VOL.172 【医師監修】お腹にガスが溜まる原因とは?ストレスとの関係と対処法を解説
お腹にガスが溜まるのは、さまざまな原因が考えられます。また、ストレスもお腹の症状に関与する可能性があります。
ストレスが原因の場合、根本的に改善するにはお腹にガスが溜まること自体への対処では不十分かもしれません。
今回は、お腹にガスが溜まる症状とストレスの関係を中心に説明し、適切な対処法を紹介します。加えて、ストレスそのものの解消法も具体的に説明しきます。
お腹の不快な症状をやわらげ、健康的に過ごすためにもぜひ参考にしてください。
ストレスが原因でお腹にガスが溜まることはある?
ストレスを溜めやすいタイプの方は、日頃から空気を飲み込む量も多い傾向があります。また、ストレスや緊張により唾を飲み込む癖などからも、空気を飲み込みやすいです。
お腹にガスが溜まる病気の1つである「呑気症」の原因にも、ストレスがあげられます。ストレスが溜まり腸の動きが鈍くなることで、ガスが溜まったり便秘になったりするケースもあります。
また、「過敏性腸症候群」もストレスが原因で発症しやすい病気です。
お腹にガスが溜まる主な原因
ストレスのほかにも、お腹にガスが溜まる原因には多様なものがあります。ストレス以外に考えられる主な原因は、以下のとおりです。
- ・早食いなどの食べ方
- ・ガスを発生させやすい食べ物の過剰摂取
- ・便秘
- ・運動不足
早食いは空気も一緒に飲み込みやすく、お腹にガスが溜まってしまう行為です。あまり噛まない、一口の量が多いなどの食べ方は、早食いになりやすいため見直しましょう。
消化されにくい食べ物には、食物繊維の多いものや肉類などがあげられます。ほかにも、小麦や糖類の多い食品を食べ過ぎると、腸内ガスが発生しやすくなるため注意が必要です。
また、便秘になると腸内ガスも溜まりやすくなってしまいます。便秘で腸内に滞留した便により、おならの排出が妨げられることもあります。
運動量が少ないと腸の蠕動運動が鈍り、お腹にガスが溜まりやすくなります。デスクワークなどで日常的に運動不足の場合は、とくに気をつけましょう。
お腹にガスが溜まる病気もある
お腹の張りは自然に解消されるケースもありますが、お腹にガスが溜まることが特徴の病気もあるため、放置しないことが大切です。
お腹にガスが溜まる場合に考えられる病気と、それぞれの特徴を見ていきましょう。前述の「呑気症」と「過敏性腸症候群」を含め、代表的な病気は以下のとおりです。
- ・呑気症:空気を無意識のうちに飲み込むことが原因で、ゲップやお腹にガスが溜まる症状が出やすくなる
- ・過敏性腸症候群:慢性的な腹痛や、下痢、便秘をともなう
- ・大腸がん:初期症状はほとんどなく、進行すると食欲不振や下痢、血便、細い便などの異変が出る
- ・機能性ディスペプシア:胃腸の不快感が続くが検査では異常が発見されない
- ・慢性胃炎:ピロリ菌感染やストレス、暴飲暴食などが原因で胃の粘膜が炎症を起こし、胃痛や吐き気を伴う
上記の病気が原因でお腹にガスが溜まっている場合は、いずれも適切な治療を行う必要があります。
症状が続く場合や、腹痛などほかの症状をともなう場合は、自己判断せず医療機関で受診しましょう。
お腹にガスが溜まるときの対処法
前述のような病気が原因の場合は受診が必要ですが、お腹の膨張感を一時的に取り除くことは自身でもできる可能性があります。
お腹にガスが溜まった状態をやわらげるために、できることを知っておくと便利です。日常生活の中でできる、お腹にガスが溜まったときの対処法を紹介します。
おならや便を我慢しないようにする
ガス(おなら)や便を出したいのに我慢すると、お腹の膨張感が悪化するため、できるだけ出すようにすることが望ましいです。
我慢を続けるとガスがどんどん溜まって、さらに苦しくなってしまいます。排便の我慢は便秘の原因にもなるため、便意を感じたタイミングでトイレに行きましょう。
おならは外出先や人前では出せないことを踏まえ、出しづらい環境の場合はトイレにこまめに行くようにすると良いでしょう。
お腹のマッサージやストレッチをする
お腹にガスが溜まっているときや便秘気味のときは、腹部のマッサージにより腸を刺激すると良いでしょう。刺激により腸の蠕動運動が促され、ガスや便の排出が促されます。
お腹(腸のある下腹部)に手のひらを当てながら、「の」の字を書くように時計回りにマッサージしましょう。痛みを感じない程度の力加減で滑らせるように手を当てるのがポイントです。仰向けになってリラックスした状態で、3~5分程度行うことが望ましいです。
ストレッチで骨盤を回したり腰をひねったりする動きにも、同様の効果が期待できます。
なお、便秘解消に期待できるマッサージやツボ押しを以下でも紹介しているため、ぜひご覧ください。
水分や食物繊維を摂る
水分や食物繊維の摂取により便秘を解消することで、お腹にガスが溜まりにくくなります。
便秘の解消には、便をやわらかくして出しやすくする水溶性食物繊維の摂取が望ましいです。果物や野菜、海藻類に多く含まれているので、日常的に摂取しましょう。
なお、前述のとおり食物繊維の摂取でも腸内ガスは発生しますが、過剰摂取しなければ問題ありません。
また、納豆やヨーグルトなどの発酵食品やオリゴ糖の摂取も、腸内環境改善に役立ちます。
