VOL.4 病院で処方される便秘薬はどんなもの? 主な種類と効果・効能について
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食事や生活習慣、年齢や性別など、便秘の原因は十人十色です。症状や悩みに合わせて市販の便秘薬も種類豊富にそろっていますが、中には刺激が強いものもあり、腹痛や激しい下痢をともなったり、体質によっては思わぬ疾患を引き起こしてしまったりすることも。「なかなか自分に合う便秘薬に出合えない‥」と悩んでいる方は、病院で処方を受けてみてはいかがでしょうか。そこで今回は、病院で処方される便秘薬の種類と特徴をご紹介します。
病院で処方される便秘薬にはどんな種類のものがあるの?
便秘薬には様々な種類があり、新しいタイプの薬も登場していますが、現在主流となっているのは「非刺激性下剤」と「刺激性下剤」の2タイプです。それぞれの特徴と期待できる効果をご紹介します。
機械性下剤
加齢により十分な食事がとれなかったり、ダイエットで食事制限をしたりと、食事量が少なくて排便に必要な量の便が作れないことが原因で起こる便秘の際に処方されます。腸を刺激せず、便自体の水分量を増やして柔らかくすることで、便の排出を促します。成分によって「塩類下剤」「膨張性下剤」「糖類下剤」などがあります。
「塩類下剤」は主成分をマグネシムとするもので、昔から広く使用されています。長期にわたって服用しても、効果が得られにくくなるといった習慣性もほとんどありません。安心して服用できる薬といえますが、高齢者や腎臓に疾患がある方の場合、服用法を誤ると「高マグネシウム血症」を引き起こすことがあります。用法・用量をきちんと守り、正しい使用を心がけましょう。
代表的な薬‥マグミット(酸化マグネシウム)
「膨張性下剤」は食物繊維のように薬自体が水分を吸収し、便のカサを増やして排便を促す薬です。緩やかに作用し習慣性も低く、自然な状態に近い排便を促します。
代表的な薬‥バルコーゼ(カルメロース)
「糖類下剤」も「塩類下剤」と同様、便の水分量を増やして柔らかくし、排便しやすくする薬です。しかしながら、「塩類下剤」のようにマグネシウムを含んでいないため高齢者や腎臓疾患をかかえている方も安心して使用でき、習慣性もありません。子どもにも処方されるほど安全性が確立されています。
代表的な薬‥D-ソルビトール/モニラック(ラクツロース)
刺激性下剤
大腸や小腸などを直接刺激し、ぜんどう運動を促して排便しやすくする薬です。下剤としての効果はとても高く、加齢や運動不足、ストレスなどから腸の運動がにぶくなる「弛緩性便秘」の解消に役立ちます。ただし、長期で服用すると耐性ができてしまい、効きにくくなることがあるので注意が必要です。刺激性下剤には「大腸刺激性下剤」「小腸刺激性下剤」「坐薬」などがあります。
「大腸刺激性下剤」は主に大腸へ作用します。大腸の働きが低下して排便しにくくなっている高齢者に向いている薬です。
代表的な薬‥プルゼニド(センノシドA・B)/アローゼン(センナ)/アジャストAコーワ(センナエキス)/ラキソベロン(ピコスルファートナトリウム水和物)
「小腸刺激性下剤」は小腸を刺激するタイプです。現在、下剤としてはあまり使用されていませんが、食中毒や食あたりなどの際に使用されることがある薬です。
代表的な薬‥ヒマシ油
「坐薬」は直腸の肛門に近い部分に作用する薬で、直腸に便が詰まっている場合や、飲み薬が使用できない際におすすめです。即効性がありますが、自然な排便が得づらくなるため、安易な使用は避けたほうがよいでしょう。
代表的な薬‥新レシカルボン坐剤(炭酸水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム)/テレミンソフト坐薬(ビサコジル)
便秘薬の処方は何科?
適切な便秘薬を処方してもらうため「いざ、病院へ」と思ったものの、何科へかかればいいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。一般的に便秘は、胃腸科で診察してもらいます。しかし慢性的な便秘の場合、ほかの病気が潜んでいる可能性もあるため、内科にかかるのがよいでしょう。消化器内科でも便秘を診てもらえるところもありますが、通常は胃、腸、肝臓などの消化器の病気を扱う科であるため、便秘の治療は行っていない場合も多いです。消化器内科へかかる場合は、便秘も診てもらえるか、事前に電話等で確認してから足を運びましょう。また、便秘を専門的に治療する「便秘外来」もありますが、大学病院など規模の大きなところでないと設置されていない場合が多く、足を運びにくいのが現状です。胃腸科であれば個人病院もたくさんあるので、家や職場の近く、最寄りの駅周辺など、通いやすい立地で探してみましょう。
病院での治療は便秘薬のほかにどんなものがあるの?
病院では、便秘解消に即効性のある医療行為として知られる「浣腸」や、下剤が苦手な方には「整腸剤」を処方してもらうこともできます。それぞれの特徴と効果をご紹介します。
浣腸
便が肛門近くの直腸で固まっているタイプの便秘に効果を発揮する医療行為です。肛門から直接薬液を注入することで腸を刺激し、排便を促します。即効性がありますが、急激な排便にともない血圧低下を引き起こすこともあるため、高齢者が使用する場合は注意が必要です。
整腸剤
腸内細菌のバランスを整えることで、便秘や下痢などの症状を改善していきます。少しずつ腸内環境を整えていくため即効性はありませんが、基本的に副作用もなく、体への負担がない安全な薬です。健康維持のため、日ごろから服用するのもおすすめです。
妊娠中や授乳中は便秘薬の処方はしてもらえるの?
妊娠中や授乳中は、大きくなった子宮や体内ホルモンの影響などを受け、食生活に気を付けていても便秘になりやすい時期です。特に妊娠中の女性は約半数が便秘になるといわれています。しかし、お母さんが口にするものは少なからず赤ちゃんに届くため、薬の服用には十分に気を付けなければなりません。安易な便秘薬の服用は避け、まずはかかりつけの産婦人科へ相談しましょう。一般的に妊娠中や授乳中は、副作用が少ない「酸化マグネシウム」を主成分とした便秘薬が処方されます。この薬は妊娠中や授乳中の女性が服用した場合の安全性と有効性が確立されており、安心して服用できます。また病院では処方以外にも、体への負担の少ない運動や生活習慣改善のアドバイスなどももらえます。
すばやく便秘を解消するなら……便秘薬
日常生活の中で便秘解消を心がけてもなかなかできない場合は、薬物療法が効果的です。そこでおすすめとなるのが、酸化マグネシウムの便秘薬です。
酸化マグネシウムは数ある便秘薬成分のなかでも「非刺激性下剤」に分類され、「刺激性下剤」と異なり腸を直接刺激せず便に作用して排便を促すので、お腹が痛くなりにくいばかりでなく、クセにもなりにくいという特徴があります。
健康食品やサプリメントなど、便秘解消に効果があるとされているものはたくさんありますが、「便秘薬」ですばやく便秘を解消し便秘の慢性化を防ぎましょう。
まとめ
病院では様々な便秘薬が扱われているため、症状や体質に合わせて適切な薬が処方されます。風邪や発熱など、ほかの疾患とくらべて緊急性を要しない便秘は、「病院へかかるほどではない」とつい足が遠のいてしまいがちですが、処方薬は早くすっきりと便秘を解消できる有効な手段の1つです。なかなか便秘が解消せずに悩んでいる人は、ぜひ一度、専門の医師に診てもらいましょう。