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VOL.163 【医師監修】便秘とイレウス(腸閉塞)の違いは?放置するリスクや予防方法も解説

ひどい便秘が続くと、腹痛やお腹の張りなどさまざまな症状が出て、イレウス(腸閉塞)ではないかと心配になることがあるでしょう。

イレウスを放置すると腸の壊死や死に至るリスクがあるため、疑わしい症状がある場合は早めに医療機関を受診することが大切です。

今回は、便秘の主な症状やイレウスとの違い、イレウスを早期発見するポイント、放置した際のリスクを詳しく解説します。日常でできるイレウスの予防方法も紹介するため、便秘がひどくイレウスの不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

便秘の主な症状とは?

便秘とは、本来体外に排出すべき便を十分かつ快適に排出できない状態です。便秘の際は、以下のような症状が見られます。

  • ・排便回数の減少
  • ・排便困難感
  • ・残便感
  • ・腹部膨満感
  • ・腹痛
  • ・腹鳴

定期的に排便があっても、強くいきまないと出ない・便が硬くて出にくい・出してもスッキリしないといった症状がある方は、便秘の可能性があるため注意してください。

便秘とイレウス(腸閉塞)の違い

イレウス(腸閉塞)とは、さまざまな要因により食べたものが腸を通過できなくなり、詰まってしまう状態です。イレウスには主に機械的腸閉塞・機能的腸閉塞の2種類があり、2種類のイレウスは症状や原因によりさらに細かく分類されます。

イレウスを発症すると、以下のような症状が現れます。

  • ・腹痛
  • ・嘔気
  • ・嘔吐
  • ・排ガス
  • ・排便の停止

症状は便秘と似ていますが、イレウスが進行すると腹膜炎やショック症状などの重篤な状態に陥ることもあるため要注意です。

また、イレウスを発症して嘔吐した場合、最初は吐瀉物として胃液や胆汁が出ますが、進行すると便のような色・臭気をともなう腸の内容物に変わることがあります。

イレウスの診断には検査が必要で、個人で便秘かイレウスかを判断することは困難です。イレウスが疑われる症状が出た場合は、早めに医療機関を受診してください。

イレウス(腸閉塞)を早期発見するためのポイント

イレウスを早期発見するには、前兆や初期症状を見逃さないことが大切です。イレウスの初期症状には、以下のようなものがあります。

  • ・長引く便秘
  • ・嘔気
  • ・嘔吐
  • ・腹部の張り
  • ・排便や排ガスの減少
  • ・腹部膨満感

イレウスは手術後の癒着が原因になることが多いため、腸や腸に近い臓器、腹腔の手術や子宮、卵巣、前立腺などの骨盤腔の手術をした経験がある方は、とくに注意が必要です。

また、抗がん剤や免疫抑制剤など、特定の薬剤の副作用としてイレウスが起きる場合もあります。

イレウス(腸閉塞)を放置するリスク

イレウスを放置すると、つらい症状が続くだけでなく、場合によっては腸の壊死や死に至るケースもあります。以下の見出しでは、イレウスを放置するリスクを詳しく見ていきましょう。

嘔吐や腹痛などの症状が続く

イレウスを治療せずに放置すると、嘔吐や強い腹痛、発熱、頻脈などの症状が続く場合が多いです。イレウスを放置しても、自然に治ることはほとんどありません。

イレウスの影響で血流障害などが起きていないときは、絶食や輸液、イレウス管と呼ばれるチューブで腸の内容物を吸い取るといった処置で改善することが多いため、早めに医療機関で検査・治療を受けましょう。

重篤化すると腸の壊死や死に至ることがある

イレウスの分類の1つである絞扼性イレウスを発症して血流障害が起きた場合、腸管出血や壊死、腹膜炎、敗血性ショックなどの症状が進行し、意識障害や死に至るリスクがあります。

血流障害をともなうイレウスを発症した際は、6〜8時間以内に治療が必要といわれています。緊急手術が必要なケースも多いため、疑わしい症状があるときは、飲食をせず迅速に医療機関を受診してください。

イレウス(腸閉塞)を予防する方法

最後に、イレウスの発症を予防するために自身でできる対策方法を紹介します。

排便習慣を付け、便秘を予防する

普段から便秘になりやすい方は、毎日同じ時間にトイレに行くなど、排便習慣を整えて便秘を予防することが大切です。

一般的に、イレウスを発症する原因として多いのは腹部の手術後の癒着です。しかし、慢性的な便秘がイレウスの原因となることもあります。

定期的に大腸がん検診を受ける

検診を毎年受けて大腸がんを早期発見することも、イレウスの予防に効果的です。とくに高齢者の方は、大腸がんが原因でイレウスを発症することがあります。

直腸がんがある場合、便が細くなるなどの兆候が出ることがあるため、普段から排便時に便の変化や異変がないかチェックするのも良いでしょう。

食生活を見直す

腹部の手術をした経験がある方や便秘になりやすい方は、食生活にも注意が必要です。具体的に、レンコン・ゴボウ・タケノコなどの煮ても柔らかくならないもの、キノコ・海藻などの消化に悪いものは、1度に多く摂りすぎないよう意識してください。

暴飲暴食を避け、ゆっくりよく噛んで食べることも大切です。ヨーグルトや乳酸菌飲料を摂取して、腸内環境を整えるのも良いでしょう。

適度に運動する

便通を整えるためにも、日頃から無理のない範囲で運動を行ってください。適度な運動習慣は腸の動きが活発になり、スムーズに排便しやすくなります。

酸化マグネシウム便秘薬を服用する

頑固な便秘には、酸化マグネシウム便秘薬を試すのも1つの手です。酸化マグネシウム便秘薬には、腸管の水分を吸収して便を柔らかくし、腸の蠕動を促して排便しやすくする効果が期待できます。

酸化マグネシウム便秘薬は、続けて飲んでもクセになりにくいのが特徴です。

ただし、イレウスを発症していると副作用のリスクがあるため、疑わしい症状がある場合は酸化マグネシウム便秘薬を服用せず、医療機関を受診しましょう。

イレウス(腸閉塞)が疑われる場合は早めに医療機関を受診しよう

便秘と初期のイレウスでは似た症状が出ることがあり、自身で症状を見分けることは困難です。強い腹痛や嘔吐などの症状があり、イレウスが疑われる場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。

イレウスを放置すると、腹痛などのつらい症状が続くだけでなく、場合によっては腸の壊死や死に至ることもあるため注意しましょう。

イレウスを予防するには、排便習慣や食習慣を整え、便秘を改善することが大切です。ひどい便秘が続く場合は、酸化マグネシウム便秘薬を服用するのも良いでしょう。

ただし、イレウスの症状があり疑わしい場合は、先に医療機関を受診してください。

高山医師よりコメント
腹部の手術を受けられた方は、イレウスのリスクが高くなります。腹痛がある場合には我慢せず医療機関で診てもらいましょう。繊維質を摂ることがイレウスにはよくないため、注意が必要です。手術後の生活についても、主治医の指導をしっかりと受けるようにしましょう。
監修者

医師:高山 哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
平成14年慶應義塾大学卒業、慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会認定医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長。

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