VOL.143 【医師監修】浣腸のメリットとデメリット|便秘を根本から改善する方法も紹介
薬液の作用で腸管を刺激し、さらに便に水分を含ませて排出しやすくする浣腸。
頑固な便秘に悩み、浣腸の使用を考えている方のなかには「浣腸にはどんな効果があるの?」「メリットは何?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、浣腸の効果とメリット・デメリットをまとめて解説します。浣腸以外に自身で試せる便秘の改善方法も紹介するので、不快な便秘をすっきり解消したい方は、ぜひ参考にしてください。
浣腸にはどんな効果がある?
浣腸は、直腸に溜まった硬い便の排泄に効果を期待できる医薬品です。
肛門から薬液を注入すると、浸透圧の作用で腸壁の水分を吸収し、腸壁に刺激を与えて排泄を促します。さらに吸収した水分により、便をやわらかくして排出しやすくする仕組みです。
便秘解消に浣腸を使うメリット
次に、便秘解消に浣腸を使うメリットを3つ見ていきましょう。
即効性があり、望むタイミングで排便しやすい
浣腸には即効性があり、望むタイミングで排便しやすいことが特徴です。
使用すると3〜10分程度で便意を催すことが多く、お腹が張って苦しいときや大事な仕事の前、旅行の前など、都合に合わせて排便を済ませやすくなります。
赤ちゃんから大人まで年齢を問わず使用できる
赤ちゃんから大人まで、年齢や性別を問わず使用できることもメリットといえます。浣腸は、水とグリセリンを主成分とする薬剤です。
グリセリンは植物由来の成分で、食品や化粧品などにも使われています。
なお浣腸を使う際は、付属の説明書や医師の指示などを参考に、年齢や体調によって注入する薬液の量を調整しましょう。
便秘解消に浣腸を使うデメリットはある?
浣腸を使用すると、まれに血圧変動や直腸不快感、肛門部違和などの副作用が出ることがあります。
浣腸を安全に使うためにも、持病のある方や妊娠中・授乳中の方、ほかの薬を服用中の方、使用に不安がある方などは、使用前に医師に相談しましょう。
なお、痔や腸出血がある方は浣腸を使用できません。
また、浣腸にはクセになる薬剤は含まれていませんが、常用すると肛門・直腸の機能が弱まり身体的・心因的な依存性が生じる可能性もあります。浣腸の使用は説明書に記載された回数までに止め、常用は避けてください。
浣腸を頻繁に使用しなければ排便できないほどの便秘に悩んだ際は、浣腸の使用とあわせて生活習慣の改善や医療機関での便秘治療に取り組みましょう。
浣腸の適切な使い方
浣腸にはいくつか種類があり、市販の多くがノズル部分の短いイチジク型の浣腸、または、薬液が入っているところがジャバラ型の形状をした浣腸です。
浣腸を安全に使うためには、それぞれの正しい使用方法を把握しておくことが大切です。使い方を誤ると、直腸に傷がついたり十分に効果を感じられなかったりするリスクがあるため注意してください。
以下では、ノズル部分の短いイチジク型の浣腸の適切な使い方を2ステップに分けて解説します。
ステップ1.事前準備
薬液を注入する前に、事前準備をしましょう。浣腸は常温でも使えますが、湯煎で人肌程度に温めておくと、薬液の冷たさが気になりにくくなります。
ただし、熱くしすぎると腸壁を損傷するリスクがあるため、温度管理には注意してください。
浣腸の先端は、キャップをはずしてワセリンやオリーブオイルなどを塗っておくと、スムーズに挿入しやすくなります。
ステップ2.薬液の注入・排便
準備が整ったら、薬液を注入しましょう。体の左側を下にして横になった状態で、ゆっくりと浣腸の先端を挿入します。
立った状態で使用すると、先端が直腸を傷つける恐れがあるため要注意です。また挿入時に抵抗を感じる場合は、無理に押し込まず、いったん引き戻してやり直しましょう。
薬液を注入したら、ティッシュペーパーや脱脂綿で肛門を押さえます。3〜10分程度待機し、十分に便意が高まってから排泄してください。
なお、薬液の注入後は急に便意を催す可能性があるため、浣腸はできるだけトイレに近い場所で行うと良いでしょう。
浣腸以外にできる便秘解消法
最後に、浣腸以外に考えられる便秘解消法や便秘改善に役立つ生活習慣の工夫を5つ紹介します。
便意を感じたら我慢せずトイレに行く
便意を感じたときは、我慢をせずできるだけ早くトイレに行きましょう。便意を我慢する習慣がつくと、排便反射が低下して自然排便をしにくくなるリスクがあります。
仕事などですぐにトイレに行けないことが多い方は、朝食後などゆっくりと時間を取りやすいタイミングでトイレに座る習慣をつけるのがおすすめです。
適度に運動する
適度に運動することも大切です。運動すると腸の蠕動運動が活発になり、スムーズに排便しやすくなります。また、運動によるストレス軽減が便秘解消につながる可能性もあるでしょう。
運動習慣を取り入れる場合、まずはウォーキングなどの有酸素運動や腹筋運動を試してみてください。
有酸素運動は腸の動きを活発にしてくれるほか、腹筋を鍛えて腸の圧力を増加させることで、排便しやすくなる場合があります。
意識的に水分を摂取する
水分摂取量が少なくなりやすい方は、意識してこまめに水分を摂りましょう。水分摂取量が少ないと、便が硬くなり排泄しにくくなる場合があります。
目安となる水分摂取量は、1日2リットル程度です。水分を普段より多めに摂取する習慣をつければ、頑固な便秘も改善する可能性があります。
食事で食物繊維を摂る
普段の食事で食物繊維を摂取することもポイントです。食物繊維には、便をやわらかくして排出しやすくする効果が期待できます。
食物繊維を多めに摂るには、生野菜や果物、穀物、芋類、きのこ類、藻類などの食材を意識的に使いましょう。
ただし便秘を根本的に改善するには、食物繊維だけを多く摂るのではなく、普段から栄養バランスの整った食事をすることが大切です。
酸化マグネシウム便秘薬を使用する
浣腸の代わりに酸化マグネシウム便秘薬を使用する方法もあります。酸化マグネシウム便秘薬は、便をやわらかくして排泄しやすくするお薬です。
浣腸よりも効果がゆるやかで、服用してから数時間程度で便意を催す傾向があります。
酸化マグネシウム便秘薬は、お腹の痛みが少なくクセにもなりにくいのが特徴で、子どもからお年寄りまで服用できるお薬です。ただし、用法用量は守って服用しましょう。
浣腸のメリット・デメリットを知って正しく使おう
浣腸は、水とグリセリンを主成分としており、赤ちゃんから高齢者まで使えます。即効性があり望むタイミングで排便できるため、お腹が張って苦しいときや大事な予定の前などに重宝するでしょう。
ただし、浣腸には注意すべき副作用やリスクもあるので、医師の指導や商品の説明書に従って正しく使用することが大切です。
また、浣腸しなければ出ないほどの便秘が続く場合は、浣腸を常用せず、医療機関での治療や生活習慣の改善も検討してみてください。
- 白畑医師よりコメント
- 便秘に悩む方は、食事や睡眠など日常生活に注意し、しっかりと予防に取り組みましょう。それでもコントロールが困難の場合は、浣腸のメリットとデメリットを理解したうえで上手に使い、便秘を解消しましょう。
- 監修者
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医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。