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VOL.130 【医師監修】急性便秘の症状と原因|すぐに始められる解消方法を紹介

普段は便通に問題がなくても、さまざまな要因が重なり、急に便秘になってしまうことがあります。

そこで今回は、急性便秘になる原因や、解消法について詳しく解説します。急な便秘に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

急に便秘になることはある?

今までに便通に問題を感じていなくても、急に便秘になることは誰にでもあります。

便秘は排便回数が週に3回未満の場合や、排便があってもコロコロした便、もしくは硬便が多い場合を指します。

また、毎日排便があっても、便を快適に排泄できないために強くいきむ必要があったり、残便感を感じたりする場合にも便秘と考えて良いでしょう。

旅行や出張により普段とは違う環境に身を置いたり、ダイエットで食事制限をしたり、ちょっとした生活習慣の変化による影響を受け、急に便秘になることがあります。これが「急性便秘」です。

一方で、ある程度長期にわたって便秘の状態が続いているのが「慢性便秘」です。慢性的に続く便秘によって日常生活や身体に様々な影響が出てしまう可能性があります。

便秘の症状

そもそも便秘には主にどのような症状があるのでしょうか。普段は便通に問題がないのに、急に以下で紹介する症状が当てはまるようになった方は急性便秘の可能性があります。

残便感がある

残便感とは、排便の後にも直腸内に便が残っている感じがすることをいいます。

残便感に悩む原因は硬い便です。硬い便は一気に排泄しにくく、少しずつ排泄していかなければなりません。こうなると、肛門に不快感が残り、何度もトイレに行ってしまう場合があります。

また、残便感は便秘だけでなく、痔や大腸がんなどの病気が隠れている可能性もあるので、残便感が続く場合は医療機関を受診しましょう。

お腹が張ったり痛んだりする

便秘になると腸内環境が乱れがちになります。腸内で悪玉菌が増殖し、ガスが溜まりやすくなります。ガスが溜まるとお腹が張り、痛みが出る場合があります。

とくに、腸のたるみがある部分やS状結腸(腹部の左下)に痛みが起きやすいといわれています。

吐き気や食欲低下が起こる

腸に便が溜まったままになると、腸の動きが悪くなります。腸の動きが悪くなると、消化液が消化管に貯留しやすくなり、それが吐き気の原因になることがあります。

また、腸の動きが悪くなると食欲も低下する可能性があります。食欲低下によって食べないことを続けると、便が作られなくなり、便秘が悪化するという悪循環ができてしまいます。

いきんでも便が出にくい

便秘になると、いきんでも便が出にくくなります。なぜなら、腸内で便が停滞してしまうと、便の水分が吸収されてしまい、硬い便になります。

その硬い便を排泄しようといきんでも、コロコロとした形状の便しか排泄されないため、残便感が残ります。硬い便やコロコロとした便がしばらく続く場合は、便秘の可能性が高いです。

また、お腹は正常でも肛門の括約筋の力がなく、排便ができなくなる「排便困難型便秘』があります。お腹は正常のため下剤は効果がなく、肛門の力を強める治療が必要になります。医療機関の簡単な検査で診断ができるので、お悩みの方は受診しましょう。

急性便秘になる原因

急性便秘の原因はさまざま考えられます。以下では急性便秘になる主な原因について解説します。

食事に問題がある

ジャンクフードが多い、脂っぽい料理を食べる、朝ごはんを食べないなど、偏った食生活をしばらく続けていると便秘になる可能性が高くなります。

また、ダイエットのために食事の量を制限していると、便のカサが十分に増えません。そのため、腸への刺激が弱くなり、腸のぜん動運動も弱くなってしまうので、急性便秘になりやすい傾向にあります。

ストレスを感じている

ストレスを感じると、腸は過敏な状態になりやすいといわれています。ストレスが続くと交感神経と副交感神経のバランスが崩れやすくなります。

腸の働きは自律神経と密接に関係しているため、自律神経が乱れることで腸の働きも乱れ、便秘や下痢を起こしやすくなります。

水分の摂取不足

経口摂取した水分は消化管で大部分が吸収され、余分な水分量は尿などで排泄し、体内の水分量を一定に保っています。

しかし、体内の水分が足りていないと、腸での水分吸収がより強く起こりやすくなるため、便中の水分量が減ってしまいます。そうなると、固い便が形成され、硬い便が直腸に溜まり、排便しづらくなります。

