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VOL.137 【医師監修】浣腸の仕組みとは?使うタイミングや適切な使い方を解説

浣腸薬は便秘で使用する外用薬で、ドラッグストアでも購入できる第2類医薬品です。即効性があり、直腸に硬い便が溜まって出しにくい便秘に効きます。しかし、安全に使用するためには注意を払わなければならない便秘薬でもあります。

今回は浣腸したときに効果が発揮される仕組み、適切な使い方などを解説します。

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浣腸の基礎知識

市販の浣腸薬は、主成分としてグリセリンが使用されており、精製水によって50%の濃度に調製されています。

市販の浣腸剤のほとんどが、ノズル部分の短いイチジク型の浣腸(下図の左)ですが、ノズル部分が長く、薬液が入っているところがジャバラ型の形状をした浣腸(下図の右)もあります。

図.浣腸薬のタイプ

グリセリン浣腸は、ノズル部分を肛門からゆっくり挿入し、浣腸液を直腸に注入して使います。浣腸液が直腸壁の水分を吸収することで腸に刺激を与え、さらに便を柔らかくして排便を促す作用があります。

ただし、どのような便秘の状態でも浣腸を使えば良いというものではなく、使い方によっては危険を伴う可能性があります。

また、浣腸を行ってはならない、あるいは浣腸を行うには慎重にならなければならない状態の方もいるため、製品のパッケージに記載されている使用上の注意をよく読み、医師や薬剤師にきちんと相談してから使用しましょう。

浣腸を使うタイミングは?

便秘のなかでも浣腸が効果的なのは、直腸や肛門の動きや感覚には異常がないにも関わらず、便が硬く、硬便を排泄するのが困難な状態や過度のいきみを伴う状態です。

そのため、直腸に硬い便が溜まって排泄しにくいと感じたときに使用するのが良いです。ただし、浣腸は毎日使うのではなく、1週間に2回までの使用頻度に留めるようにしましょう。

排便回数が少なくなってきたという状態で浣腸をしても、効果は限定的なので、排便回数の減少が理由で浣腸を使用するのはおすすめしません。

浣腸して便が出るまでの仕組み

グリセリンは粘性を有し、吸湿性(水分を吸収しやすい性質)があります。

グリセリンの浣腸液が腸内に注入されると、腸管内外に浸透圧の差が生じるため、それを補正するように腸管内に水分が移動します。この水分を吸収して便の容量が増加すると、直腸内圧が上がり、排便中枢に刺激が伝わって、ぜん動運動が促されます。

グリセリン液が便に浸透して硬い便を柔らかくしてくれるとともに、便の滑りをよくするため、直腸にたまった硬い便が排出しやすくなります。

浣腸の適切な使い方

浣腸には種類があり、使い方も異なります。基本的には説明書に記載された方法で使用しましょう。

浣腸をはじめて使う方は説明書とあわせてポイントを覚えておくと良いかもしれません。

浣腸液はあらかじめ湯煎し、人肌程度(38℃前後)に温めると良いです。それよりも高い温度では腸粘膜に炎症を起こすリスクがあるので注意しましょう。

とくに冬場は浣腸液自体が冷えていることがあるので、肛門から冷えた液を注入すると血圧の上昇などが起こりやすくなります。

浣腸する前には、ノズルの先端に装着されているキャップを必ず取り外します。このとき、容器のノズル部分の根元をしっかり持って、キャップを回すように外しましょう。薬液の入った部分を持つと、キャップを取り外したときに薬液が飛び出ることがあるので注意してください。

浣腸すると便意が強く現れることが多いです。そのため、浣腸はトイレで行うようにしましょう。

ノズルの先端にワセリンやオリブ油を塗っておくと、ノズルを挿入しやすくなります。また、浣腸液を少し出してノズルの先端を濡らしておく方法でも良いでしょう。

浣腸をしてから便が出るまでの時間は?

