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VOL.173 【医師監修】宿便は見た目でわかる?意味や原因、改善方法も紹介

テレビや広告などで、大腸に大量の宿便が溜まっているという話を聞いたことがあるかもしれません。なかには、「宿便を解消するだけで体重が落ちるのでは」と考えている方もいるのではないでしょうか。

しかし、宿便は医学的には存在しません。また、宿便が「腸内に溜まったヘドロ状の便」というのは誤解です。

今回は、宿便の本来の意味と見た目の特徴、原因をまとめて紹介します。あわせて、便秘の改善方法も解説するので、便秘で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

宿便とは?

一般的に「宿便」と聞くと、腸内に長時間溜まって、なかなか出にくい便と考える方が多いでしょう。このような便は宿便ではなく「滞留便」と呼ばれます。

前述のとおり、「宿便」は存在しません。

また、腸内に便はへばりついてることができず、理由として以下があげられます。

  • ・腸のぜん動運動により便が出ていく
  • ・腸管の上皮組織は新陳代謝で新しくなる
  • ・大腸の最初の部分にある便は、まだ液状のためくっつかない

大腸内に便が溜まることは、異常ではありません。また、常に空っぽになることはなく、「宿便を解消すると体重が落ちる」というのは、下剤で一時的に腸を空にして体重が落ちたように錯覚させているだけです。

そのため、剥がすだけで体重がガクっと落ちるような、ヘドロ状の便は本来存在しません。

今回は、便秘により大腸内に長時間溜まっている便について原因を解説します。

滞留便は見た目でわかる?

大腸内に長く留まっている宿便は、見た目に特徴があります。水分が少なく、コロコロとした硬いウサギの糞のような便や、バナナ状のごつごつした硬めの便で、色も黒っぽく、においが強いのが特徴です。

また、硬い便を排泄しようとするので、強くいきむことがあったり、排便しても残便感があったりすることがしばしばあります。肛門が詰まった感じがするといった場合も、便が溜まっている可能性があります。

便秘になる原因

便秘が起きる原因を紹介します。便が硬くてなかなか出ない方や、便秘と下痢を繰り返す方はチェックしてみましょう。

生活習慣の乱れ

食物繊維や水分の摂取不足、運動不足などが続くと、腸のぜん動運動が低下し、腸全体が緩んでしまうことがあります。

その結果、便の送達が遅くなり、腸に便がだんだん溜まってしまいます。便秘症状に悩んで食生活を見直しても改善されない場合は、運動不足が原因の可能性もあります。

便意を我慢する習慣

トイレにゆっくり座ることが少なく、いつも便意を我慢する習慣がある方は、直腸に便が溜まっても便意を感じにくくなってしまうことがあります。

便意を我慢し続けることで便が固まってしまい、便秘の原因になってしまいます。

ストレス

新生活のスタートや、転勤・異動、転校や受験など、環境の大きな変化などによって精神的な緊張やストレスがかかると、腸のぜん動運動をコントロールする自律神経のバランスが乱れがちになります。

自律神経のバランスが崩れると、腸が痙攣や収縮を繰り返し、便がスムーズに送られなくなることがあります。

このような状態が続くと、硬い便が溜まりやすくなるほかに、残便感や腹痛、腹部膨満感、ときには下痢を伴うこともあります。

腸の疾患

大腸がんや腸管癒着、潰瘍性大腸炎など、腸の疾患が原因で便のとおり道が変形したり、細くなったりするので、便秘が起きることがあります。

腸に疾患がある場合、便が細くなったり便が出にくくなったりするほか、激しい腹痛や血便、嘔吐などの症状があらわれることがあります。そのような症状が出た場合には、すぐに医師の診察を受けるようにしてください。

お薬の副作用

特定の薬剤を服用すると、腸管の働きを抑えてしまう副作用があらわれ、便秘症状が出てくることがあります。

服用しているお薬が原因で便秘の症状が疑われる場合は、医師や薬剤師に相談してみましょう。

便秘症状を改善する方法

便秘症状を改善する方法を以下で紹介します。日常生活の中で取り入れられる改善方法なので、ぜひ試してみてください。

食物繊維の摂取量を増やす

食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。水溶性食物繊維の摂取量を増やすことで便をやわらかくし、不溶性食物繊維の摂取量を増やすことで便のカサが増え、腸のぜん動運動を活発化することが期待できます。

