知って得する! 腸活コラム 知って得する! 腸活コラム

VOL.164 【医師監修】便秘で腰痛になる可能性はある?関係性や対処法、改善方法を紹介

腰痛に悩んでいる方のなかには、頻度は多くないものの、便秘が原因で腰痛を発症する方もいます。便秘の状態が続いてしまうと日常生活や体にさまざまな支障をきたしたりする場合があり、その1つに腰痛の症状が出ることがあります。

今回は、便秘と腰痛の関係や便秘で腰痛があるときの対処法、根本となる便秘の解消法を紹介します。便秘と腰痛に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

便秘で腰痛になる可能性はある?

結論、便秘で腰痛になる可能性はあります。腰痛は原因不明で発症することが多いのですが、腰まわりの筋肉が衰えるほかに、背骨が圧迫されたり神経が刺激されたりすることが原因で腰痛の症状が出る場合があります。

便秘になると大腸内に便が滞りやすくなります。滞った便によって腸内環境が悪玉菌優位の状態になり、食物(タンパク質や脂質)の分解や発酵が進んで、たくさんのガスが産生されます。

腸にガスが溜まることで腸が拡張するため、それが背骨や腰などの組織、さらには神経を圧迫して腰まわりに痛みが生じる可能性があります。

便秘になるとあらわれやすい症状

便秘になると自覚しやすい症状として、以下があげられます。

自覚症状    原因
腰痛 便やガスが溜まると腸管が拡張して、まわりの組織や神経を圧迫する
腹部膨満感 腸内細菌によってガスが発生するが、便通が滞っていると
ガスの排泄がうまくいかず、ガス溜まりが腹部の膨満感・不快感をもたらす
腹痛 便の送達が滞って腸に溜まり、腸管が拡張してお腹が痛くなる
食欲不振 腸の働きが鈍るため、食欲が低下する
肌トラブル 便秘によって有害なガスや毒素が増え、血液の流れを悪くして新陳代謝が低下する

上記のように、便秘は体にさまざまな支障をきたします。

なかには、便秘とは一見関係のないと思われるものの、便秘が間接的な原因で現れる症状もあります。

便秘が原因となることに気づかないと、症状の改善が難しくなる場合があるため、注意しておきましょう。

便秘で腰痛の症状があるときの対処法

便秘が原因で腰痛の症状が出ているときの対処法として、軽い運動やストレッチをしたり、ストレスを解消したりする方法があります。

それぞれの対処法については、以下で詳しく解説します。

軽い運動やストレッチをする

便秘による腰痛には、軽い運動やストレッチが有効な場合があります。適度な運動によって腸の動きが活発になるのを実感できるでしょう。

ランニング・ウォーキング・サイクリングなどの有酸素運動や、腹筋運動がおすすめです。

ただし、激しい腹筋運動は腰痛を悪化させてしまうおそれがあるので、無理のない強度で行いましょう。

また、ストレッチとして腸内のガスを排泄させやすいストレッチ、いわゆる「ガス抜きのストレッチ」と呼ばれる方法があります。やり方は以下のとおりです。

  • 1.仰向けに寝て、片方の膝を両手で抱え、お腹に近づけるようにする(10秒)
  • 2.反対の膝でも同じように行う(10秒)
  • 3.両膝を抱えて同じように行う(10秒)

こちらも、腰まわりに無理のない範囲で行いましょう。

ストレスを解消する

便秘による腰痛の解消法の1つにストレス解消があります。強いストレスを受けると腸の運動が低下し、便秘になりやすいと考えられています。

また、ストレスは筋肉の緊張を引き起こすため、腰まわりの筋肉が凝り固まって腰痛そのものも悪化しやすくなります。

そのため、ストレスを感じたときは、体を動かしたり自身の気持ちを書き出したり、腹式呼吸をしたり、歌ったり笑ったりしてストレスを解消しましょう。

便秘を改善する方法

そもそも、根本的に便秘を改善することが大切です。例えば、以下の改善方法があります。

  • ・腸内環境を整える
  • ・生活習慣を見直す
  • ・市販薬(酸化マグネシウム便秘薬)を試してみる

以下で詳しく紹介します。

腸内環境を整える

便秘を改善するには、腸内環境を整えると良いでしょう。そのためには、1日3食規則正しく摂ることが大切です。そして、栄養素として食物繊維や発酵食品を摂取するのをおすすめします。

