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VOL.149 【医師監修】浣腸は毎日使っても大丈夫?適切な使用頻度と便秘の解消方法も紹介

慢性的な便秘に悩んでおり、浣腸を毎日使用したいと感じる方も多いのではないでしょうか。今回は、浣腸を毎日使用して良いのかについて詳しく解説します。

浣腸を毎日使用しなければならないと感じるほどのひどい便秘が続く場合には、生活習慣の改善や医師の治療により根本的に原因を取り除くことが大切です。

そのための便秘解消方法も紹介するので、頑固な便秘に困ったときの参考にしてください。

浣腸は毎日使っても大丈夫?適切な使用頻度を解説

一般的に浣腸といえば「グリセリン浣腸」を指します。グリセリン浣腸は、50%グリセリン液を肛門から注入し、直腸に直接刺激を与えて排泄を促す薬剤です。

直腸内に滞留した排泄困難な便を出したいときに使用するのが最も効果的です。

一方で、便が直腸内に十分に溜まっていない状態で浣腸しても、効果は限定的です。また、浣腸という行為は慎重に、かつ安全に行わなければなりません。なぜなら、浣腸のノズルの先端で直腸を傷つけるおそれがあるからです。

そのため、浣腸は毎日使うのではなく、1週間に2回程度(3~4日に1回程)に留めて使用するのが望ましいのです。

ただし、適切な頻度は症状によっても異なるため、浣腸剤を初めて使用する前には医療機関にまず相談するようにしましょう。

また、グリセリン浣腸を使用する際は、市販品の箱や袋に記載されている「使用上の注意」をよく読み、使い方や注意点を理解してから使用しましょう。

浣腸を毎日するとクセになる?

「グリセリン浣腸を使用すると“クセ”になるから、できれば使用したくない」と考えている方も多いのではないでしょうか。

この“クセ”というのは、肉体的、精神的な「依存」を意味します。グリセリン浣腸にその原因となる成分が含まれているか?というと、入っておりません。

グリセリン浣腸の主成分はグリセリン。そのほかにベンザルコニウム塩化物という添加物も使用されていますが、これらの成分が「依存」性を示すという科学的な根拠はありません。

そのため、グリセリン浣腸を適切な頻度で使用しても“クセ”になることはありません。

便秘は繰り返すことが多いです。直腸内に溜まった便はグリセリン浣腸を適切に使用すれば直ぐに排泄できるので、排便困難型の便秘を解消するためにグリセリン浣腸を適切な頻度で使用することは、むしろ良いことだといえます。

なお、毎日浣腸を使用しなければならないと感じるほどのひどい便秘が続く場合は、生活習慣の改善や食事など日常生活に注意しましょう。

また、「排泄困難型便秘」という肛門の力が無いことによる便秘もあるため、専門医を受診し適切な治療をしましょう。

浣腸を使う際の注意点

浣腸を使う際はいくつかの注意点がありますが、ここでは3点紹介します。

はじめて浣腸を使う方だけでなく、便秘になりがちで浣腸をよく使う方にも注意すべきことも紹介するので、覚えておきましょう。

体調に不安がある方、妊娠中の方はまず医師に相談する

体調や持病によっては浣腸を使用しないほうが良い場合、あるいは浣腸を使用するには医師や薬剤師の判断が必要な場合があります。

以下に当てはまる方は浣腸を使用する前に医師に必ず相談するようにしましょう。

 

  • ・心臓に病気がある方
  • ・肛門の周辺や腸管内に炎症や傷などを抱えている方
  • ・低栄養などで筋肉量が減り、身体機能が低下している方
  • ・大腸や肛門の手術を受けた直後の方
  • ・重篤の便秘の方
  • ・妊娠中あるいは妊娠している可能性のある方

浣腸には適切な体勢がある

立った状態で浣腸をしてはいけません。なぜなら余計な力が入りやすいためです。

肛門周辺の筋肉が収縮して浣腸のノズルが挿入しにくくなりますし、無理に挿入しようとすると直腸の粘膜を傷つけてしまうおそれがあります。

医療現場では医療者が便秘患者に浣腸するのが一般的で、患者は体の左側を下にして横たわり、軽くひざを曲げた体位です。

市販の浣腸液をご自身で注入する場合もあります。ご自身で浣腸する際はイチジク型のノズルの短い浣腸を使用しましょう。

洋式トイレで浣腸する場合は、便座に浅く腰掛けて前かがみになります。片手で浣腸ノズルを肛門からゆっくりと挿入しましょう。

挿入時に抵抗を感じたら無理に挿入を続けない

浣腸のノズルを挿入している際に抵抗を感じたら、挿入をいったんやめましょう。ノズルを少し引き戻し、角度を変えてゆっくり挿入し直してください。

浣腸というのは直腸に便が溜まっている状態で行うのですが、ノズルの先端が便に当たって抵抗を感じているのか、直腸壁に当たって抵抗を感じているのか、自己判断が難しいです。

