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VOL.46 【医師監修】便秘から蕁麻疹を発症する可能性がある⁉ 便秘と蕁麻疹の関係について

ある日、突発的に現れる蕁麻疹(じんましん)。強いかゆみに我慢できず、かきむしってしまうと、かゆい部分が広がったり、かきすぎて皮膚がただれたりと、余計にひどい状態を招いてしまいます。蕁麻疹はさまざまな原因によって引き起こされますが、その原因の1つには、便秘があると考えられています。そこで今回は、便秘と蕁麻疹の関係や、便秘解消のポイントについて解説します。

便秘と蕁麻疹の関係

●蕁麻疹とは
蕁麻疹とは皮膚疾患の1つで、皮膚が何らかの刺激を受けることで赤く腫れ、強いかゆみが生じるものです。蕁麻疹の腫れ方はさまざまで、丸く現れることもあれば、地図のように不規則に広がる場合もあります。こうした腫れやかゆみは、発生から数時間程度で自然に消える場合が多いといわれています。
蕁麻疹は原因や経過などの特徴によって種類が分類されますが、大きく分けると、以下の2つがあります。

①突発性蕁麻疹
疲労やストレス、感染症などによって突発的に発症する蕁麻疹のことをいいます。発症から1カ月以内の症例を「急性蕁麻疹」、発症から1カ月以上経過したものを「慢性蕁麻疹」といいます。

②刺激誘発型蕁麻疹
特定の刺激が原因となって発症する蕁麻疹のことをいいます。刺激となるものには、寒い外気や温風、日光、アレルギーの原因となる抗原(食品、金属、薬など)といったものが考えられています。

蕁麻疹を引き起こしている原因が判明すれば、その原因に応じた治療が行われますが、判明するまでは薬物治療によって蕁麻疹の発症を抑えることになります。

●便秘が蕁麻疹の原因になる可能性も
蕁麻疹を引き起こす原因にはさまざまなものがありますが、その1つに、便秘があると考えられています。というのも、便秘が長引くと、腸内に蓄積された便が腐敗し、毒素が生み出されます。発生した毒素が腸壁から再吸収されると、体はそれを異物と判断し、その結果、蕁麻疹が引き起こされることがあるようです。便秘による蕁麻疹では、発症する部位もさまざまで、部分的に現れることもあれば、全身に広がるケースもあります。
蕁麻疹によるかゆみの症状は、ときに日常生活に支障をきたすほどつらいものです。蕁麻疹を誘発しないためにも、原因の1つである便秘の予防をしっかりと行いましょう。

腸を良好な状態に整えて、便秘をすっきり改善しよう

蕁麻疹の原因の1つとも考えられている便秘。そもそも排便ペースには個人差がありますが、慢性便秘症診療ガイドラインでは、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。便秘の原因はさまざまですが、その多くは、腸を整えることで解消されると考えられており、そのためには、食生活の見直しと体に適度な刺激を与えることが大切です。それぞれのポイントを紹介しますので、実践してみましょう。

●食生活の見直し
・食物繊維を摂取する
排出しやすい便を作るためには、食物繊維をしっかり摂取することが大切です。食物繊維には、水に溶けやすい水溶性と、水に溶けにくい不溶性の2種類があり、水溶性食物繊維は整腸効果のある善玉菌を増やし、不溶性食物繊維は便に水分を溜め込み柔らかくする働きがあります。それぞれ果たす役割が異なるため、どちらもバランスよく摂取するのがポイントです。水溶性食物繊維は野菜や果物、海藻類に、不溶性食物繊維は豆類にそれぞれ多く含まれています。

・水分不足を解消する
飲食を通して摂取する水分量が不足すると、便に含まれる水分量も減ります。水分量の少ない便は硬くて排出しづらいため、便秘を引き起こしてしまうと考えられています。スムーズに排出できる便を作れるよう、水分をしっかり摂取しましょう。ただし、一度に大量の水分を摂取しても、尿となって排出されてしまうので、適量を複数回に分けて、こまめに摂取するようにしましょう。

・食事の時間を規則正しく整える
1日3食を決まった時間に取ることで、腸内運動のリズムも整い、便を排出するぜんどう運動が活性化されます。

・腸内環境を整える
食べ物を取るスムーズな排便を得るためには、腸内環境を善玉菌が多い状態に整えることが大切です。善玉菌を増やすには、善玉菌のエサとなる乳酸菌を摂取するのが効果的。乳酸菌を豊富に含む、ヨーグルトやチーズなどの乳製品をはじめ、納豆やみそ、キムチといった発酵食品を積極的に食べましょう。

●体に刺激を与える
・適度に運動する
運動不足になると腹筋が衰えますが、腹筋は便を押し出す際に最も関わりのある筋肉です。腹筋が弱くなると便を押し出す力も不足し、そのうえ、腸のぜんどう運動も弱まってしまうと考えられています。散歩や体操など、負荷の軽い運動でも腹筋は鍛えられるため、毎日継続して行いましょう。

・お腹をマッサージ
マッサージによって腸を刺激することで、排便を促す効果が期待できます。おへそを起点に、大きく「の」の字を書くように、お腹全体をゆっくりマッサージしましょう。入浴後の血行がよい時や、就寝前のリラックスした状態で行うのがオススメです。

まとめ

皮膚疾患である蕁麻疹と、腸内で起こる便秘は一見関わりがないように思われますが、実は、便秘によって腸内環境が悪化することで、蕁麻疹が引き起こされるケースもあるようです。蕁麻疹は発症すると数時間続き、その間、強いかゆみに悩まされる、つらい疾患です。数ある蕁麻疹の原因をすべて取り除くことは難しいですが、その内の1つである便秘を解消し、蕁麻疹を引き起こすリスクを軽減しましょう。


木村医師よりコメント
疲労やストレスなどは、蕁麻疹の症状のきっかけになるといわれています。便秘を引き起こすような生活習慣の乱れやストレスが、蕁麻疹の引き金になってしまったり、便秘による腸内環境の悪化がさらに症状を悪化させたりするかもしれません。
何らかのアレルギーから、蕁麻疹にあわせて便秘などの便通異常を引き起こすこともあります。便秘が蕁麻疹の原因になることは多くはないかもしれませんが、便秘を改善するための生活習慣は蕁麻疹の改善にもつながるでしょう。
監修者

医師・木村眞樹子
都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。