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VOL.139 【医師監修】浣腸の温度は冷たいままでOK?適温や使用する際の注意点も紹介

直腸に便がたくさん溜まっていると、いきんでも排泄しにくく、ついつい浣腸に頼りがちになる方もいるのではないでしょうか。浣腸では操作や取扱いを気をつけるだけでなく、温度にも注意してほしい点があります。

今回は、浣腸液の最適な温度帯や温め方、使用時の注意点などを詳しく解説していきます。

浣腸の適度な温度とは

直腸の温度は約37.5℃なので、脇の下で測る温度(一般的にいう体温)よりも少し高めです。そのため、浣腸液をこの直腸温に近い温度に温めてから使うと刺激になりにくいといわれています。冬場はとくに浣腸液が冷えていることがあるので、浣腸する前に温めておくと良いでしょう。

浣腸液を温める方法としては「湯煎」が最適です。45℃程度のお湯に10分以上浸けておくと良いでしょう。温めてから浣腸に使うまでに浣腸液が冷めてくることを見越して、浣腸液は40℃くらいまで温めておきます。

湯煎時のお湯が少ないと浣腸液が十分に温まらないため、お湯は2リットル以上用意しましょう。浣腸液が入っている容器の箇所が確実にお湯の中に浸かっている状態にしてください。なお、湯煎するときにはノズル先端のキャップはつけたままにしておきましょう。

 

 

食品などを加温調理する方法として一般的な電子レンジですが、浣腸液を温める方法としては推奨できません。なぜなら、容器の爆発や溶解のリスクがあるほか、浣腸液の温まり方にムラがあることが看護師の研究報告などで明らかになっているからです。

電子レンジは手軽な加温手段ですが、浣腸液を温めるときには「湯煎」にしましょう。

浣腸の温度が高すぎる・低すぎるとどうなる?

浣腸を温めるには湯煎で、40℃くらいにするのが理想ということを説明しました。では、浣腸液の温度が高すぎる、もしくは低すぎるとどういう弊害があるのでしょうか。

熱い浣腸液が直腸内に注入されると直腸の粘膜が炎症を起こしてしまいます。皮膚が熱いものに触ると火傷を起こしますが、直腸内もそれと同じことが起こるといえます。

一方で、浣腸液の温度が低すぎると、注入したときに、血圧が大きく変動したり脈が遅くなったり、あるいは腹痛やショック症状などが起きるリスクがあると考えられています。

浣腸の使用方法

浣腸液は40℃程度に温めたうえで、容器のノズルの先端に付いているキャップを外します。ノズルの先端にはオリブ油やワセリンといった潤滑剤を塗ると、ノズルが挿入しやすくなります。ただし、潤滑剤を塗りすぎるとノズル先端の穴をふさぐおそれがあるので注意しましょう。

続いて、ノズルの先端を肛門からゆっくりと挿入し、説明書の指示に従って、適正量の薬液を注入します。注入する速度は、例えば30gの浣腸剤であれば10秒程度をかけて薬液を注入するのが目安です。

薬液を注入し終えたら、肛門からノズルを静かに抜き、肛門部を脱脂綿やティッシュで押さえて直腸内に薬液を保持します。便意が強まるまで(できれば3分程度)待ってから排便するようにしましょう。ただし、便意を我慢している途中で気分が悪くなったら無理はせず、トイレで排泄してください。

浣腸を使う際の注意点

浣腸の使い方を誤ると、腸壁の損傷や体に不調をきたす可能性があります。製品に記載されている注意点をしっかりと読み、痔や腸出血がある方は浣腸の使用を控えるようにしてください。

以下で、浣腸を使う際の注意点を3つ解説します。

持病がある方や妊娠中の方などは、使用前に医師に相談する

体の状況により、浣腸の使用を避けたほうが良い場合があります。

例えば、持病のある方はその病気の状態が悪化するおそれがあります。また、妊娠中の方が使用すると、流産・早産を起こす危険性があります。

ほかの薬を服用中の方なども含め、市販の浣腸を使用する前には、かかりつけの医師に使用可否を相談するようにしましょう。

立った状態で薬液を注入しない

立った状態で浣腸しようとすると、ノズルの先端が直腸壁に当たって傷つけるおそれがあります。

浣腸を使うときは、体の左側を下にして横になった状態が基本の姿勢です。洋式トイレで浣腸する場合には便座に浅く腰掛け、少し前かがみになった状態で片方の腰を浮かせるような姿勢をとり、斜め後ろから浣腸するようにしましょう。

