、毛穴が完全に詰まってしまいます。
小じわやハリのなさ
ターンオーバーが乱れた肌は、乾燥しやすくなります。
角層細胞に含まれる天然保湿因子(NMF)が十分に作られなくなるからです。水分が保持されにくくなり、ハリが失われ小じわができやすくなってしまいます。
シミ
ターンオーバーが乱れると、体内で生成されたメラニンが排出されにくくなり、表皮に蓄積してシミとなります。
さらに、メラニンが過剰になると、そばかすができることもあるため注意が必要です。
肌のターンオーバーが乱れる原因
肌のターンオーバーが乱れる原因は複数あります。外的な要因と内的な要因に加えて、加齢もターンオーバーの乱れの一因です。加齢は避けることができません。
しかし、なかには予防できるものもあるため、ターンオーバーを乱す原因を知っておくと良いでしょう。外的要因と内的要因に分けて主なものを紹介します。
乾燥や紫外線などの外的要因
紫外線や摩擦、乾燥などによる肌へのダメージは、ターンオーバーを乱します。ダメージを受けると修復のためにターンオーバーが早まり、保水機能が不十分になります。
さらに、肌を守ろうとすることから、角質も厚くなってしまいます。
日焼けだけでなく、ゴシゴシ擦るなどの間違ったスキンケアや保湿不足もターンオーバーを乱す原因となるため気をつけましょう。
ストレスや睡眠不足などの内的要因
精神的なストレスは、自律神経やホルモンバランスを乱す原因となり、肌のターンオーバーの乱れにもつながります。
また、睡眠中には成長ホルモンが活発に分泌され、肌のターンオーバーを促進します。ところが、睡眠不足になると成長ホルモンの分泌が妨げられてしまいます。
さらに、栄養不足や便秘もターンオーバーの乱れの一因です。とくに、肌の構成要素であるタンパク質と、その吸収を助けるビタミンやミネラルが不足しないようにしましょう。
便秘は腸内環境を悪化させます。老廃物が全身に巡ってしまい、肌のターンオーバー機能が低下するため注意が必要です。
喫煙や飲酒のしすぎも、血液循環や代謝機能に悪影響が出るため、ターンオーバーが乱れる原因となります。
運動不足も血流が悪くなり、必要な栄養分が運ばれにくくなってしまうため気をつけましょう。
加齢
ターンオーバーの周期は、加齢により長くなっていきます。
個人差はありますが、40~50代で約45日、60代以降で100日前後が目安とされています。なお、生活習慣やスキンケアの仕方などの違いによっても周期は変わります。
肌のターンオーバーを整え美肌を目指す方法
肌のターンオーバーを整えるためには、スキンケアを見直すと良いでしょう。適切なスキンケアの方法を紹介します。
肌に優しい適切なスキンケア
肌に刺激を与えるとターンオーバーが乱れるため、優しいスキンケアを心がけることが大切です。
洗浄力の強すぎない洗顔料をよく泡立て、擦らずに泡で肌を洗いぬるま湯で流し、優しく拭いてください。
洗顔後の肌は乾燥しやすい状態のため、できるだけ速やかに保湿を行いましょう。
保湿性に優れた成分を使った保湿ケア
洗顔後に行う保湿には、化粧水、美容液、乳液、クリームなどを使用します。
化粧水で肌に水分を補い、油分を含む乳液やクリームで蓋をして水分を閉じ込めるようにしましょう。美容液は必要に応じて気になる部分に使います。使用する順は製品の記載に従ってください。
保湿性に優れた成分は、ヘパリン類似物質やセラミドが代表的です。
ヘパリン類似物質は保湿に加え、血行促進、抗炎症作用の効果があります。
ヘパリン類似物質を含むクリームやローションには、医薬品と医薬部外品があります。医薬品の場合は、保湿に加え乾燥肌を治療する効果があり、医薬部外品は、保湿効果が期待でき日常のスキンケアに使えます。
セラミドは化粧水や市販薬の保湿剤に含まれる成分で、水分と結合する力が強く保水性が高いです。
肌を保護するための紫外線対策
肌の刺激となる紫外線を避けるために、日頃から対策することが大切です。
室内にも紫外線は入るため、日中は外出の有無にかかわらずスキンケアの最後に日焼け止めを塗りましょう。さらに、外出時は帽子や日傘の使用、長袖の着用が望ましいです。
肌のターンオーバーを整えるための生活習慣
肌のターンオーバーを整えるには、体の内側から代謝を高める習慣を意識することも大切です。
睡眠、運動、食事を中心とした生活習慣を整えることが、健やかな肌にもつながります。心がけたい生活習慣について説明します。
睡眠時間の確保と適度な運動
成長ホルモン分泌のためには、十分な睡眠時間を確保することが大切です。入眠環境を整えるため、就寝前の食事、スマホの使用、テレビの視聴などを控えましょう。
また、ターンオーバーを乱す血行不良を改善するために、適度な運動を取り入れると良いでしょう。ストレッチやウォーキングなどを継続して行うのがおすすめです。
栄養バランスの整った食事
肌のターンオーバーを整えるには、タンパク質やビタミン類を中心に栄養バランスの整った食事を摂ることが大切です。
例えば、レバーや豚肉、うなぎ、納豆、牛乳などにはターンオーバーの正常化に役立つビタミンB2とタンパク質が含まれます。ファストフードやインスタント食品の食べすぎはビタミンB群を消費し、肌のターンオーバーを遅らせる可能性があるため注意が必要です。
また、朝食も代謝を上げるのに役立ちます。朝食の摂取を習慣化できるよう、食事リズムを整えると良いでしょう。
水分補給と加湿
水を飲むと、肌に水分を補えるだけでなくターンオーバーの改善にも役立ちます。必要な水分摂取量は活動量などによっても異なりますが、1日あたり2リットルが目安です。一度に大量に飲むのではなく、こまめに摂取しましょう。
湿度が低い冬季などは、肌の乾燥を防ぐために加湿器の使用や濡れタオルを干すなどの工夫も効果的です。
ターンオーバーを整えて健やかな肌を守ろう
肌が新しく生まれ変わるターンオーバーを整えることは、美しく健やかな肌を守るために欠かせません。
ターンオーバーが乱れると肌の不調がサインとして出るため、見逃さないことが大切です。
ターンオーバーの正常化には、保湿を中心とする適切なスキンケアに加えて、生活習慣の見直しも役立ちます。外側からも内側からも、健やかな肌を守るためのケアを心がけましょう。
日本皮膚科学会皮膚科専門医。
琉球大学医学部卒業/東京大学医学部附属病院皮膚科・都内美容皮膚科・形成外科勤務後、ココメディカルクリニックを開業。一般皮膚科、美容皮膚科、アレルギー外来、女性外来を行い、漢方薬などを用いた近代西洋医療と補完代替医療、伝統医学等を組み合わせて行う統合医療を積極的に取り入れている。
このコラムが気に入ったらシェアしよう!
乾燥肌治療薬
-
第2類医薬品
- クリーム
- ローション
- スプレー
- Hクリーム
- 泡フォーム
泉医師からのコメント
肌は、常にターンオーバーが繰り返され、細胞が生まれ変わっていきます。肌の美しさと若々しさを保つには、日々の生活習慣を改善しましょう。肌の調子に不安を感じたらすぐに相談できる医療機関を見つけておくこともとても大切です。