生活習慣の変化

食事や運動習慣の変化、旅行、新しい環境での生活がきっかけで、急性便秘になる可能性もあります。

生活リズムの変化や食生活の変化、ストレスなどが原因と考えられています。それらの原因が取り除かれるか、環境に慣れることで便秘が改善される傾向にあります。

病気が隠れている

急性便秘には、ほかの病気が隠れている場合もあるので注意が必要です。

例えば、血便が出る場合には、大腸がんや潰瘍性大腸炎などの病気が潜んでいる場合があります。そのため、便秘が長引く、便秘と下痢を繰り返す、腹痛が続く、吐き気がする場合は、医療機関を受診しましょう。

急性便秘の解消法

急性便秘は日々の習慣を変えることで解消できることもあります。以下でそれぞれの解消法を詳しく解説します。

食物繊維を十分に摂る

食事の内容を改善することで、便通が整ってくることがあります。食物繊維はそのひとつです。食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。

水溶性食物繊維はヌルヌル・ネバネバした野菜や果物などに多く含まれています。善玉菌のエサとなって腸内で善玉菌を増やしたり、便に水分を保持して便を柔らかくしたりする作用があります。

一方で不溶性食物繊維は穀物類、豆類などに多く含まれており、便のカサを増やし、腸の運動を活発化させる効果が期待できます。1日3回の食事のなかで、水溶性と不溶性、両方の食物繊維を意識的に摂取するようにしてみましょう。

起床時にコップ一杯の水を飲む

起床後すぐにコップ1杯の水を飲むことで排便が促されるといわれています。

起床直後というのは胃が空っぽの状態です。そこに水分が入ってくると、胃結腸反射を促すようにスタンバイされる状態になります。

そして朝ごはんを食べると、胃に食べ物が入って来たという反射が腸に伝わり、便が直腸に送達される大ぜん動が起こりやすくなります。それによって、便意を感じやすくなり、トイレに行く習慣がついてくるようになるでしょう。

また、起床後すぐに水分をとるのは、寝ている間に失われる水分の補給にもぴったりです。しかし、タンニンが多く含まれるコーヒー・紅茶・濃い緑茶などは、腸のぜん動運動を抑制する作用があるので、水分は水や白湯を摂るのが良いでしょう。

規則正しい生活を心がける

規則正しい生活を心がけることで、自律神経が整い、規則正しい排便に導きやすくなります。

例えば、栄養バランスの良い食事を摂ること、寝る前にはできるだけ間食しないこと、睡眠時間をしっかり確保すること、そして何よりも朝食をしっかり摂ることが大切だと考えられています。

また、毎日同じ時間帯にトイレの時間を確保することも大切です。最初は便意を感じていなくても、決まった時間帯には洋式トイレに座り、排便する行為を習慣化していくと、徐々に体が排便するリズムを覚え、お通じの習慣がついてきます。

便秘薬を試してみる

便秘を解消したいなら市販の便秘薬を試してみるのも良いでしょう。しかし、薬局にはさまざまな種類の便秘薬があり、刺激性の下剤は避けましょう。

2023年7月に発刊された「便通異常症診療ガイドライン2023」(編集:日本消化管学会)でも刺激性下剤の常用は避けるように明示されています。また便秘薬の優先的な選択方法の推奨も明示し、最近では便秘治療もエビデンスに基づいた治療が行われています。

ガイドラインでも第1選択薬の1つである酸化マグネシウムを有効成分とする便秘薬は、腸管内に水分を引き寄せて便を柔らかくし、スムーズな排便を促してくれます。

また、お腹が痛くなりにくく、くせになりにくい便秘薬なので、初めて便秘薬を試す方でも使いやすいでしょう。

便秘薬は用法用量を守って使用するようにしてください。

出典:「便通異常症診療ガイドライン2023」(編集:日本消化管学会)

急性便秘は放置せず、早めに改善を目指そう

食事や生活の変化、ストレスなどで急に便秘になるのは誰にでもあることです。急性便秘は放置せずに早めに対処することが大切です。

便秘の原因となるストレスを取り除いたり、生活習慣を見直したりすることで、便秘が改善することがあります。早めに便秘を解消したい方は市販の便秘薬を試してみるのも1つの方法です。

急性便秘には大腸の病気が隠れている可能性もあるので、血便、腹痛、吐き気などの症状が強い場合には医療機関を受診するようにしましょう。

白畑医師よりコメント
便秘は多くの要因で誘発される病態で日常生活に大きく影響し、学業・仕事・家事に支障をもたらす厄介な病気です。便秘に悩む方は予防として、食事・水分・生活習慣改善に取り組みましょう。

それでも便秘でお困りの方は、便秘は治る病気ですので医療機関を受診し、主治医と相談しながらエビデンスに沿った治療をしっかり実践し克服しましょう。便秘は怖くない病気です。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。