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VOL.145 【医師監修】痔のときに浣腸を使っても大丈夫?便秘を根本から改善する方法も紹介

痔は肛門疾患のなかでも患者数が最も多いです。痔を抱えている上にさらに便秘が重なると、浣腸を使って排便しても良いのか悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、痔のときに浣腸を使っても良いのか、便秘に悩んだ際の対処法を解説します。また、浣腸以外に自身で試せる便秘解消法も紹介するので、あわせてチェックしてください。

痔のときに浣腸を使っても大丈夫?

痔には主に3つの種類があります。いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、あな痔(痔ろう)の3種類です。下図はそれぞれの発生箇所と特徴を示します。

痔と診断されているときや痔が疑われるときはどのタイプの痔であっても、便秘解消のために自己判断でグリセリン浣腸を使用するのはNGです。

なぜなら、痔になると直腸や肛門部に出血がみられたり、炎症が起こったりします。そこにグリセリン浣腸を使用すると、腹膜炎が起こったり、出血がひどくなったり、あるいはグリセリンが血液中の赤血球を壊し(溶血)、遊離したヘモグロビンが腎臓に毒性(腎不全)を示したりするからです。

また、肛門周辺に出血があったり、痛みを感じたりする場合には、痔以外にも何らかの病気が潜んでいる可能性があるため、医療機関で診察を受けることが大切です。

痔と便秘の両方に悩まされている方がやってはいけないこと

痔の原因には便通異常(便秘や下痢)が関連しています。便秘で悩む方は、便が硬く、排便時の困難感や残便感を伴う場合が多い傾向にあります。例えば、硬い便を出そうとして洋式トイレに長時間座り、排便するために過度にいきんでしまうことがあるかもしれません。

そうした排泄時の行為が、肛門周辺の血管に負荷をかけてうっ血したり、硬い便が直腸や肛門の粘膜を傷つけたりして、痔がさらに悪化してしまう可能性があります。

浣腸を試すほどの便秘とはどういう状態か?

浣腸は肛門から薬液を注入して直腸に直接刺激を与える薬で、直腸内に貯留した便を排泄するのに適しています。

一方で、排便回数が減少しているからといって浣腸を使用しても、十分な排便効果が得られないことがあります。

そのため、個人の判断で浣腸を使用し始めるのではなく、あらかじめ診察を受けた上で浣腸の使用適否を医師に判断してもらうのが望ましいです。

便意があってもそれを我慢して排便に至らない日が続く場合には、直腸内に便が貯留して硬い便になっている可能性が高いので、浣腸による排便効果が期待できるかもしれません。

浣腸で痔の予防は可能?

痔の症状がすでに現れているときに浣腸は使用できませんが、痔になる前であれば浣腸を使用することができます。

硬い便のせいで強くいきむことがあると、肛門周辺の血管に負荷がかかるため、いぼ痔の原因になることがあります。

また、硬い便を無理やり排泄しようとすると、肛門が傷つき、切れ痔になることがあります。

硬い便による排便困難や過度のいきみが必要な状態が続く場合には、肛門への負担を減らすために浣腸の使用を検討しましょう。

直接的に痔の予防にはなりませんが、浣腸は便を柔らかくするため、痔の原因となりやすい便秘予防につながります。

ただし、浣腸しないと排便できないほどの便秘がしばらく続いたり、軟便でも排便困難な状態が続いたりする場合には、浣腸を漫然と使用せず、医療機関での治療や生活習慣の改善に取り組むようにしましょう。

浣腸以外にできる便秘の予防・改善方法

浣腸以外にできる便秘の予防・改善方法を以下に5つ紹介します。各自が取り組める方法を実践してみてください。

便意を感じたら早めにトイレに行く

便意を我慢する習慣がある方は、早めにトイレに行くくせをつけましょう。

便意を我慢するのが習慣になると、直腸に便が溜まっても便意を感じにくくなるリスクがあります。また、排便のタイミングが遅れると、便の水分が吸収されてさらに硬くなり、より排便しにくくなるおそれもあります。

便意の有無にかかわらず、朝食後など排便しやすい時間帯にトイレに座る習慣をつけると良いでしょう。

水分を多めに摂る

水分の摂取量が少ないと、便が硬くなり排泄しにくくなります。便秘が気になる方は、1日2リットルを意識して水分を意識的に摂取するのが望ましいです。

利尿作用のある緑茶やコーヒー、紅茶などよりも、水やお湯、麦茶などを飲んだほうが便秘改善につながりやすいでしょう。

適度に運動する

適度な運動により、腸のぜん動運動を促す効果が期待できます。まずはウォーキング、ジョギング、水泳などの全身運動や腹筋運動を試してみましょう。腹部の筋肉を鍛えれば、腸の動きや排便をサポートしてくれます。

また、屋外での運動が難しい方は、軽いストレッチをしたり、お腹の上で「の」の字を書くようにマッサージをしたりするだけでも効果が期待できます。

食物繊維の多い食事を摂る

食物繊維には、便を柔らかくし、かさを増やす効果が期待できます。食事量や食物繊維の摂取量が少ないために排便回数が減少したタイプの便秘に対し、便通改善効果が実感できます。

1日に20g前後の量を目安に、食物繊維を毎回の食事のなかで摂取するようにしましょう。食物繊維の多い食材は、穀物や芋類、果物、生野菜、きのこ類、藻類などがあります。

酸化マグネシウム便秘薬を服用する

酸化マグネシウムの便秘薬は、腸管内に水分を引き寄せる作用により、便を柔らかくして排出しやすくするため、便秘の改善に効果があります。

酸化マグネシウム便秘薬はクセになりにくく、お腹が痛くなりにくいのが特徴です。

浣腸よりも効果の現れ方がゆるやかですが、個人差も大きく、1〜2時間程度で効果が現れる場合もあれば、数日経って効果が現れる場合もあります。

ただし、ほかの薬を服用している方や治療中の方は服用しても問題ないか医師や薬剤師に相談してから、用法用量を守って服用しましょう。

痔のときの浣腸の使用はNG!そのほかの便秘解消方法を試してみよう

痔には主にいぼ痔・切れ痔・痔ろうの3種類があります。すでに痔と診断されているときや痔が疑われるときは、便秘解消のために自己判断で浣腸することはNGです。

ただし、痔を予防するために、直腸内に貯留した硬い便を排泄するための浣腸は有効です。

浣腸以外にも便秘の予防・改善方法は複数あるため、痔と便秘の両方に悩んでいる方は試してみてください。

白畑医師よりコメント
便秘に悩む方は生活習慣の改善や見直し・投薬などで対応し、改善が無い場合は浣腸を正しい知識で使用しましょう。その際に痔などの肛門疾患に罹患している人は浣腸を使用する前に必ず医療機関を受診しましょう。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。