VOL.5 便秘薬の新薬の効果とは?服用時の注意点はある?
日本では従来、便を柔らかくしたり、カサを増やしたりして排便を促す「非刺激性下剤」と、腸を刺激して排便を促す「刺激性下剤」の2つのタイプの便秘薬が主流でした。しかし中には、「体質的に合わない」、「副作用に悩まされる」などの理由で、薬物療法に頼れない人もいました。そのような状況の中、近年、従来の便秘薬とはアプローチがまったく異なる新しい便秘薬が相次いで登場しています。従来の薬が使いにくかった方でも使用できる薬もあり、薬剤療法の可能性が広がっています。いずれも現段階では病院での処方のみとなりますが、治療の選択肢のひとつとしてチェックしておきたいですね。そこで今回は、気になる便秘薬の新薬についてご紹介します。
便秘薬の新薬「ルビプロストン」と「エロビキシバット水和物」に注目
まず1つ目は、2012年に承認された「ルビプロストン」です。これは「上皮機能変容薬」と呼ばれるタイプの薬で、小腸の粘膜上皮に作用し、腸管内への水分の分泌を増やす効果が期待できます。腸管内の水分量が増えれば便も柔らかくなるので、排便がしやすくなります。また、長期にわたって服用しても効果が得づらくなるといった習慣性がみられず、酸化マグネシウム製剤の長期投与による高マグネシウム血症が心配される高齢者や、腎臓疾患をかかえている方も安心して服用できます。
副作用として下痢や頭痛、めまい、吐き気や嘔吐などが挙げられてはいますが、基本的に長期服用しても副作用が出にくく、万が一出たとしても重症化するケースは少ないとされる安全性の高い薬です。臨床試験の結果では、服用した人の約60%が24時間以内に便意を催すという結果が報告されており、効果の高さも優れているといえそうです。
2つ目は、消化液の一種である「胆汁酸」に着目した、従来の便秘薬とはまったく異なるタイプの「エロビキシバット水和物」です。2018年1月に承認されたばかりで、国内初の「胆汁酸トランスポーター阻害」という薬効を特徴とします。簡単にいうと、胆汁酸の体内への吸収を抑制する薬です。腸のぜんどう運動や老廃物の排出にかかせない胆汁酸は、腸管内に不足すると腸の働きが鈍くなり、便秘を引き起こしてしまいます。通常、胆汁酸は食物の消化・吸収のため腸管内で働いた後、肝臓に吸収されるのですが、この吸収を抑制することで腸管内の胆汁酸を増やし、腸の働きをよくすることができるのです。
腸を刺激してぜんどう運動を促すのではなく、腸内をぜんどう運動されやすい状態に整えていく薬なので、自然な排便が得られます。副作用として腹痛、下痢が挙げられていますが、症状が出ることはほとんどないとされているのもこの薬の優れた点です。高い効果も期待されており、臨床試験の結果では、服用約5時間後に50%、24時間後には85.5%の人で排便がみられたそうです。従来の便秘薬で効果が得づらかった方や、副作用が気になっていた方にぜひ試してもらいたい薬です。
新薬の便秘薬と従来のものとの違いは?
・定期的に服用して自然な排便を促す「ルビプロストン」
従来の便秘薬は、たまった便を出したい場合に使用する頓服が主流で、即効性も高いことに対し、ルビプロストンは、慢性の便秘を根本から改善していこうとするため、定期的な服用が推奨されています。従来品に比べて即効性は感じにくいかもしれませんが、1回1錠を1日2回、食後に飲み続けることで排便に適した腸内の状態を保ち、排便リズムをしっかり整えていくことを目指した薬です。ルビプロストンと同様に腸内の水分分泌を促す便秘薬は従来品にもありますが、作用するのが大腸なので、下痢を引き起こしやすいという傾向がありました。しかしルビプロストンは小腸に作用するため下痢になりにくく、腹痛が現れにくいのも大きなメリットです。
・効果も高く、服用できる患者の範囲が広い「エロビキシバット水和物」
エロビキシバット水和物はルビプロストンと同様、定期的に服用することで、排便に適した腸管内の状態を保ってくれる薬です。1日1回、食前の服用となりますが、朝、昼、夕食のいずれのタイミングでも効果に変わりはみられないので、都合に合わせて服用でき、飲み忘れるリスクが少ないのもメリットです。さらに妊娠中の方でも、薬の使用上の有益性が危険性を上回ると判断される場合は服用が可能です。慎重投与や禁忌といった制限が少なく、従来品に比べて服用できる人の範囲が広いのも、この薬の特徴といえます。
新薬の便秘薬の注意点
●服用時の注意点
・ルビプロストン
副作用が現れにくいとされる薬ですが、用法・用量を間違えると、トラブルが生じることがあります。初回の服用時や、睡眠前・空腹時など服用するタイミングを守らずに飲んだ場合には、吐き気が起こりやすいとされています。それ以外にも、消化器官が弱い体質の人も吐き気を起こすケースがあるようです。当てはまる体質の方は消化管運動促進薬と一緒に服用すると吐き気が抑えられるので、医師に相談するとよいでしょう。
また下痢を起こしてしまった場合は、薬の効果が出過ぎたことが考えられます。用量を調整すると改善されるので、この場合も医師に相談しましょう。
・エロビキシバット水和物
エロビキシバット水和物は胆汁酸の吸収を阻害する薬剤のため、食事の刺激により胆汁酸が分泌される前に服用するのが望ましいとされています。服用のタイミングを間違えないようにしましょう。
また、胆汁酸製剤やアルミニウム含有制酸剤といったP糖タンパク基質薬を服薬中の方は使用に注意が必要です。併用するとエロビキシバット水和物の主作用が得られない場合や、特定の成分の血中濃度が上昇してしまうおそれがあります。併用する際は必ず医師に相談しましょう。
●服用してはいけない人
・ルビプロストン
妊娠中(妊娠している可能性のある人)や授乳中の人には、禁忌薬とされています。また腫瘍やヘルニアなどにかかっていて、腸閉そくになっている人(その疑いがある人)、薬の成分に対してアナフィラキシーなどの過敏症の症状が発生する人も服用できません。子どもへの使用は禁忌になっていませんが、安全性が確実でないため、控えた方がよいとされています。また重度腎機能障害患者、中度から重度の肝機能障害患者は慎重投与となります。
・エロビキシバット水和物
前に述べたP糖タンパク基質薬を服用中の方は注意が必要ですが、それ以外は特になく、妊娠中も場合によっては服用できるとされています。ルビプロストン同様に重度の肝機能障害患者は慎重投与となります。
まとめ
新しく登場した2つの便秘薬。便秘解消へのアプローチが従来品と異なるので、高い効果を実現しながら副作用のリスクを抑えていたり、服用できる患者の範囲が広かったりと、今後、使用の拡大が期待できることがわかります。新薬の登場により、これまでの便秘薬ではよい結果が得られなかった方も、すっきり便秘を解消できるかもしれませんね。試してみたい方は、一度かかりつけの医師に相談してみましょう。