VOL.135 【医師監修】油が不足すると便秘になる?おすすめの油と理想の摂取量を紹介
ダイエット中に便秘の症状がでて悩んでいる方もいるのではないでしょうか。原因の一つとして、油の不足が考えられます。油の摂取を制限していると便秘になりやすいため、注意が必要です。
そこで今回は、「便秘になる主な原因」と「便秘解消効果が期待できる油の種類」、「油の適切な摂取量」を紹介します。油以外で便秘を解消する方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
便秘になる主な原因
便秘になる主な原因は以下になります。
- ・ダイエット
- ・偏った食事
- ・運動不足
- ・便意の我慢
- ・精神的ストレス
- ・水分・油分の不足
- ・ほかの病気
ダイエットをすると、全体的な食べ物の摂取量が減る傾向にあります。すると便の材料が少なくなり、便自体の量が減ってしまいます。さらに、ダイエットのストレスによって腸の動きが鈍る可能性もあります。
ダイエット以外にも、偏った食事による食物繊維不足や、運動不足による筋力低下も便秘の原因として考えられます。便意を我慢をしすぎて、便意を感じづらくなってしまうケースもよくある原因です。
また、大腸がんやクローン病など、ほかの病気が原因で便秘になる場合もあります。便秘がなかなか解消されない場合は、ほかの病気が隠れていないかチェックすることも大切です。
油が不足すると便秘になる?
油が不足すると便秘になりやすいです。魚や植物に含まれている不飽和脂肪酸は、小腸に吸収されにくい特徴があり、便を運ぶための潤滑油になります。小腸を刺激して大腸の働きを活発化させる役割があるため、スムーズな排便にとって重要です。
油には「体に悪い」「太る」というイメージが強く、とくにダイエット中の方は油を避ける傾向があります。食物繊維や水分を積極的に摂っているにもかかわらず、便が硬くて排便が難しい場合は、油の不足が原因かもしれません。
油が不足していると便秘以外にも影響がある
油は5大栄養素のなかにも入っている、体にとって重要な栄養素です。体を動かすためのエネルギー供給源であり、細胞膜の構成成分でもあります。ビタミンA、D、E、β-カロテンなど、油と一緒に摂ると吸収が促進される栄養素もあります。
また、脳の組織の60%が脂質でできていることを考えると、油の重要性がわかるのではないでしょうか。
油が不足すると、エネルギー不足で疲れやすくなり、脳の働きも低下します。肌が乾燥しやすくなり、肌トラブルも起きやすくなります。油の摂りすぎは良くありませんが、適量の摂取は心がけるようにしましょう。
便秘解消効果が期待できる油の種類
便秘にならないためには適量の油が必要です。しかし、どのような油でも良いわけではありません。
マーガリンやスナック菓子などに含まれているトランス脂肪酸のように、体への悪影響が懸念されている油は避けるようにしましょう。
料理によく使われる菜種油(キャノーラ油)やコーン油、紅花油は、リノール酸が多く含まれており、適量の摂取は必要ですが、摂りすぎは肥満の原因につながる可能性があります。
便秘予防のために油を摂取するなら、油の種類を意識することが大切です。以下では便秘予防効果が期待できる油の種類を紹介します。
オリーブオイル
オリーブオイルは便秘予防に効果的な油の1つです。オリーブオイルには、オメガ9系のオレイン酸が多く含まれており、腸のぜん動運動を促進するのにくわえ、便を運びやすくする潤滑油としても役立ちます。
サラダやパンと一緒に食べるのも良いですが、味噌汁やスープ、納豆などを食べる際に少しかけるのもおすすめです。
エゴマ油
エゴマ油とは、シソ科植物の荏胡麻の種から抽出される油です。エゴマ油には善玉菌の餌になるオメガ3系脂肪酸が豊富に含まれており、腸内環境を良くする効果が期待できます。
また、エゴマ油に含まれているα-リノレン酸は、腸を刺激して活動を活発化させます。便を出すための潤滑油としても役立ちます。
エゴマ油は熱に弱いため、加熱せずに食べるのがおすすめです。サラダやパスタ、たまごかけご飯、味噌汁など、できあがった料理にかけて食べると良いでしょう。
アマニ油
アマニ油とは、亜麻という植物の種から抽出した油です。エゴマ油と同様オメガ3脂肪酸が多く含まれており、善玉菌を増やす働きがあります。くわえて、便秘を解消に導くオレイン酸やα-リノレン酸も含まれています。
エゴマ油と同じく熱に弱いので、加熱せずに食べる直前に料理にかけて食べるのがおすすめです。
ココナッツオイル
ココナッツオイルは、ココヤシの実から抽出される油です。飽和脂肪酸が多く含まれており、抗菌作用、抗真菌作用のあるラウリン酸が多く含まれています。ラウリン酸は腸内の悪玉菌を減少させ善玉菌を活性化させてくれます。
便秘解消に効果的な食物繊維をはじめ、ビタミン、ミネラルも多く含まれています。ココナッツの甘い香りを活かせる、ココアやカフェラテなどの仕上げに少し加えるのがおすすめです。
1日に摂るべき油の量は?
