VOL.168 【医師監修】生理前になるとおならが出やすくなるのはなぜ?原因と対処方法を紹介
生理前になるとおならが出やすくなる、いつもよりにおいが強くなる、と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。生理前におならに変化が出るのは、女性ホルモンの分泌量が変化するためです。
そこで今回は、生理前におならがでやすくなる理由と臭いが強くなる原因、生理前のお腹の張り・おなら・便秘を改善する方法を紹介します。生理前のお腹の不調に悩んでいる方は参考にしてみてください。
生理前におならが出やすくなる理由
女性は女性ホルモンの分泌により、排卵や妊娠に適した準備を周期的に繰り返しています。
生理前におならが出やすくなる理由は、女性ホルモンのひとつである黄体ホルモン(プロゲステロン)が影響して身体が“便秘の状態”になりやすいからであると考えられています。
以下では、生理前に黄体ホルモン(プロゲステロン)が及ぼす影響と、おならが出やすくなる理由を解説します。
黄体ホルモンの分泌量がふえる
生理前には黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が増え、女性の身体は妊娠しやすい環境が整います。
このホルモンは排卵直後から分泌が増えるので、女性の基礎体温が高温期に入ります。
また、この時期は基礎代謝が上がり、受精卵が子宮内に着床しやすいように子宮内膜に厚みをもたせ、やわらかくなります。
黄体ホルモン(プロゲステロン)はこのような妊娠の成立と維持のために重要な役割があるほかに、体に水分を溜め込んでむくみやすくなったり、食欲が増したり、眠くなったり、イライラしたり、腹部の張りや痛みが出たり、お肌のトラブルが出たりと、身体的にも精神的にもさまざまな不調をもたらします。
腸の水分が吸収されて、硬い便ができやすくなる
黄体ホルモン(プロゲステロン)は、妊娠に備えて体に水分を溜め込む(=水分を吸収する)ように働きます。
口から取り入れた水分は、約90%が小腸で吸収され、残りの約10%が大腸で吸収されます。
黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で、小腸や大腸で起こる水分吸収が強まると、便に本来留まるべき水分も吸収されてしまい、硬い便ができやすくなります。
硬い便は排泄しにくくなるため、便と一緒に排出されるべきガスも腸内に留まりやすくなります。
腸に溜まったガスは、便通が滞ってしまうと行き場を失い、おならとして出てきます。
ぜん動運動が低下し、便通が滞りやすくなる
黄体ホルモン(プロゲステロン)は、着床後の流産を防ぐために子宮筋の収縮を抑える働きがありますが、大腸の動きも抑制するように働きます。
大腸の動きが鈍くなると、便を送り出すのに時間がかかり、大腸内に便が滞ります。腸に溜まったガスは便と一緒に排出されにくくなり、おならとして出て行きます。
生理前におならが出やすくなってしまうのは、黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響でもたらされる「便秘」と関連しているといえるでしょう。
生理前におならの臭いが強くなる原因
生理前におならの臭いが強くなるのは、黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で大腸の動きが鈍くなり、腸内に便がとどまりやすくなることで「腸内環境が悪化する」ことが原因と考えられています。
腸内環境は腸内細菌によって変化します。その腸内細菌には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種類が存在していて、それぞれがバランスを保っており、便が長時間大腸内に留まると、腸内は悪玉菌の勢力が優位な状態に傾きます。
悪玉菌はアンモニア・スカトール・インドールなどの臭いの強いガスを出します。悪玉菌優位な環境下では、腸内容物の発酵や腐敗が進み、生成されるガスもにおいが強いものになります。
生理前によるお腹の張りや不快感の対処法
生理前にはお腹の張り、それに伴う不快感を覚えることもあるでしょう。
ガスが溜まっていてお腹が張るケースでは、腸に溜まったガスの排出を促してあげるのがポイントです。以下では2つの方法を紹介します。
マッサージをする
生理前にお腹の張りを感じたときには、正面から見ておへその中心から腸の走行に沿って「の」の字になるようにお腹をマッサージすると良いでしょう。
親指以外の4本の指を使って30秒ほどで「の」の字が書けるくらいのスピードが目安です。
ただし、強く押しすぎないように注意してください。気持ち良いくらいの力加減でマッサージするようにしましょう。
腹式呼吸をする
生理前のお腹の張りや不快感には、腹式呼吸をすると良いでしょう。
