VOL.54 【医師監修】便秘と動悸は自律神経失調症の症状?治療法や予防法を解説
便秘はよく耳にする症状で、病気かもしれないと不安になる方もいるかもしれません。しかし便秘にもさまざまな原因があり、動悸などほかの症状と併発している場合は、自律神経失調症の可能性もあります。
一見、関係なさそうに感じる便秘と動悸ですが、どちらも全身の器官をコントロールしている自律神経の乱れが原因ということもあるのです。今回は便秘と動悸などの症状から考えられる病気について、治療法や予防法まで解説していきます。
便秘と動悸の症状があるのは病気が関係している?
一見関係なさそうに感じる便秘と動悸ですが、実はどちらも「過敏性腸症候群」の症状として見受けられるものの一部です。
過敏性腸症候群の主な症状は、腹痛や腹部の違和感、便秘と下痢を繰り返すなどの便通異常です。思春期から40代までに多くみられる病気ですが、近年では小中学生など若年層にも増えてきています。
過敏性腸症候群のそのほかの症状は、排便時の腹痛や残便感、1回の排便量の減少、吐き気、嘔吐、立ちくらみ、肩こり、異常発汗などがあります。
過敏性腸症候群の原因は明確になっていませんが、ストレスや緊張・不安からくる自律神経の乱れが原因ではないかといわれています。また、自律神経のバランスがくずれると自律神経失調症を発症する場合があり、過敏性腸症候群と併発することもあります。
便秘と動悸の症状が同時に起こる場合、自律神経失調症の可能性も考えられる
自律神経は体のあらゆる器官をコントロールしているため、バランスがくずれると全身にさまざまな症状があらわれます。便秘と動悸も自律神経失調症の症状の1つなのです。
自律神経失調症は便秘と動悸のほかにも、耳鳴り、不眠、頭痛、ほてり、手足のしびれ、焦燥感などの症状があります。便秘と動悸が同時に起こった場合、自律神経失調症の可能性も考える必要があります。
自律神経失調症とは?
「自律神経失調症」という言葉はよく耳にしますが、どんな状態なのかわからないという方も少なくないのではないでしょうか。自律神経失調症とはさまざまな要因により、全身の器官をコントロールしている自律神経が正しく機能しない状態です。
自律神経は、正反対の働きをする交感神経と副交感神経に分かれており、その2つが交互にバランスをとりながら作用しています。交感神経は活発に活動するときに働き、副交感神経はリラックスするときに働きます。
そのため自律神経が乱れると、心身ともに興奮した状態が続いたり、ゆっくり休めず不眠や倦怠感などの症状を引き起こしたりします。
●自律神経失調症の原因
自律神経失調症の原因は実にさまざまで、睡眠不足やストレス、環境の変化、ホルモンバランスの乱れなどが挙げられます。原因は一人ひとり異なり、複数の要因が絡み合っているともいわれています。
とくに夜型の生活の方、生活リズムが乱れがちの方、ストレスに弱い方などは自律神経のバランスが乱れやすいといわれているので注意が必要です。
また、引越しや転職など環境の変化や、更年期におけるホルモンの乱れも関係しているといわれています。
●自律神経失調症の主な症状
全身の器官をコントロールしている自律神経のバランスがくずれると、あらゆる器官が正しく機能しなくなります。その結果、全身に多岐に渡る症状が現れることがあるのです。
全身的症状として、慢性的な疲労感、不眠、微熱の継続、力が入らない、食欲低下などがあげられます。
器官的症状としては、動悸、頭痛、息切れ、のぼせ、めまい、下痢、便秘、冷えなど、実にさまざまです。
ほかにも精神的症状として、情緒不安定、イライラする、不安感、焦燥感、うつ、会社や学校に行くのがつらいなどがあります。
●自律神経失調症の治療法
自律神経失調法の治療法は、大きく分けて対症療法と認知行動療法の2つあるとされています。しかし、心と体の両方をケアすることが大切なため、食事や睡眠、運動などの生活習慣もあわせて見直す必要があります。
対症療法は、医師の判断に基づきホルモン剤や抗不安薬、睡眠薬などを服用して治療していく方法です。病院を受診し、医師が必要と判断した場合のみ行われます。
認知行動療法は、物事の感じ方や考え方を柔軟に変え、ストレスや不安を緩和していく方法です。専門の医師やカウンセラーからストレスへの対応の仕方などのアドバイスをしてもらいます。
自律神経失調症は予防できる?