しかし、便秘の原因によっては不溶性食物繊維の摂りすぎが、反対に便秘を悪化させてしまう場合があるため、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

食物繊維が豊富な食材には、イモ類や穀類、根菜類、海藻類、野菜類、果物などがあります。普段の食事に、これらの食材をバランスよく取り入れてみましょう。

なお、食物繊維が豊富な食べ物については、以下もあわせてご覧ください。

【医師監修】便秘に効く野菜は?解消のためにおすすめの食物繊維が豊富な食べ物を紹介

水分摂取量を増やす

便の約70~80%は水分が占めています。そのため、水分の摂取量を増やすことがよく推奨されていますが、必要以上に大量の水分を摂取しても、余分な水分は尿として排泄されてしまいます。

水分は1日2リットル程度を目安に、こまめに摂取するようにしましょう。

水分補給をこまめにすることで、大腸での水分の強い吸収が抑えられ、便にほどよく水分を残し、スムーズな排便を期待できるでしょう。

ただし、緑茶や紅茶、コーヒー、アルコール飲料などの利尿作用のある飲み物を多く摂取すると逆効果になってしまうことがあるため、水や白湯、麦茶などがおすすめです。

生活リズムを整える

生活リズムといえば、3度の食事や入眠、起床のタイミングを1日の中で決まった時間帯に据えていく習慣です。毎日を規則正しく生活することで、自律神経が整いやすくなり、便秘の改善を実感できる方も多いです。

朝食後の決まった時間にトイレの便座に座る習慣をつければ、排便リズムも整ってくるでしょう。

とくに、起床してから朝食後にかけては腸が大きく動くことが多いので、便意を感じやすくなります。便意を感じたときには我慢せず、早めにトイレに行って排便することが大切です。

例え便意を感じなくても、トイレに行く習慣をつけていくと、排便リズムがついてくることもあります。

適度に運動する

適度に運動をすることで、全身の血液循環がよくなり、腸のぜん動運動も促進されます。

例えば、ウォーキング、ジョギング、水泳などの全身を使った有酸素運動のほか、排泄時に腹圧をかけるときに使う腹筋を鍛える運動を試してみましょう。

また、運動をすることで、腸の働きを乱す原因となるストレスも解消されることが期待できます。

酸化マグネシウム便秘薬を服用する

酸化マグネシウム便秘薬とは、大腸内に水分を引き寄せ、便を柔らかくして排出しやすくするお薬です。お薬を服用してもお腹が痛くなりにくく、クセにもなりにくいのも特徴です。

ただし、酸化マグネシウム便秘薬をはじめて服用する方や、ほかにお薬を服用している方は、医師または薬剤師にあらかじめ相談してから服用してください。

また、酸化マグネシウム便秘薬を服用しても便秘が改善されない場合や、便秘以外の症状がある方は、早めに医療機関を受診しましょう。

なお、健栄製薬の「酸化マグネシウムE便秘薬」はオンラインショップでも購入できるため、薬局などで購入する手間を省きたい方はぜひ検討してみてください。

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酸化マグネシウム便秘薬だけに頼らず、食事の見直しや運動を取り入れて生活習慣を改善しながら、便秘を改善しましょう。

便秘の原因を知って改善を目指そう

冒頭でお伝えしたとおり、宿便は存在しません。

便秘により滞留した便の見た目は、ウサギの糞のようなコロコロした便や、ごつごつとした硬い便で、色もにおいも、普段の便とは異なった特徴があります。

便秘が起きる原因は、生活習慣や疾患などさまざまです。宿便・便秘が気になるときは、食習慣や生活習慣を変えることで改善される可能性があります。

どうしても改善されない頑固な便秘には酸化マグネシウム便秘薬を試してみるのも1つの方法です。

便秘の症状がしばらく改善されない場合は、医療機関を受診するようにしましょう。

高山医師よりコメント
宿便は存在しません。イメージとして植えつけられてしまっているものがありますが、強いていうならばひどい便秘です。コーヒー浣腸などでは販売者の逮捕事例もありますし、何よりもそうしたエセ医学に騙されるとご自身の健康を損ないます。エセ医学に惑わされないようお気をつけください。便秘についてはぜひコラムを参考になさってください。
監修者

医師:高山 哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
平成14年慶應義塾大学卒業、慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長。