便が滞留してパンパンに膨らんだ腸は、いわゆるゴム風船が膨らんでいる状態と同じようなものです。直腸壁は伸びて薄くなっており、ノズルが直腸壁を当たっただけでも傷ついたり、突き破ったりしやすい状態です。

そのため、ノズルの挿入は慎重に行いましょう。

浣腸以外にできる便秘解消法

浣腸を使用している方のなかには、便秘を繰り返してしまう方も少なくないでしょう。

できることなら便秘にならないように、普段から予防しておきましょう。

日常生活でも取り入れやすい便秘の解消法を以下に紹介します。全てを行う必要はありませんが、無理なくできることからはじめてみましょう。

便意を感じたらできるだけ早くトイレに行く

便意を感じたら、我慢せずにトイレに行く習慣をつけましょう。

便意を我慢するクセがついてしまうと、直腸の神経の感度が弱まることがあり、排泄すべき便が直腸に送達されても便意そのものを感じにくくなる可能性があります。

なお、便意を感じにくい方でも、朝食後には必ずトイレに行きましょう。決まった時間に排便を試みる習慣をつければ、規則正しい排便習慣がつきやすくなります。

栄養バランスの良い食事を心がける

便秘の改善には栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。

とくに食物繊維は便通改善のために摂取を推奨される栄養素です。水溶性食物繊維は海藻類や果物などに含まれ、便を柔らかくすることに加えて、腸内細菌のエサとなって腸を整える効果が期待できます。

また、不溶性食物繊維は豆類やイモ類などに多く含まれ、便のカサを増やして腸の動きを促す効果が期待できます。

ダイエットなどで排便回数が減少する便秘に悩んでいる方は、食事の一品に食物繊維を使った料理をプラスしてみるなど、食事の種類や量を見直してみましょう。

最も基本的なことですが、朝食は抜かず、1日3食をバランスよく食べることが大切です。

こまめに水分補給をする

1日2リットルを目安に、“こまめに”水分を摂取しましょう。体の水分量が不足する(=脱水状態になる)と、腸での水分の吸収が強く起こり、便に留まる水分が少なくなってしまいます。その結果、便が硬くなり排泄しにくくなります。

なお、多量の水分を一気に飲んでも、体に保持できない余剰な水分は尿として排泄されてしまいます。体の水分というのは発汗や呼吸などによって徐々に失われていくため、こまめに補給するのがポイントです。

適度な運動やマッサージをする

適度な運動をすると、腸のぜん動運動が活発になりやすく、便秘改善効果を実感できることがあります。

また、運動はストレス解消にもひと役買ってくれますので、自律神経が整いやすく、腸の働きも整ってくるでしょう。

運動が苦手な方は、軽いウォーキングを30分程度からはじめるのも良いです。

ほかにも、おへその下から時計回りに「の」の字を書くように腸をマッサージするのもおすすめです。

酸化マグネシウム便秘薬を使用する

酸化マグネシウム便秘薬は、腸管内に水分を引き寄せてくれる作用があり、硬い便を柔らかくしてくれる効果があります。酸化マグネシウムの効果が弱い方は、非刺激性の新規便秘薬もありますので専門医に相談しましょう。

なお、浣腸は即効性がありますが、酸化マグネシウムの効果は浣腸に比べてゆるやかです。

浣腸の適切な使用頻度は週2回程度!毎日使うほどひどい便秘は医療機関に相談しよう

グリセリン浣腸は直腸に溜まった便をすぐに排泄したいときに使うのが効果的です。ただし、浣腸は毎日使用するのではなく、週2回程度(3~4日に1回程度)の使用頻度に留めるようにしましょう。

浣腸を毎日使いたくなるほどひどい便秘の場合は、まず医療機関を受診してみましょう。

便秘の解消には浣腸以外の方法もあるので、できることから試してみてください。

白畑医師よりコメント
便秘に悩む方は日常生活改善・適切な食事や運動、投薬を心がけ『便秘の予防』に取り組みましょう。便秘の即効薬として浣腸は有効ですが、適切な使い方を熟知しながら浣腸のメリットとデメリットを考えた上で使用しましょう。浣腸の使用は多くても週2~3回で、頻回に浣腸が必要な方は、排泄困難型便秘や肛門・直腸の病気の可能性もあるため、医療機関を受診し専門医の受診をしてください。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。

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