食物繊維の摂取目標量は、18~64歳の男性で21g以上/1日、18~64歳の女性で18g以上/1日です。食物繊維の主な種類には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。

水溶性食物繊維というのは、腸内の善玉菌を増やし、便をやわらかくする効果が期待でき、例として果物・繊維のやわらかい野菜・海藻類に多く含まれています。

一方で、不溶性食物繊維というのは、便のかさを増やしてくれるため、腸管を刺激して腸の蠕動運動を活発化させ、便通を整える効果が期待されます。

例えば、根菜類・きのこ類・繊維の硬い野菜・まめ類に多く含まれています。

腸内環境を整えるという意味では、ビフィズス菌や乳酸菌など、生きた善玉菌を継続的に摂取するのもおすすめです。ヨーグルト・乳酸菌飲料、納豆・漬物などの発酵食品を積極的に取り入れてみましょう。

食物繊維が豊富な食べ物については、以下もあわせてご覧ください。

【医師監修】便秘に効く野菜は?解消のためにおすすめの食物繊維が豊富な食べ物を紹介

生活習慣を見直す

便秘を改善するには生活習慣(運動、飲食、トイレ習慣)の見直しも必要です。運動不足や不規則な生活、睡眠不足が続くと自律神経が乱れ気味になり、腸の動きが鈍くなって便秘に陥りやすいと考えられています。

そのため、規則正しい生活を心がけたり、適度な運動習慣を取り入れたりしましょう。

例えば、朝起きたらコップ1杯の水分をとる、そして朝食をとることも腸を活発に動かすことにつながります。

また、朝食後には決まった時間にトイレに行き、便座に座って排便を試みることも、排便習慣をつけるために大切です。朝は忙しいからといって便意を我慢すると、便秘が悪化しやすくなるため注意しましょう。

酸化マグネシウム便秘薬を試してみる

腸内環境の改善や生活習慣の見直しによって便秘を改善しようとしても、効果が現れてくるまでに時間がかかります。

そのため、並行して便秘の症状を改善するためにお薬を使うこともあります。お薬を使う場合は、まずは酸化マグネシウム便秘薬を試してみると良いでしょう。

酸化マグネシウム便秘薬は、浸透圧差を利用して腸管内に水分を引き寄せ、便をやわらかくする作用があります。

また、酸化マグネシウム便秘薬はクセになりにくいのも使いやすさの1つです。

ただし、酸化マグネシウム便秘薬を初めて服用する場合や、ほかに飲んでいる薬がある場合、持病がある場合などは、医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。

腰痛を解消するためにも便秘の予防・改善に取り組もう

便秘と腰痛は一見すると関係がないように思えますが、便秘が原因で腰痛が起こることもあります。

腸に溜まった便やガスが腸を拡張させ、背骨や腰の組織や神経を圧迫することで腰痛が起きる可能性があります。

また、便秘は腰痛だけでなく、腹部膨満感や食欲不振、肌トラブルなどにも関係します。

便秘による腰痛を改善したい場合は、無理のない範囲で運動やストレッチ、ストレスの解消に取り組んでみましょう。

また、根本から便秘を解消したい方は、腸内環境の改善や生活習慣を見直しもおすすめです。

それでも便秘の症状がなかなか改善されない場合は、酸化マグネシウム便秘薬を試してみると良いでしょう。

ただし、酸化マグネシウム便秘薬を初めて服用する場合や、ほかに飲んでいる薬がある場合、持病がある場合などは、医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。

高山医師よりコメント
腰痛が生じるほど便秘に悩む方は稀ですが、放置して良いことはありません。便秘は早めの対処が生活する上で望ましいでしょう。強い刺激を与える便秘薬は依存してしまうことがあるため、酸化マグネシウムなど依存性の少ないもので上手にコントロールしていきましょう。
監修者

医師:高山 哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
平成14年慶應義塾大学卒業、慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長。