浣腸は即効性があるので、注入後すぐに便意を感じることがあります。

我慢できずにすぐに排出してしまうと浣腸液だけが排出されてしまい、効果がなくなることも多いので、注入後はできる限り3分程度は我慢するようにしましょう。

ただし、我慢のしすぎで血圧が上がったり、気分が悪くなったりすることもあるので、可能な範囲で我慢するようにしましょう。

浣腸を行う際の注意点

浣腸の使い方を誤ると思わぬ事態を招いてしまう可能性があります。以下では浣腸を行う際の注意点を紹介するので、しっかりチェックしておきましょう。

立った状態で挿入しない

ノズルが長いタイプの浣腸を立った状態で挿入すると、先端が直腸前壁に当たりやすくなります。浣腸することによる緊張によって直腸が収縮し、安全に挿入できないことがあります。

ノズルの長いタイプの浣腸を挿入する際は、横になって左向きの体勢で行うようにしましょう。

先端を深く入れすぎない

ノズルを深く挿入し過ぎると、腸管壁に接触して粘膜が傷ついてしまう危険性があります。

そのため、ノズルの長いタイプの浣腸は、ノズル先端を入れる長さを、大人では5〜6cm、小児で3~4cmまでとしましょう。ノズル部分にストッパーが付いている浣腸がほとんどなので、ストッパーをあらかじめセットしておくと良いでしょう。

浣腸を乱用しない

便秘のたびに浣腸を使用すると、排便反射が低下し、自力で排泄できなくなるリスクがあります。

また、浣腸に頼りがちになり、使用回数も増えていくことになります。浣腸を使わないと排便できないときは、早めに医療機関に相談するようにしましょう。

浣腸以外で頑固な便秘を改善する方法

浣腸以外にも便秘を改善する方法は複数あります。

以下では、日常でできる便秘改善方法を紹介します。

酸化マグネシウム便秘薬を使用する

排便回数が減少している便秘症の場合は、酸化マグネシウムの便秘薬を試してみると良いかもしれません。

酸化マグネシウム便秘薬は便を柔らかくして排出しやすくする効果があります。また、大腸のぜん動運動を強く刺激しないため、浣腸よりも効果の発現がゆるやかで、服用から数時間程度で便意をもよおすことが多いです。

服用する際は用法用量を守り、服用中の薬がある方は服用しても問題がないか、医師または薬剤師に相談しましょう。

食物繊維が豊富な食事を摂る

便の材料となる食物繊維の摂取量が少ないと、便の量が減って排便回数も減ります。食物繊維不足による便秘の場合、穀物や芋類、果物、生野菜、きのこ類、藻類など、食物繊維が豊富な食材を意識的に摂ると良いでしょう。

食物繊維には便を柔らかくし、かさを増やして排便しやすくする効果が期待できます。

水分を多めに摂取する

水分不足は便が硬くなる要因になります。水の摂取量が少ない、発汗が多いなど、体内の水分が少なくなると便が硬くなり、便秘になりやすくなります。

早朝に冷水や冷たい牛乳、ヨーグルト、冷果汁などを摂取して腸を刺激するのも良いでしょう。

運動習慣をつける

適度な運動習慣をつけることで、腸が活発に動きやすくなります。便を押し出すための腹筋を鍛える運動や、ウォーキング、ヨガなどの全身運動がおすすめです。

毎日決まった時間帯にトイレに座る

便秘で悩んでいる方の多くは排便リズムが不規則です。毎日、決まった時間帯にトイレに行き、排便姿勢をとり、排便を試みましょう。人間は寝ている間が一番お腹が動くため、1日の中で一番便が出やすいのは、朝起きた時になります。また、便が出ないときは排便に固執せずあきらめることも大事になります。

浣腸の仕組みを知って、頑固な便秘を解消しよう

市販の浣腸薬のほとんどは50%グリセリン液です。浣腸の仕組みは、グリセリン液が腸壁の水分を便に移動し、ぜん動運動を促すことで排便しやすくなります。

浣腸を使う際は腸壁を傷つけないよう、注意しながら使いましょう。

なお、浣腸をしても便通が改善しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

白畑医師よりコメント
便秘は様々な要因の影響で発症します。便秘治療で大事なことは『予防』です。悩んでいる方は食事や生活習慣、投薬など自分に合ったやり方で積極的に便秘予防に取り組んでいきましょう。それでも排便が困難な場合は、選択肢の1つとして浣腸を考えましょう。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。

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