自律神経失調症に明確な予防法はありません。しかし、夜はしっかりと眠り、適度な運動をするなど健康的な生活を送ることで予防が期待できます。
ストレスをため込みすぎないように適度に発散したり、忙しくても睡眠時間を確保するようにしたり、心身ともに健康でいられる環境を整えることが大切です。
●予防法①:ストレス発散を日頃から心掛ける
不安や緊張などのストレスは、自律神経失調症の原因の1つだと考えられています。しかし現代社会において、ストレスのない生活を送ることは難しいものです。そのため、日頃から適度にストレスを発散するように心がけることが大切です。
気の合う友人と遊んだり、映画鑑賞など好きなことをしたりするのもよいでしょう。入浴もリラックス効果があるので、シャワーだけで済ませずにできるだけ湯船につかるようにしてみてください。
ストレスをため込むことは避け、悩みがあるときは1人で抱え込まずに人に相談するようにしましょう。
●予防法②:疲れをため込まない
疲れのため込みすぎは、自律神経が乱れる原因となる可能性があります。そのため、忙しくても、疲れを蓄積させないように工夫することが大切です。
自律神経失調症を予防する上で大切なのが睡眠です。睡眠不足は疲労が回復しないだけでなく、ストレスの原因にもなるので、十分な睡眠時間を確保するようにしてください。
忙しいとつい夜型の生活になりがちですが、規則正しい生活を送ることで睡眠の質が向上する可能性もあります。生活のリズムを整えることを心がけましょう。
また、肉体的疲労があるときは、入浴は短時間でも湯船につかるようにし、ストレッチやマッサージをしてください。
●予防法③:バランスの良い食事をとる
バランスの良い食事をとることも、自律神経失調症の予防が期待できるといわれています。自律神経失調症の予防に役立つといわれている栄養素が含まれている主な食品は、トマト、ブロッコリー、バナナなどが挙げられます。
トマトには、自律神経を整える働きをする「GABA(ギャバ)」が含まれており、ブロッコリーにはストレスを感じたときに多く消費されてしまうビタミンCが豊富に含まれています。
バナナには「幸せホルモン」ともよばれるセロトニンをつくり出すトリプトファンという栄養素が含まれています。セロトニンが脳内で分泌されると、リラックス効果を得られ自律神経を整えるサポートをしてくれます。
また、腸の働きを良くすることで自律神経が整いやすくなるといわれています。腸内環境を整え、便通改善にも効果が期待できる善玉菌を多く含む納豆、キムチ、ヨーグルトなどの発酵食品を積極的に摂取するのもよいでしょう。
便秘や動悸は自律神経失調症の可能性も考えましょう
便秘は、人によってはよくある症状かもしれません。便秘が気になる場合は、便秘薬を試してみる方法もあります。しかし、便秘にもさまざまな原因があるので、続くようであれば一度医療機関を受診してみてください。
とくに便秘のほかに動悸をはじめとした自律神経失調症の症状が現れた場合は、早めに医師に相談するようにしてください。
- 工藤医師よりコメント
- 便秘に悩んでいる方はぜひ全身の症状に目を向けてみて下さい。「自律神経が乱れている」とはなかなか自覚することは難しいですが、動悸など他の症状が少しでもあれば我慢せず病院を受診し医師の診断を受けることが大切です。
- 監修者
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医師:工藤孝文
内科医・糖尿病内科・統合医療医・漢方医。
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。
現在は、自身のクリニック:みやま市工藤内科で地域医療に力を注いでいる。
専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など多岐にわたる。
テレビ・ラジオなどのメディアでは、ジャンルを問わず様々な医療の最新情報を発信している。
NHK「ガッテン!」では、2018年度の最高視聴率を獲得した。
著書は15万部突破のベストセラー「やせる出汁」をはじめ、50冊以上に及ぶ。
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。