VOL.33 【医師監修】「甘酒」で便秘解消! 甘酒に含まれる成分や特徴、オススメのレシピを紹介
“飲む点滴”と呼ばれるほど栄養豊富で、さまざまな健康効果が期待される「甘酒」。近年の研究では、便通を整えてくれる成分が含まれていることも分かっているようです。甘酒を一杯飲むだけで健康を促進できるとあっては、試さないわけにはいかないですよね。そこで今回は、便秘の解消にも有効な「甘酒」について解説します。
美容と健康を促進する、「甘酒」の効果
古くから日本人に親しまれている甘酒。ほんのりとした甘さ、ふくよかな香りが魅力的な飲み物ですが、近年、その味わいに加えて、豊富に含まれる栄養素にも注目が集まっています。甘酒を飲むことで、どのような効果が得られるのでしょうか。その効果を紹介します。
●美肌効果
甘酒には肌の新陳代謝やコラーゲンの生成を促すビタミンB群が豊富です。また、しみやそばかすの原因物質・メラニンの生成を抑制するコウジ酸や、アンチエイジング効果のある抗酸化物質なども含まれています。
●疲労回復
甘酒に含まれる麹菌は、栄養の消化吸収を助ける働きがあり、摂取した栄養を効率よくエネルギーに変換してくれます。そのため、疲労を感じた時に甘酒を摂取すると、効率的にエネルギーの補給ができ、回復が促されると考えられています。麹菌と同様にエネルギー代謝を促す栄養素である、ビタミンB群、ミネラル、アミノ酸も豊富です。また、エネルギー源となるブドウ糖も含まれています。
●肥満予防
ブドウ糖が血糖値を上昇させるため、甘酒を一杯飲むだけで満腹感が得られます。間食替わりに飲むことで食べ過ぎを防いでくれるでしょう。また、甘酒には体が必要とする栄養素が豊富に含まれているので、栄養の偏りを解消することもできます。ダイエットのために食事制限をする場合、甘酒をうまく取り入れることで、健康的にスタイルアップができそうです。
「甘酒」は便秘の解消にも効果的
甘酒は美肌、疲労回復、ダイエットに効果を発揮する、優れた飲み物です。それに加え、近年の研究では、便秘の解消にも有効であることが分かってきました。どのように便秘を解消してくれるのか、作用する成分とその働きについて解説します。
●善玉菌を増やすグルコシルセラミド
グルコシルセラミドとは、こんにゃくやみそなどにも含まれている植物性セラミドのことです。近年の研究でこの成分には、腸内にある善玉菌の一種“ブラウティア・コッコイデス菌”を増やす効果があることが分かりました。ブラウティア・コッコイデス菌は腸の炎症を抑える作用があるため、これが増えることで腸の働きがよくなり、スムーズな排便が得られるようになると考えられています
●ビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖
オリゴ糖は、乳酸菌の一種・ビフィズス菌のエサとなり、その数を増やしてくれる効果が期待できます。ビフィズス菌は腸のぜん動運動を活発にし、便通を促進してくれると考えられています。さらに腸内に溜まった便の腐敗も抑制してくれるので、下痢やお腹の張りなども解消してくれるといわれています。また、善玉菌であるビフィズス菌が増えることで腸内環境が整い、食中毒や腸炎の発症リスクを下げてくれる効果も期待できます。
●食物繊維と似た働きをするレジスタントプロテイン
レジスタントプロテインとは、食物繊維に似た働きをする、難消化性タンパク質のことです。胃腸で消化されにくいため、ゆっくり腸内を移動しながら余分な脂質やコレステロールなどを吸着し、体外へ排出してくれます。また、食物繊維と同様、便を柔らかくする働きもあるため、排便も促してくれます。腸内の老廃物を効果的に取り除いてくれるため、腸内環境を整える効果が期待できます
甘酒には上記の成分のほかにも、注目すべき点があります。便秘を引き起こす原因の一つには、“腸の冷え”があります。腸は冷えると働きが低下し、排便がスムーズに行われなくなってしまいます。こうした腸の冷えは、寒い冬、気温の低下が影響するのはもちろん、暑い夏でも、冷たい飲み物やアイスクリームばかりを口にしていると引き起こされます。
そこで腸の冷えをとり、便秘を解消するべく、温かい飲み物を飲むことが推奨されるのですが、甘酒はこの時にも有効なのです。というのも、普段よく口にするコーヒーや紅茶、緑茶などには、利尿作用のあるカフェインが含まれているため、用を足すごとに体温が奪われ、腸をさらに冷やしてしまう可能性があるのです。しかし、甘酒にはカフェインが含まれていないばかりか、先に紹介した腸の働きを整えてくれる栄養素も豊富。そういったことからも、便秘解消に最適の飲み物といえるでしょう。
甘酒には「米麹甘酒」と「酒粕甘酒」の2種類がある! 便秘解消にオススメなのは?