浣腸を乱用しない

浣腸を乱用すると、排便反射が低下して自力で排泄できなくなるリスクがあります。そのため、前回の排便から3~4日間排便がなく、直腸内に便が溜まっている場合などに使用するようにしましょう。

浣腸の常用を避けるためには、生活習慣の改善に取り組むことが大事です。それでも改善が見られない場合には浣腸以外の便秘薬で便通をコントロールしていくことが大切です。医療機関を受診して適切な便秘薬を処方してもらいましょう。

また、浣腸を使用しても排便がなかったからといって、その後に何度も浣腸を使用しないようにしましょう。浣腸しても排便がない場合には、大腸の器質的な疾患が隠れている可能性があるので、早めに医療機関を受診しましょう。

浣腸以外で便秘を改善する方法

便秘の原因はさまざまですが、浣腸以外で便秘を改善する方法を以下で4つ紹介します。普段の生活でも取り組める方法のためぜひ取り入れてみてください。

便意を我慢しない

便意を我慢する習慣をつけていると、排便反射が低下して次第に便意を感じにくくなります。便意を感じたら我慢せず、早めにトイレに行って排泄するように心がけてください。

お腹は寝ている間がゴールデンタイムで、よく動く時間が起床後から朝食後といわれているため、この時間帯に排便する習慣をつけておきましょう。

また、高齢者では便意そのものを感じにくくなることがあります。便意がなくても朝食後にはトイレに行って排便する行為を習慣づけてみてください。

食物繊維を多めに摂取する

排便の回数や量が減少している便秘のタイプでは、食物繊維の摂取不足が原因であることが多く、食事量が減りやすい高齢者やダイエットをする女性に多いです。そのため、食物繊維の摂取量を増やすことで便秘が改善することがあります。

食物繊維には、便を柔らかくしたり、便のかさを増やしたりして排便しやすくする効果が期待できます。穀物や芋類、果物、生野菜、きのこ類、藻類など、食物繊維が豊富な食材を意識的に摂取すると良いでしょう。また、食物繊維だけでなく、普段から栄養バランスの整った食事を摂ることが何より重要です。

こまめに水分を摂る

硬い便による便秘には、こまめな水分補給を意識的に心がけてみてください。水分不足による硬い便は腸を刺激しにくく、便秘の原因になりやすいからです。

ただし、水分を一度にたくさん摂ってもあまり意味がありません。体の中に蓄えられる水分量はほぼ一定なので、余分な水分は尿として排泄されてしまいます。

また、水分を摂取すると同時に適度に運動することも大切です。体を動かすことにより腸の動きも活発になることが期待できます。

酸化マグネシウム便秘薬を服用する

酸化マグネシウム便秘薬は便に水分を引き寄せ、便を柔らかくして排出しやすくする効果があります。大腸のぜん動運動を強く刺激せず、自然な排便が得られるため、硬い便を伴う排便回数が減った便秘を改善するのに使われています。

酸化マグネシウム便秘薬は浣腸よりも効果の発現はゆるやかです。酸化マグネシウムは便を柔らかくする効果があります。便秘になってから服用するのではなく便秘の予防薬のため、お悩みの方は便秘になる前のタイミングで服用しましょう。

効果のあらわれ方には個人差があります。用法用量を守って服用するようにしましょう。

浣腸の温度は人肌程度が理想!適切に使用して便秘を解消しよう

浣腸は使用前に湯煎で人肌程度に温めるのが望ましいですが、液温が高すぎても低すぎても何らかのリスクが生じるため注意が必要です。

また、浣腸には即効性が期待できる一方で、乱用すると排便反射が低下して自力で排便できなくなるリスクがあります。また、浣腸時に直腸粘膜を傷つけてしまうリスクもあるため、適切に使用する必要があります。便秘の症状が続く場合は、浣腸に頼るのではなく、生活習慣の見直しもしましょう。

白畑医師よりコメント
便秘に悩む方は食生活の改善・生活習慣改善・投薬など自分に合ったやり方で積極的に便秘予防に取り組んでいきましょう。それでも改善が無い場合は、浣腸を利用して調整しましょう。浣腸も正確な知識を基に安全に効率的に使用しましょう。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。