VOL.146 【医師監修】お腹が張る原因とは?関連する病気と改善方法を紹介
お腹の張った経験がある方は多いかもしれません。お腹の不快感に強いストレスを感じ、不安になる方もいるのではないでしょうか?
お腹の張りが頻繁に起きたり続いたりする場合には、疾病が隠れている可能性もあるので注意が必要です。
そこで今回は、お腹の張りの主な原因・関連する疾病・お腹の張りの改善方法を解説します。お腹の不調を感じている方はぜひ参考にしてください。
お腹の張り(腹部膨満感)とはお腹が膨れて苦しい症状のこと
お腹の張り(腹部膨満感)とはお腹が膨れて苦しい症状のことを指します。
通常ではお腹いっぱいに食べたときに満腹感を覚えますが、腹部膨満感に悩んでいる方は、少量の食事でもお腹が膨れて苦しくなります。食事を摂っていないときでも、お腹が張って空腹を感じないこともあります。
お腹が膨れているように感じますが、それは実際にお腹が大きくなっています。膨満感の程度は各個人によって異なります。
お腹が張る主な原因
お腹の張りの主な原因は食べ過ぎ・飲み過ぎ・ストレスです。
とくに肉類を多く食べると消化する際にガスが発生し、一時的なお腹の張りが気になることもあります。
また、ストレスにより、腸をはじめとした消化器官の機能が衰え、お腹の張りにつながることもあります。
お腹の張りの原因となる疾患をチェックしよう
お腹の張りには、病気が隠れている可能性もあるので注意しなくてはなりません。
一時的なお腹の張りではなく、症状が続く場合や腹痛・呼吸困難・尿量の減少・食欲不振などの症状がある場合には、医療機関を受診しましょう。
腹部膨満感が伴う病気は以下のようなものがあります。
- ・便秘
- ・過敏性腸症候群
- ・呑気症(どんきしょう)
- ・逆流性食道炎
- ・胃腸炎
- ・機能性ディスペプシア
- ・腸閉塞(ちょうへいそく)
- ・上腸間膜動脈症候群
以下でそれぞれの疾病について、詳しく解説していきます。
便秘
便秘とは、「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便・排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な努責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と「便通異常症診療ガイドライン2023」(編集:日本消化管学会)で定義されています。
便秘になると、腸に便が溜まってお腹の張りを感じることがあります。腸内の悪玉菌から発生するガスもお腹の張りが原因となります。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は、ストレス・腸の運動性の異常・腸内細菌のバランスの乱れ・食事の影響により発症するといわれています。
下痢・便秘といった便通異常を伴い、トイレのない場所に長時間いるのが難しく、生活の質を大きく低下させます。
この過敏性腸症候群の症状の1つに、お腹の張りがあります。
呑気症(どんきしょう)
呑気症とは、空気嚥下症とも呼ばれています。
食べているときに必要以上の空気を食べ物と一緒に飲み込んでしまい、飲み込んだ空気でお腹が張り、痛みが症状として現れるというものです。
呑気症の特徴としてげっぷ・おならも出やすくなります。ストレスや緊張が主な原因といわれています。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃酸が食道にあがってくることが原因で、食道に炎症が起きている状態です。
主な症状としては胸焼け・呑酸、そのほかには胸痛・声がれ・お腹の張り・のどのつっかえ感・慢性の咳などさまざまな症状が現れます。
逆流性食道炎は、加齢・肥満・脂肪分の多い食事・アルコールなどが原因といわれています。投薬による治療を行いつつ、ダイエット・生活習慣・食事内容の改善などが治療方法となります。
急性胃腸炎
急性胃腸炎はウィルスや細菌による感染、アレルギー、薬剤、暴飲暴食などが原因で起こります。
腹痛・吐き気・嘔吐・下痢・発熱のほかに、お腹の張りも症状として現れます。治療は脱水を避けるための水分摂取、点滴による水分補給などが挙げられます。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、みぞおちの痛みや焼ける感じ、食後の胃もたれ、お腹の張りなどの症状が現れます。
症状があるのにもかかわらず、胃カメラで検査を行っても異常が見つからない場合、機能性ディスペプシアと診断されることがあります。
胃の拡張機能の低下、排出機能の低下、ストレスなどが原因といわれていて、治療は薬物治療と並行して、生活習慣の見直しが必要です。
腸閉塞(ちょうへいそく)
腸閉塞はイレウスとも呼ばれ、腸の内容物が肛門側に移動できなくなる状態のことを指します。
原因は、手術後の癒着・大腸がん・寄生虫・胆石などで、腹痛・便秘・嘔吐・お腹の張り・発熱などの症状が出ます。軽度の場合はチューブで腸の内容物を吸引しますが、重症の場合は手術や内視鏡治療が行われます。
お腹の張りを改善する方法
お腹の張りを改善する方法は以下のようなものがあります。
- ・時間をかけて食事をする
- ・暴飲暴食を避ける
- ・適度に運動をする
- ・便秘の場合は便秘薬を使ってみる
ただし、上記で挙げたような症状については、別途治療が必要です。以下では一時的な場合の対処法を紹介します。症状が改善されず長引く場合は、医療機関を受診しましょう。
食事に時間をかける
早食いの方は、食べ物と一緒に空気を飲み込みやすい傾向があります。ゆっくり食べると、食事と一緒に空気を飲み込んでしまうことを防げます。
早食いの傾向がある方は、呼吸を整えながら食事するのがポイントです。すぐにお腹がいっぱいになってしまう場合は、食事の回数を減らすと良いでしょう。
暴飲暴食を避ける
暴飲暴食は、急性胃腸炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、便秘などの原因となり得るので注意しましょう。
お腹の張りを改善するためには、暴飲暴食を避けて栄養バランスの良い食事を3食きちんと摂ることが重要です。
適度に運動をする
適度な運動を取り入れることで、腸のぜん動運動が促され便秘解消につながる可能性があり、ストレス解消にも有効的です。
いきなり体の負担になるような無理な運動はせず、ウォーキング程度から始めるのが良いでしょう。
便秘薬を試してみる
お腹の張りとともに便秘で悩んでいる方は、便秘の改善をするのが良いでしょう。
便秘の改善には、食物繊維・乳酸菌・水分の摂取が推奨されています。しかし、すぐに便秘が解消できるわけではありません。なるべく早く便秘を解消したい方は、酸化マグネシウムが配合された非刺激性の便秘薬を使ってみるのも1つの方法です。
腸を直接刺激しないので、お腹が痛くなりにくく5歳以上のお子さまから高齢者の方まで服用できます。初めて服用する方や持病がある方は、薬剤師や医師に相談してから服用しましょう。
お腹の張りには病気が隠れている場合があるので注意しよう
お腹の張りの原因は、食べ過ぎ・飲み過ぎ・ストレスが原因である場合が多いです。
しかし、お腹の張りにはさまざまな疾病が隠れている可能性もあり、腸閉塞や大腸がんなど、命に関わる疾病もあるので注意が必要です。
お腹の張りを改善する方法を実践しつつ、お腹の張りが続く場合や、ほかの症状がある場合には、医療機関(消化器内科)を受診するようにしましょう。
- 白畑医師よりコメント
- 今回、おなかの張りの原因や疾患、対応について説明しました。おなかの張りでお悩みの方は、自身に合った対応を毎日の生活に取り入れていきましょう。また、張りが継続する場合は消化器の疾患の可能性があるため医療機関を受診しましょう。
- 監修者
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医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。