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VOL.30 【医師監修】即効性のある便秘薬は全ての人に有効? 自分に合った便秘改善法を見つけよう!

便秘が続くと腹部の膨張感によってイライラしたり、食事が喉を通らなくなってますます便秘が悪化したりするといった悪循環に陥ってしまう場合があります。こういった悪循環を断ち切るためには、食事などの生活習慣を改善することで自然な排便ペースを取り戻すことが大切です。それでも効果が得られなければ、薬を使ってたまった便を出すという方法もあります。今回は食生活の改善と、薬の服用による便秘解消法を紹介します。

便秘とは?

便秘の概要
便秘の一般的な目安としては、「排便が1週間に3回未満の場合」などといわれることがありますが、排便頻度は個人差が大きく、中には毎日出ていても「残便感が残る」という人も存在します。そのため、2017年に日本消化器病学会関連研究会が日本で初めてまとめた便秘の診療ガイドラインでは、便秘は「本来なら体外に排出すべき糞(ふん)便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義され、排便頻度などでの明確な判断基準は示されていないのです。したがって、便秘を診断する際には患者本人の自覚症状や、腹部の状態、直腸肛門部の状態などをもとに総合的に診断されます。


便秘のタイプ
便秘は、症状や腸の状態などによって次のようなタイプに分類されます。それぞれのタイプごとに原因となっている病態(疾患)や有効な解消法が異なるので、まずは自分がどのタイプの便秘であるかを確認しましょう。


●器質性便秘
腸の形態的変化が原因で起こる便秘です。腸の形態の違いによって、さらに「狭窄性」と「非狭窄性」に分類されます。


・狭窄性
ガンや腫瘍をなどによって腸が狭まる(狭窄する)ことで、便の通過が物理的に妨げられて起こる便秘です。原因としては、大腸癌や腹腔内腫瘍といった腫瘍性疾患のほか、消化管内に炎症が起こるクローン病などの非腫瘍性疾患が考えられます。


・非狭窄性
狭窄以外の腸の形態変化によって起こる便秘です。具体的には、巨大結腸などが原因で大腸が慢性的に拡張し、腸の動きが弱まることで排便回数が減少する「排便回数減少型」と、直腸瘤やS状結腸瘤などによる便排出障害が原因で直腸にたまった便を十分に排出できなくなる「排便困難型(器質性便排出障害)」が存在します。


●機能性便秘
大腸の形態的な変化をともなわない便秘で、「排便回数減少型」と「排便困難型」が存在します。


・排便回数減少型
大腸の動きが鈍って便の輸送が滞る「大腸通過遅延型」と、大腸の動きは正常にも関わらず便の量が減ることなどが原因で大腸内に便がたまる「大腸通過正常型」が存在します。主な要因は、栄養バランスの偏りや、過度なダイエットによる食事量の減少、ストレスが原因で起こる大腸のけいれんのほか、薬剤の副作用による大腸の機能低下などが考えられます。


・排便困難型
便を排出する機能が落ちて直腸内に便がたまり、残便感を感じる便秘です。主な要因は、便意を我慢し続けることで起こる直腸の感覚低下、運動不足や加齢などによる腹圧の低下といった「機能性便排出障害」が考えられます。また、排便回数や排便量が減少していないにも関わらず、便が硬くなり排便時に痛みや苦痛を感じる「大腸通過正常型」も存在します。

器質性便秘の場合は、原因となっている疾患の治療を行わなければ便秘も解消できません。一方で機能性便秘の場合、食生活の改善や市販薬の服用などで便秘の解消が期待できる可能性があります。まずは食生活の見直しによる便秘解消法を紹介します。

便秘解消に効果的な食品&栄養素

食事の栄養バランスが偏っていると、便が硬くなったり、便のカサが減って便意が起こりにくくなったりすることが考えられます。柔らかくて排出しやすい便を作るためには、以下の食品や栄養素を摂取するのがオススメです。

●発酵食品
便秘になると、腸内の悪玉菌が増加して有害なガスを発生させるので、お腹が張って腸の動きが鈍ってしまいます。そのため、スムーズな排便を維持するためには、善玉菌を増やして腸内環境を整えることが大切です。
発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌が多く含まれているので、便秘時には積極的に摂取するとよいでしょう。具体的には、キムチや漬物、ナチュラルチーズなどのほか、みそやしょうゆの調味料もあります。調理の手間がかからないヨーグルトは、手軽に摂取できてオススメです。

●食物繊維を含む食品
野菜や果物、海藻などに多く含まれる食物繊維は、人間の消化管で分解(消化)されることなく大腸へ達する成分で、水に溶けるもの(水溶性)と溶けないもの(不溶性)の2種類が存在します。水溶性は腸内で善玉菌のエサとなって善玉菌を増やす働きを持っており、不溶性は便の材料となってカサを増やす作用があります。どちらも便秘の解消に有効ですが、摂取する際はそれぞれのバランスに注意が必要です。というのも、不溶性食物繊維を取り過ぎると便が固くなって排便しづらくなり、逆に水溶性食物繊維ばかりを摂取すると便のカサが増えず、便意を催しにくくなってしまう危険性があるのです。そのため、食物繊維を摂取する際は、不溶性と水溶性の割合を2:1のバランスで摂るのが望ましいといわれています。

●オリゴ糖
オリゴ糖は腸内で善玉菌のエサになって善玉菌を増やす働きがあるといわれています。そのため、便秘時には普通の砂糖ではなく、オリゴ糖で甘味を取るとよいでしょう。

即効性あり? どうしても出ない時に頼りたい便秘薬

食生活を改善しても便秘が解消されない時や、便秘の症状をすぐに解消したい時には、便秘薬を服用するのも有効です。ただし、薬を使う場合は、薬のタイプや効果をしっかりと理解した上で、自分に合うものを選ぶことが大切です。

便秘薬のタイプ
下剤は大別すると「非刺激性」と「刺激性」に分けられます。非刺激性下剤の代表としては酸化マグネシウムが挙げられます。この下剤は、腸ではなく便に働きかける薬で、便の水分量を増やすことで便を柔らかくしたり、便のカサを増やすことで腸を刺激し、腸の動きを促したりする働きがあります。

一方、刺激性下剤は、大腸に直接刺激を与えることで腸の動きを促し、便を排出させる薬です。こちらは腹痛を感じる可能性があることに加え、連用すると薬が効きにくくなる危険性もあるようです。

便秘薬の選び方
このような下剤は、内服薬をはじめ浣腸や坐薬など、さまざまな形で販売されているので、自分に合うものを選んでください。できれば、使い始める前に医師や薬剤師へ相談してみるのがよいでしょう。一般的には、まず非刺激性のものを服用し、それでも便が出なければ刺激性という順序で処方されるケースが多いようです。また早急に排便を促す必要がある場合は浣腸や座薬が処方される可能性も考えられます。

まとめ

食事の改善などによって便秘の解消効果が得られない時には、より即効性のある便秘薬を使うのも有効です。しかし、薬を使い続けると、自然な便意が起こりにくくなる可能性もあるので、まずは医師や薬剤師に相談し、自分に合うものを選ぶようにしてくださいね。


木村医師よりコメント
便秘は男性よりも女性に多く、さらに年齢とともに増えていきます。診断では自覚症状が一番重要。毎日排便があっても、残便感や排便が大変といったことがあれば便秘の診断で治療を考慮します。生活習慣を改善し、便秘を解消できることが一番好ましいですが、便秘によって生活に支障がでるのはよくありません。下剤にも多種多様あるため、困ったときには医療機関に相談するのがいいでしょう。