食物繊維が多い食べ物を知りたい方は以下もあわせてご覧ください。
よく噛んでゆっくり食べる
早食いではなく、よく噛んでゆっくり食べる食べ方を心がけましょう。口から飲み込む空気が少なくなるため、ガスが溜まりにくくなります。
よく噛むと唾液が分泌されやすくなるため、空気を吸い込まなくても食べ物を飲み込めます。
また、よく噛めば食べ物が細かくなり消化されやすくなるため、胃腸への負担が軽減されるというメリットもあります。
消化されやすい状態で食べ物を胃腸に送ると、余分なガスの発生が抑えられます。さらに、噛むことにより満腹中枢が刺激されるため、食べ過ぎを防げるという意味でも胃腸に負担を掛けずに済みます。
市販薬を使用する
市販薬によりお腹の張りが改善される可能性もあります。消泡剤の働きで、お腹に溜まったガスの気泡を破裂させ、張りを落ち着かせる仕組みです。
ただし、消泡剤は一時的にガスを減らす役割のため、根本的な対処法ではありません。お腹にガスが溜まっているだけでなく便秘を伴う場合は、便秘薬の使用が適しているかもしれません。
便秘薬にはさまざまな種類がありますが、お腹が痛くなりにくく、クセになりにくい酸化マグネシウム便秘薬がおすすめです。受診するほどの症状ではない場合は、まず市販薬を試してみるのも良いでしょう。
ただし、はじめて服用する場合や、ほかに服用している薬がある場合は、医師または薬剤師に相談してから購入することが望ましいです。
なお、健栄製薬の「酸化マグネシウムE便秘薬」は、オンラインショップでも購入できます。仕事などで薬局へ行く余裕がない方は、ぜひ検討してみてください。
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上手にストレスを解消する方法
ストレスを日頃から溜めないようにすることも、お腹の張りや便秘の予防に重要です。そこで、無理なくストレスを解消するためにおすすめの方法を紹介します。
ストレスが溜まっていることを自覚していなくても、ぜひ日常的に取り入れてみてください。
意識的に休息を取る
多忙で心身ともに疲れている状態が続くと、気づかないうちにストレスが溜まりやすくなってしまいます。
十分に睡眠をとったり何もせず過ごしたりして、意識的に疲れを取り除くようにしましょう。心身の疲れを取るには、睡眠時間の確保が重要です。
また、ぬるめのお湯で20分程度ゆっくり入浴すると、リラックスしやすくなります。
何も考えず好きなことを楽しむ
料理、園芸、音楽、スポーツなど、興味のあることに取り組むと雑念が消えやすくなります。
好きなものを食べることや、読書や映画鑑賞などで感情移入することも、ストレス解消に良いでしょう。ただし、食べ過ぎや飲み過ぎは胃腸に負担をかけてしまうため、飲食でストレス解消する際は適量を守るよう注意が必要です。
また、良い香りを感じることでもリラックスできます。自宅でアロマテラピーやお香などを取り入れるのも、気軽にストレス解消できる方法です。
人と会話する
誰かに話を聞いてもらうことで気持ちが落ち着き、考えが整理されやすくなります。
また、気持ちや考えを言葉にして外に出すと、開放されストレスがやわらぐ効果もあります。一緒にいると安心するような、信頼できる相手と話すことが大切です。
リラックスしながらおしゃべりしたり笑ったりすることで、ストレス発散できるでしょう。
体を動かす
自宅でも気軽にできるようなストレッチや軽い運動も、ストレス解消に役立ちます。適度に運動すると入眠もしやすくなるため、睡眠の充実にもつながります。
習慣的な運動は、腸のぜん動運動を促し、お腹の張りの原因である便秘の解消にも効果が期待できます。運動する時間を作るのが難しい場合は、掃除や片付けなどの家事で体を動かすのもおすすめです。
お腹にガスが溜まるときの対処法とともにストレス解消法も実践しよう
お腹にガスが溜まる原因には、空気を飲み込みやすい食べ方やガスを発生させる食べ物の過剰摂取、便秘などがあげられますが、ストレスも1つの要因と考えられます。
お腹にガスが溜まって苦しいときは、便やガスを我慢し過ぎずに排出するほか、食べ方や摂取する食べ物の選び方を工夫することが重要です。
なお、便秘薬などの市販薬には症状をやわらげる効果が期待できるため、試してみるのも良いでしょう。
ただし、改善されない場合や腹痛などをともなう場合は、病気の可能性もあるため我慢せず受診しましょう。
お腹への直接的な対処法に加えて、ストレスを溜めないよう日頃から上手に解消することも重要です。ストレスを意識的に解消しながら、お腹の健康を維持しましょう。
- 高山医師よりコメント
- 自分の意思で腸の動きを調整することはできませんが、ストレスなどの精神状態は腸の動きに確実に影響を与え、様々な症状を引き起こします。なかなか難しいことですが、ストレスの解消に努めていきましょう。
- 監修者
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医師:高山 哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
平成14年慶應義塾大学卒業、慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長。