油をまったく摂取しないと体に不調が現れます。しかし、摂取し過ぎにも注意しなくてはなりません。1日に摂るべき油の量は大さじ1杯程度です。
油は肉やベーコン、揚げ物、お菓子などの食べ物、マヨネーズやドレッシングなどの調味料にも含まれています。意識しなければ、すぐに1日の油の目安量を超えてしまう可能性があります。
さまざまな料理に油が含まれていることを考え、便秘に効果的な油を何かにかけて食べる場合は、1食あたり小さじ1杯程度を目安にしましょう。
油以外で便秘解消を目指す方法
便秘を解消するためには、適量の油の摂取を心がけながら、生活習慣の改善も行う必要があります。なるべく早く便秘を解消したい場合には、便秘薬を使用するのも1つの方法です。
以下では、油以外で便秘解消するための方法を紹介します。
3食栄養バランスの良い食事を摂る
便秘解消のためには、まず3食きちんと摂ることが大切です。その上で、排便を促す食物繊維を摂取すると良いでしょう。
食物繊維の種類は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類です。水溶性食物繊維は腸内の善玉菌を増やし、便を柔らかくする役目があります。不溶性食物繊維は、便の量を増やして腸管を刺激し、排便を促します。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が多く含まれている食材は以下になります。
食物繊維の種類 | 多く含まれている食材 |
水溶性食物繊維 | にんじん・ほうれん草・海藻など |
不溶性食物繊維 | 根菜類・きのこ類・繊維の硬い野菜・豆類・果物・こんにゃくなど |
食物繊維のほかにも、腸内の善玉菌を増やす、ビフィズス菌や乳酸菌を積極的に摂取するのがおすすめです。ビフィズス菌や乳酸菌は、ヨーグルト・乳酸菌飲料・納豆・漬物に多く含まれています。
こまめに水分を摂取する
便秘を予防するためには、水分不足を避けなければなりません。水分が足りないと腸の動きが悪くなります。また腸内にある便が硬くなり排出されにくくなります。
1日に2リットルを目標として、水分補給するのがおすすめです。水分は一気に摂るのではなく、こまめに摂取するのがポイントです。
カフェインを含むコーヒーや紅茶は利尿作用があるので、水分補給には水や白湯、麦茶などを選ぶと良いでしょう。
適度な運動を行う
運動不足による筋力低下は、便秘の原因です。反対に、運動をすると血行が促進され、自律神経が安定し腸のぜん動運動が促されます。
ストレスによる自律神経の乱れが原因で便秘になる場合もありますが、運動によりストレスが発散され、便秘が改善されることもあります。
普段運動をしていない方にとっては、運動の習慣化を難しいと感じるかもしれません。しかし、激しい運動が必要なわけではありません。
ウォーキングやランニング、軽い筋トレで腹筋を鍛えるだけでも良いので、自身のできる範囲の運動からはじめてみましょう。
排便のタイミングを逃さない
もし便意を感じたら、速やかにトイレに行きましょう。通常では直腸に便が溜まると内肛門括約筋が緩み、排便が促されます。
しかし、便意を我慢することが多いと、次第に便意を感じにくくなり、内肛門括約筋も緩まず排便しにくくなります。
便意を感じづらい方は、まず毎朝決まった時間にトイレに座る習慣を身に付けましょう。お腹は寝ている間によく動くため、朝が排便の最も出やすい時間帯になります。
たとえ出なくても、徐々に排便の習慣が付いていきます。しかし、数分で排便が無いときは無理に出そうとせずトイレから出ましょう。排便は色々な要因に影響を受けるため、柔軟に臨機応変な対応が重要です。
また、規則正しい生活を送ることも排便習慣を付けるのに有効です。食事から排便までの時間はおおよそ決まっているので、毎日同じ時間に排便習慣が付きやすくなるでしょう。
即効性を求めるなら市販の便秘薬を試してみる
便秘の症状に悩んでいる方は、まず市販の便秘薬を試してみましょう。生活習慣の改善は便秘の根本的な解決方法ですが、即効性はありません。便秘を放置すると腸のなかで便が硬くなり、ますます出にくくなります。
便秘薬にはさまざまな種類があります。慢性便秘に悩んでいる方は、非刺激性の酸化マグネシウムの便秘薬を試すと良いでしょう。酸化マグネシウムの便秘薬は、腸管から水分を集めて便を柔らかくし、スムーズな排便を促します。
刺激性の便秘薬は、腸管のぜん動運動を亢進させるとともに、腸管内の水分量と電解質を増やす効果があります。最近発刊された便秘のガイドラインでは、刺激性下剤は困ったときのみの推奨のため毎日内服することは避けて下さい。
初めて使用する方は、薬剤師に相談してから使用しましょう。
良い油を適量摂取して便秘の改善を図ろう
一般的に便秘の原因は、ダイエットや偏った食事、運動不足などです。しかし、油の不足によって便秘になる可能性もあります。
肥満のもとになると避けられがちな油ですが、不足すると便秘だけなく「疲れやすい」「肌トラブル」「脳の働きの低下」などの体に不調が出ることもあります。一方で、油の摂りすぎは肥満や生活習慣病につながるので、良質な油を適量摂取することを心がけましょう。
便秘にはオリーブオイル、エゴマ油、アマニ油、ココナッツオイルの摂取がおすすめです。油の摂取量とともに、食生活や生活習慣の改善を行うと、より便秘を解消しやすくなります。
便秘の症状に悩んでおり、即効性を求めるなら市販の便秘薬を試してみるのも1つの方法です。ほかの薬を服用している方や初めて使用する方は、医師や薬剤師に相談してから使用しましょう。
- 白畑医師よりコメント
- 食用油には便秘解消に役立つ働きが多く含まれているため、自分に合った摂取方法やタイミングを考え、毎日の生活に取り入れ便秘予防に取り組んでいきましょう。油は多くの場合、バランスのいい食事であれば自然と摂取されている事が多いので、日常の食事に注意しましょう。
- 監修者
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医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。