小児の
便秘について
便秘といえば大人が患うイメージがありますが、小児でも珍しくはありません。いきんでいるのに便が出ない、出ても量や回数が少ないという場合は、便秘の可能性があります。ここでは、小児の便秘とその原因、治療法について説明していきます。
小児の正常便について
成人と同様、小児の便秘も体質や生活習慣などによって発生する「機能性便秘」がその多くを占めますが、便秘ではない正常な便は以下の表の通りです。
期間 | 便の名称 | 色 | 性状 | におい | 回数 | |
---|---|---|---|---|---|---|
生後 0〜3日 |
胎便 |
黒緑色 黒褐色 |
濃厚、ネバネバ | 無臭 | 4〜5回/日 | |
生後 4〜7日 |
移行便 | 緑褐色 | 薄い、ヌルヌル | 無臭 | 4〜8回/日 | |
生後 7日以降 |
ミルク便 | 母乳便 | 薄緑色〜濃黄色 | のり状、軟膏様、ドロドロ、 水分が多い |
酸臭 | 1〜8回/日 |
人工乳便 | 黄色、黄褐色 (母乳栄養児よりも薄い) |
不均一、泥状、水分が少ない | 弱い酸臭 | 1〜4回/日 | ||
生後 1年以上 |
普通便 | 緑色〜黄褐色 | 有形 | 有臭 (食事内容による) |
1回/日 |
- 生後
0〜3日 -
便の名称:胎便
色:黒緑色、黒褐色
性状:濃厚、ネバネバ
におい:無臭
回数:4〜5回/日
- 生後
4〜7日 -
便の名称:移行便
色:緑褐色
性状:薄い、ヌルヌル
におい:無臭
回数:4〜8回/日
- 生後
7日以降 -
便の名称:ミルク便(母乳便)br
色:薄緑色〜濃黄色
性状:のり状、軟膏様、ドロドロ、水分が多い
におい:酸臭
回数:1〜8回/日
便の名称:ミルク便(人工乳便)br 色:黄色、黄褐色(母乳栄養児よりも薄い)br 性状:不均一、泥状、水分が少ない
におい:弱い酸臭
回数:1〜4回/日
- 生後
1年以上 -
便の名称:普通便
色:緑色、黄褐色
性状:有形
におい:有臭(食事内容による)br 回数:1回/日
生後、便の最初の排泄は24時間以内に行われ、以後生後3~4日目頃まで1日4~5回ほど胎便を排泄します。生後4~7日目までは、胎便とミルク便の混ざった便を1日4~8回ほど排泄します。便の回数は徐々に増え、通常であれば生後5日目に便の量が最も増えます。生後7日目頃からはミルク便が排泄されます。母乳を飲む赤ちゃんの場合は授乳の後に毎回便通があり、1日1~8回ほど濃黄色あるいは薄緑色の排便があるのに対し、人工ミルクを飲む赤ちゃんは比較的硬い黄色の便が1日1~4回ほど認められます。生後2ヶ月が経つ頃には便回数が減少し、生後1年までには1日1回となります。
便秘の原因について
小児は大人よりもいきむ力が弱いため便秘になりやすい傾向にあります。さらに、成長と共に変化する食事やトイレットトレーニング、ストレスなどによっても便秘を誘発する恐れがあります。
食事の量と質
食事の量が少なかったり、消化の良いものばかりを食べていたりすると、便の量が不足し、便意が起こりにくくなります。また、便を柔らかくする水分の摂取量が少ないと、便秘を引き起こしやすくなります。母乳や人工ミルク不足の他、牛乳や肉が多くて野菜や果物が少ない、繊維成分の少ない洋食中心の食生活も小児便秘の原因となるので注意が必要です。
誤った排便訓練
(トイレットトレーニング)
小児が一人での排便を怖がったり、嫌がったりしているのに無理に強制すると、却って排便を我慢する習慣が身に付いてしまいます。そうすると、直腸内に便が入って来ても便を出そうとする神経の反射・排便反射が徐々に弱くなってしまいます。
また、朝食を規則正しい時間に食べないと胃から腸への排便指令である胃・結腸反射が弱くなり、便意を催さなくなります。排便訓練は大人になるために大切な教育課程ですが、誤った訓練は正しい排便習慣を確立できないばかりか、便秘を助長することにもなりかねません。
