コラム

【医師監修】ワセリンでアレルギーを発症する? ワセリンとアレルギーの関係を解説!

2022.12.08|乾燥肌・スキンケア

肌の保湿や保護を目的に、皮膚科でよく処方されるワセリン。ドラッグストアなどでも手ごろな価格で販売されているため、日常的に愛用している人も多いのではないでしょうか。そうした身近なワセリンですが、使用することでアレルギー反応を引き起こすことがあるのか、また逆にアレルギー症状の緩和に効果があるのか気になるところです。そこで今回は、ワセリンとアレルギーの関係について解説します。

ワセリンでアレルギーを引き起こすことはある?

保湿剤として知られるワセリンは、肌の表面に油膜を作り、肌の内側から水分が蒸発するのを防ぐことで保湿効果を得るものです。そのため、皮膚に浸透したり、水分を補給したりする働きはありません。そもそもワセリンは石油を高純度に精製して作られますが、その歴史は古く100年以上も前から使われているほどです。かつて精製技術が未発達だった時代には、不純物が含まれた製品が出回り、それが原因でかぶれなどを引き起こしていた歴史があるようです。しかし現在では精製技術が上がり、不純物もほとんど含まれなくなったため、アレルギーや副作用の心配は少ないと考えられています。特に「白色ワセリン」など純度の高いものは、赤ちゃんや敏感肌の人も安心して使えるとされています。

とはいえ、まれにかゆみやかぶれ、発疹などの接触性皮膚炎を引き起こすことはあるため、初めて使用する場合は事前に二の腕などでパッチテストを行うと安心でしょう。

ワセリンは赤ちゃんにも使える? 使用時のポイントとは

ワセリンに赤ちゃんを塗る

アレルギーや副作用の心配が少ないとされるワセリンは、肌のバリア機能が未熟な赤ちゃんのスキンケアにもおすすめです。特に純度が高いものは、刺激が少なく、安全性も高いので、よだれやおむつかぶれの予防にも活躍するでしょう。

赤ちゃんへの使用時には留意しておきたいポイントがあります。ワセリンは肌を油膜でコーティングすることで、肌内部の水分を逃さないように保湿しますが、この油膜はまれに汗の蒸発をも防いでしまうケースがあるようです。赤ちゃんは大量の汗をかくことで体温を調節します。しかし、油膜が汗の蒸発を妨げてしまうと、肌の表面の温度が上昇し、ムズムズとかゆくなったり、あせもの原因になったりすることがあります。そのためワセリンを塗る際は、赤ちゃんの肌の様子を見ながら、季節や住環境などに合わせて使用量や塗る場所、回数などを調整してください。また、塗布する前に汗を拭き取るなど肌を清潔にしておくこともポイントです。

さらに近年の研究では、赤ちゃんの頃から皮膚を保湿しておくことで、「アトピー性皮膚炎」の発症がある程度抑えられる可能性があるという結果が報告されています。そういった理由からも、赤ちゃんのスキンケアに、刺激が少なく、安心して使える純度の高いワセリンを活用してみてはいかがでしょうか。

口唇炎や口唇ヘルペスにもワセリンが効果的?

安全性が高く、低刺激のワセリンは、口周りのケアにも使用することができます。

唇のトラブルで代表的なものの一つに「口唇炎」があります。口唇炎は唇全体に炎症やかゆみを引き起こしますが、進行すると亀裂が入って血が滲むこともあるようです。軽度の症状であれば、ワセリンを塗ることで唇を保湿すると同時に、外的要因から保護するので、改善が期待できると考えられています。ただし、治療薬ではないので、症状が進行している場合は皮膚科医に相談しましょう。また、唇が乾燥しがちな人は、日ごろからリップクリームの要領で塗布することで、予防にもなるでしょう。

同様に「口唇ヘルペス」の症状緩和の目的で、ワセリンを使う人もいるようです。口唇ヘルペスは多くの場合、口周りにピリピリとした前兆があり、やがて痛みをともなう水ぶくれができます。「単純ヘルペスウイルス」による感染症であるため、治療には抗ウイルス薬の内服や軟膏が有効とされますが、この時もワセリンを塗ることで外的な刺激から保護され、症状が和らぐと感じる場合があるようです。口周りのケアにワセリンを使用する場合も、より純度の高いものを選ぶと安心です。

ワセリンはアレルギー性鼻炎の予防にも有効

アレルギー性鼻炎に苦しむ女性のイメージ

ワセリンは、「アレルギー性鼻炎」の予防の観点でも注目が高まっています。アレルギー性鼻炎は、ハウスダストや花粉など、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が、鼻の粘膜を刺激するなどして発症しますが、その際、ワセリンを鼻の入口付近に塗っておくことで、アレルゲンの侵入を防げると考えられています。油膜でさまざまな刺激を防ぐことで、アレルギー性鼻炎独特のかゆみや炎症の軽減が期待できます。かゆみを抑制できれば、くしゃみや鼻をかむ、かきむしるといった行動が減るため、皮膚や粘膜を傷つけずに済み、鼻炎の悪化も防げるでしょう。

鼻周りにワセリンを塗る際は、清潔な手、または麺棒を使ってワセリンを取り、粘膜を傷つけないようにやさしく塗ってください。1日に3、4回塗り直して、効果をキープさせましょう。毎年、花粉に悩まされているなら、自分の調子が悪くなる時季を見据えて、早めに始めるとよいでしょう。

まとめ

ワセリンは、皮膚の表面に油膜を作って保湿・保護効果を得るもので、アレルギーを引き起こすことはほとんどないと考えられています。近年は、赤ちゃんの頃からの保湿ケアが、アトピー性皮膚炎の発症率を下げる可能性が示唆されており、その際の保湿剤としても、刺激の少ないワセリンに注目が集まっています。今回ご紹介した内容を参考に、日々の保湿ケアにワセリンを取り入れてみてはいかがでしょうか。

中島医師よりコメント

ワセリンは肌の表面に油膜を張り、肌を保護します。また、肌や鼻の粘膜にワセリンを塗ることで、花粉やハウスダストなど様々なアレルギー物質から守ってくれることも期待できます。ワセリンは、状況や症状に応じて使うと良いでしょう。

医師・中島由美
監修者
医師・中島由美

金沢医科大学医学部を卒業後、大学病院で小児科、市中病院で内科医として勤務。皮膚科、美容皮膚科でも研鑽を積み、2018年クリスタル医科歯科クリニックにて内科、アレルギー科、美容皮膚科を開設。内科院長として勤務。

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