VOL.165 【医師監修】頭痛・便秘が続く原因は?辛い症状への対処法も紹介
通常、便秘の症状として頭痛が現れることはありません。しかし、自律神経が乱れている場合など、体調によっては頭痛と便秘の症状が併発するケースもあります。
とくに、季節の変わり目やストレスが多い時期は、自律神経の乱れが発生しやすいため注意が必要です。
今回は、頭痛と便秘が併発する原因と、辛い症状への対処法を詳しく紹介します。自律神経の乱れの改善方法も解説するため、体の不調に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
頭痛と便秘が続くときに考えられる原因
「便通異常症診療ガイドライン2023」によると、便秘とは、本来出すべき便が大腸に溜まり、硬い便の状態や排便回数の減少、便が出にくく感じる、便が残る感じや直腸肛門が詰まる感覚がともなう、排便が難しく感じる状態を定義しています。
そのため、便秘の症状に通常頭痛は含まれません。
頭痛と便秘が併発した状態が続く場合、原因として自律神経の乱れが考えられます。自律神経とは、体温調節や血液循環など、生きるために不可欠な体の働きをコントロールする神経です。
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、季節の変わり目やストレスが多い時期は、自律神経のバランスが崩れて身体・精神に不調が出やすい傾向があります。
自律神経の乱れは、血液検査や画像検査には異常があらわれないため、受診しても「異常なし」と診断されるケースが多いです。
ただし、激しい腹痛・嘔気・嘔吐などの症状と頭痛が併発する際は、腹部片頭痛や周期性嘔吐症、食中毒など別の原因が隠れている可能性もあるため、早めに医療機関へ受診しましょう。
自律神経が乱れているときに見られる症状
自律神経が乱れている場合、腹痛や頭痛以外にも、以下のような症状が見られることがあります。
- ・疲労・倦怠感
- ・偏頭痛
- ・ほてり
- ・発汗
- ・めまい
- ・耳鳴り
- ・残尿感・頻尿
- ・動悸・息切れ
- ・肩こり
- ・手足のしびれ
- ・手足の冷え
- ・不安・イライラ
- ・体重変動
ただし、症状の現れ方は人によって異なり、当てはまる項目が複数あっても、別の原因による可能性もあります。そのため、必ず自律神経が乱れている(自律神経失調症)と診断されるわけではありません。
辛い症状が続く場合は、症状に合った診療科または心療内科・精神科などの受診を検討しましょう。
頭痛と便秘が辛いときの対処法
頭痛と便秘が辛いときに簡単な対処法を試すだけで、症状が改善する場合があります。以下で、頭痛と便秘が辛いときの対処法を詳しく紹介します。
市販の解熱鎮痛剤や便秘薬を試す
市販の解熱鎮痛剤や便秘薬を服用することで、頭痛・便秘が改善する可能性があります。
ただし、市販薬を使用する場合、事前にかかりつけ医や購入先の薬剤師に相談することが推奨されます。とくに症状がひどいときは、まず医療機関への受診を検討しましょう。
頭痛のタイプに合わせて頭を冷やす・温める
頭痛のタイプに合わせて、頭を冷やすまたは温める方法も有効です。代表的な頭痛のタイプには片頭痛と緊張型頭痛があります。
頭がズキズキと脈打つように痛む場合は、片頭痛の可能性が高いです。片頭痛は血管の拡張が原因と考えられており、冷却シートや氷枕などで頭を冷やすことで、血管が収縮して痛みが和らぐことがあります。
一方、頭を締めつけられるような痛みや圧迫感がある場合は、緊張型頭痛の可能性が高いです。緊張型頭痛は首や肩の凝りが原因と考えられており、首や肩を温めて血行を良くすることで、痛みを軽減できることがあります。
頭痛に効くツボを押す
頭痛改善効果のあるツボを押すことで、症状を改善できることもあります。頭痛改善に効果があるといわれるツボの例は、以下のとおりです。
【片頭痛】
- ・合谷(ごうこく):親指と人差し指の骨が交わる場所から、指先に向けて人差し指側にやや進んだところ
- ・足臨泣(あしりんきゅう):足の甲の小指と薬指のつけ根から、足首側に向けて2〜3cm進んだところ
- ・崑崙(こんろん):くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ
【緊張型頭痛】
- ・太陽(たいよう):目尻と眉尻の中間から、顔の外側に向けて約2cm進んだところ
- ・風池(ふうち):耳の後ろの骨と後頭部のくぼみの中間
- ・天柱(てんちゅう):首の後ろ側にある2本の太い筋肉の外側のくぼみ