また、朝食を規則正しい時間に食べないと胃から腸への排便指令である胃・結腸反射が弱くなり、便意を催さなくなります。排便訓練は大人になるために大切な教育課程ですが、誤った訓練は正しい排便習慣を確立できないばかりか、便秘を助長することにもなりかねません。
排便の我慢
便意を催した時に遊びに夢中だったり、学校の授業中でトイレに行きにくかったり、不潔なトイレを使うことが嫌だったりと、排便を我慢する子どもが学童期に多くみられます。また、肛門部に傷がある場合、痛みを恐れるあまり排便を我慢する傾向にあります。しかし、排便を我慢することで良いことは何もありません。排便を我慢し続けると、通常の直腸内の圧力では排便が困難となり、便秘になる可能性があります。
過剰なストレス
小児は、環境の変化や人間関係、親からのプレッシャーなどによって、過剰な精神的ストレスや欲求不満、心理的な葛藤を生じてしまい、自律神経が不安定になることがあります。その結果、便秘という異変が現れることがあります。腹痛を訴える小児が心身共に成長段階である小中学生に多く見られるのもそのためです。自律神経の交感神経と副交感神経が良いバランスで保たれていることで、スムーズな排便が行えるのです。
治療について
食生活の改善や生活習慣の見直し、運動を取り入れるなど、大まかな治療については大人と異なるところはありません。小児の体は成長過程にあるので、生活習慣を整えることを優先的に行いましょう。正しい生活習慣を送ることは便秘解消に有効なだけでなく、健康な体づくりにも繋がっていきます。
排便習慣の訓練
便意を我慢する習慣を付けてしまうと、腸の運動は弱くなるばかりか、便を出そうとする神経反射・排便反射も抑制されて便秘になってしまいます。この習慣を変えるためにも、胃から腸への排便指令である胃・結腸反射が強い朝食の前後に、時間を決めて排便する習慣を身に付けさせることが大事です。いつもより少し早く起きて、朝食の前後にゆっくり排便できる時間を作りましょう。便意を覚えたら我慢しないようにすることが大切です。
バランスのとれた食事
成人の弛緩性便秘では食物繊維を多く含む食事が推奨されていますが、小児でも同様のことが言えます。ただし、小児期は成長期でもあるので、動物性食品の摂取は避けられません。食事の栄養バランスが偏らないように、注意が必要です。また、起床後の冷たい水や牛乳の摂取は、便を柔らかくするだけでなく、胃・結腸反射を起こさせるのに効果的です。
適度な運動
適度な運動は腸の運動を活発化させます。それと同時に、便が自身の重さにより腸内を移動して便意を促すので、外でしっかり遊ばせることが大切です。運動をすると筋力が鍛えられ、いきむ力にもなります。また、目一杯遊ぶことでストレス解消にもなります。運動以外では、腹筋のマッサージもオススメです。マッサージによって腸を刺激することで、腸内にある便をスムーズに移動させることができます。
薬物治療
排便訓練やバランスのとれた食事、適度な運動を行っても改善が認められない場合は下剤を使った治療を行います。下剤には様々な種類がありますが、医療機関において小児の便秘によく用いられるのは、酸化マグネシウムなどの塩類下剤やマルツエキスなどの糖類下剤です。糖類下剤は腸から吸収されない特殊な糖でできており、甘くて飲みやすいのですが、効果がやや不安定なところもあるので、乳幼児に使用されることが多い下剤です。一方、酸化マグネシウムは糖類下剤に比べて少し飲みにくさがあるかも知れませんが、効果が確実で安全性が高く、クセになりにくいため、幼児や学童に最も使用されています。
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