ひと口に甘酒といっても、製法によって種類が分類されているようです。大きく分けると「米麹甘酒」と「酒粕甘酒」の2種類があるのですが、それぞれ、どのような特徴があるのでしょうか。
●米麹甘酒
蒸した米に麹菌を加えた“米麹”を発酵させて作る甘酒です。ブドウ糖やオリゴ糖が豊富に含まれているので、砂糖を加えなくても、ほんのりとした自然な甘みがあります。アルコールを含まないため、子どもや妊婦、お酒が苦手な人にオススメです。一般的に白米と麹で作られますが、米や麹の品種によって、さまざまな種類があります。
- ・紅麹甘酒…健康促進効果が高い紅麹を使ったもの。血行改善や血圧調整などの効果が期待されます。
- ・黒麹甘酒…健泡盛作りに使われる黒麹を使っており、ほんのりとした甘さと、すっきりとした後口が特徴的。クエン酸を豊富に含むため、疲労回復に効果が期待できます。
- ・玄米甘酒…玄米で作るため、玄米特有の香ばしい風味が特徴的。白米で作る甘酒に比べて、食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養が豊富です。
- ・古代米甘酒…黒米、赤米、緑米など、稲の原種の特徴を受け継いだ米を使って作ったもの。甘さは控えめですが、栄養価が高く、健康によいとされています。
●酒粕甘酒
日本酒を作った後に残る醪(もろみ)=酒粕を使って作ります。酒粕にも麹が含まれていますが、製造過程で発酵されることにより、たんぱく質や葉酸、ビタミンB群、食物繊維などの栄養素が米麹甘酒よりも豊富です。さらに、米麹甘酒にはない、レジスタントプロテインも醸成されます。栄養補給には最適ですが、アルコールを含むため、子どもや妊婦は飲めません。また、酒粕自体に甘みがほとんどないため、甘酒を作る際は砂糖を加えて作るのが一般的です。
米麹甘酒と酒粕甘酒を比べてみると、酒粕甘酒の方が、より栄養が豊富に含まれているといえます。先に紹介した便秘の解消に効果のある栄養素においても、「グルコシルセラミド」「オリゴ糖」の2つは、どちらの甘酒にも含まれていますが、「レジスタントプロテイン」は酒粕甘酒にしか含まれていません。しかし、酒粕甘酒にはアルコールが含まれているため、飲める人やタイミングなどが制限されてしまいます。
このことから、アルコールが飲める場合は、酒粕甘酒を選び、アルコールが飲めない子どもや妊婦などは、米麹甘酒を選ぶとよいといえるでしょう。
便秘解消にオススメ! 甘酒の基本レシピ
甘酒は市販品も豊富にありますが、できたてのふくよかな味わいは格別です。酒粕甘酒は自宅で簡単に作れるので、ぜひ手作りにチャレンジしてみましょう。
手軽に作れるベーシックな酒粕甘酒と、ひと手間加えたアレンジレシピを紹介します。
●酒粕甘酒のレシピ
<材料>(1杯分)
・酒粕 50g
・湯 300ml
・砂糖 適量
<作り方>
カップに酒粕、砂糖を入れ、お湯を注いでかき混ぜる。
<ポイント>
便通改善には、一日一杯の甘酒を継続して飲むことが大切です。注ぐお湯が熱過ぎると、壊れる栄養素もあるため、お湯の温度は40~60℃程度にしましょう。好みで、きな粉やすりゴマなどを加えるのもオススメです。
●アレンジレシピ①甘酒とヨーグルトのスムージー
<材料>(1杯分)
・酒粕甘酒 50ml
・プレーンヨーグルト 150ml
・バナナ 1本
<作り方>
- ①バナナの皮をむき、1㎝幅に切る。
- ②酒粕、プレーンヨーグルト、バナナをミキサーにかける。
<オススメのポイント>
乳酸菌が豊富なヨーグルトと一緒に摂取できるので、整腸効果がアップします。
●アレンジレシピ②甘酒のドレッシング
<材料>(2人分)
・酒粕甘酒 30ml
・すりおろしたニンジン 30g
・オリーブオイル 大さじ4
・果実酢 大さじ1
・塩・コショウ 適量
<作り方>
- ①塩・コショウ以外の材料をボールに入れてよく混ぜる。
- ②塩・コショウで味を調える。
<オススメのポイント>
さっぱりとした味わいで、温野菜、パスタや魚料理など、幅広い料理に合います。多めに作って冷蔵保存する場合、2、3日で食べきりましょう。
まとめ
酒には便秘解消に効果を発揮する、さまざまな栄養素が含まれています。スーパーやコンビニでも購入でき、気が向いた時にさっと飲めるので、継続もしやすいです。ただし、甘酒特有のまろやかな味わいを堪能したいならば、手作りするのがオススメです。好みの味に調整したり、ひと手間加えて変化をつけたりして、楽しみながら摂取してくださいね。
- 木村医師よりコメント
- 甘酒は身体にいいといわれても、なかなか馴染みがない……と思う方もいるのではないでしょうか。甘酒は、飲むだけでなくドレッシングに混ぜたり、料理やお菓子作りの時に砂糖などの甘味料の代わりに使ったりすることもできます。甘酒にもさまざまな種類、味や食感がありますので自身で好みのものを探してみてください。好みのものを見つけられれば、日々の生活の中にも、取り入れやすくなるでしょう。
- 監修者
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医師・木村眞樹子
都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。