- ・肩井(けんせい):首のつけ根から肩先を結ぶ線の中間
緊張型頭痛の場合は、ツボを押すだけでなく、頭部をマッサージして筋肉をほぐすのもおすすめです。
頭痛を誘発する食品を避け、バランスの良い食事を摂る
頭痛を誘発する食品の摂取はできるだけ避けましょう。頭痛を誘発する食品の例は、以下のとおりです。
- ・アルコール
- ・チョコレート
- ・チーズ
- ・柑橘類
- ・グルタミン酸ナトリウム(うま味調味料)を含む食品
- ・サラミ、ベーコンなど硝酸塩を含む食品
また、便秘を解消するには、3食バランスの良い食事を摂ることも大切です。便秘に効くといわれている食べ物については、以下もあわせてご覧ください。
【医師監修】便秘に効くといわれている食べ物を紹介!食生活を改善しよう
こまめに水分を摂る
便秘が気になるときは、水分を多めに摂取することで、便が柔らかくなり排泄しやすくなります。日頃から水分の摂取量が少ない方は、1日2リットルを目安として、こまめに水分を摂る習慣をつけてみてください。
自律神経の乱れを改善する方法
以下では、自律神経の乱れの改善方法を詳しく解説します。
ゆっくりと深呼吸する
ストレスや緊張で交感神経が活発になっているときは、ゆっくりと深呼吸して副交感神経の働きを高めることで、気分が落ち着きやすくなります。
深呼吸をするときは、4秒かけて鼻から息を吸い、8秒かけて口から吐き出すリズムを意識してみてください。
決まったリズムで生活する
平日・休日に関係なく、同じような時間に起床・食事・就寝する習慣をつけましょう。決まった生活リズムを保つことで、自律神経の乱れを防ぎやすくなります。
また、起床後に朝日を浴びる、就寝前に湯船に浸かるなどの習慣を取り入れるのもおすすめです。
カルシウムやビタミンB1、ビタミンCを摂取する
カルシウムやビタミンB1、ビタミンCを意識的に摂取することも大切です。カルシウムをはじめとするミネラルには筋肉・神経内の生理機能を調整する役割があり、ビタミンには神経を落ち着かせる作用があります。
カルシウムやビタミンB1、ビタミンCを豊富に含む食品の例は、以下のとおりです。
【カルシウム】
- ・牛乳
- ・小松菜
- ・ヨーグルト
【ビタミンB1】
- ・白米
- ・玄米
- ・発芽米
- ・豚肉
- ・ほうれん草
【ビタミンC】
- ・いちご
- ・レモン
- ・キウイ
ゆるやかな運動をする
日常で運動をする機会が少ない方は、1日30分〜1時間程度のゆるやかな運動習慣を取り入れてみてください。散歩・ヨガ・ストレッチなど、激しすぎない運動をすることで、全身の血流が良くなり、心身の緊張がほぐれます。
ただし、翌日に疲労が残るほどの激しい運動をすると、かえって自律神経のバランスが崩れることがあるため注意が必要です。
便秘の症状が続く場合は酸化マグネシウム便秘薬を試してみよう
辛い便秘症状が続く場合は、酸化マグネシウム便秘薬を試すのも良いでしょう。酸化マグネシウム便秘薬は便を柔らかくさせ、排便を促す効果が期待でき、便秘が改善される可能性があります。
また、酸化マグネシウム便秘薬はクセになりにくく、お腹の痛みも出にくいことが特徴です。
ただし、解熱鎮痛剤やほかの薬を服用している場合は、事前に医師または薬剤師に相談してください。
頭痛・便秘の併発時は自律神経の乱れを疑おう
頭痛と便秘が併発した状態が続く場合、原因として自律神経の乱れが考えられます。辛い症状が続くときは、市販薬の服用や頭を冷やす・温める、頭痛を誘発する食品の摂取を避けるといった方法で対策を行いましょう。
便秘がひどいときには、酸化マグネシウム便秘薬を服用する方法もあります。ただし、症状が長引く場合は、生活リズムを整えて、根本原因である自律神経の乱れを治すことも大切です。
- 高山医師よりコメント
- 便秘と頭痛は直接的な関係がありません。ただ、同時に起こっている際には、ストレスや寝不足など自律神経に影響して症状が出ている可能性があります。いずれにおいても重大な病気が隠れていることもあります。症状が続く場合などにはぜひご相談ください。
- 監修者
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医師:高山 哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
平成14年慶應義塾大学卒業、慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長。