腹式呼吸というのは、横隔膜が動き、腹腔の内圧が高まります。そうすると、刺激を受けた胃腸が活発になり、便秘の解消を促す効果が期待できます。
腹式呼吸は背筋を伸ばして(仰向けの状態でも良い)、鼻からゆっくり息を吸い込みます。おヘソの下あたりに空気を溜めるイメージです。
そして、口からゆっくり息を吐くときは、吸うときの倍の時間をかけるようにしましょう。
生理前によるお腹の張り・おなら・便秘の改善方法
女性ホルモンの分泌をコントロールすることはできません。
生理前にくるお腹の張り、おなら、便秘を改善するには、日常生活を規則正しく送ることが重要です。
以下にご紹介する生活習慣のポイントで取り入れられるものは実践してみてください。
栄養バランスの取れた食事をとる
お腹の張り・おなら・便秘の症状を改善するには、腸内環境を整える必要があります。
腸の動きを活発にするためには、栄養バランスの良い食事を3食しっかりと摂りましょう。とくに朝食は腸の働きを良くするために重要です。
また、栄養バランスは、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物をそれぞれ偏りなく摂る必要があります。これには農林水産省や厚生労働省が公表している「食事バランスガイド」が参考になります。
1日分の食事には「何を」「どのくらい」食べたら良いか、その目安が料理例とともに示されています。
そのなかでも副菜は根菜類や海藻類を中心とした料理になります。副菜で食物繊維をバランスよく摂りましょう。食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。
例えば、水溶性食物繊維はこんにゃく、海藻、果物など、不溶性食物繊維は根菜類、緑黄色野菜、豆類などに多く含まれています。それらの食材を取り入れた料理を積極的に摂っていきましょう。
生理前には「むくみ」に悩まされることもあります。食欲が増したり、味の濃いものが食べたくなったりするケースもありますが、塩分は摂りすぎず、カリウムを多くふくむ食材(バナナなど)も摂り入れましょう。
また、腸内環境を整えるには腸内細菌のバランスを維持することが大切です。腸内細菌には善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類が存在しており、とくに善玉菌のエサとなる食物繊維や発酵食品を積極的に摂るのがおすすめです。
十分な水分摂取をする
お腹の張りや不快感は“便秘”からきている場合が多いので、便秘を予防するために十分な水分摂取を心がけるようにしましょう。
ただし、一気に多量の水を飲むのではなく、1日かけて少しずつ水分補給をするようにしてください。
水分摂取の目安は1日2リットルですが、黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で、腸の水分吸収が起こりやすい時期には、普段以上に水分摂取の量を増やすことを心がけてください。
また、腸の働きを活発にするために朝はコップ1杯の水を飲むと良いでしょう。
軽い有酸素運動をする
お腹の張りやおなら、便秘を解消するには、軽い有酸素運動がおすすめです。運動すると、全身の血液の巡りが良くなるので、腸の働きも活発になり、便通が整います。
生理前にイライラしやすい方も、軽い運動により気分がスッキリする場合があります。
また、ストレスはホルモン周期を乱す一因にもなります。ストレスを溜めないように、気分転換になるような軽めの有酸素運動を日常生活に取り入れると良いでしょう。
酸化マグネシウム便秘薬を試してみる
お腹の張りや不快感が便秘によるものなら、酸化マグネシウム便秘薬を試すと良いでしょう。
便秘薬というとお腹が痛くなったり、クセになったりするイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、酸化マグネシウム便秘薬は腸内に水分を集めて便をやわらかくし、スムーズな便の排出を促します。さらにクセになりにくいという特徴もあるため、服用しやすい便秘薬です。
ただし、初めて服用する方や、ほかにお薬を服用している方、妊娠している可能性がある方は、あらかじめ医師や薬剤師に相談してから服用するようにしましょう。
なお、健栄製薬の「酸化マグネシウムE便秘薬」は、オンラインショップで購入可能です。生理前などで体調が優れず、薬局やドラッグストアへ足を運ぶことが難しい方は、オンラインショップでの購入も検討してみてください。
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生理前のおなら対策として便秘を予防しよう
生理前は黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で便通が乱れやすい時期です。とくに硬い便を伴うスムーズな排便が出来ないことによって、おならだけが出やすくなったり、おならのにおいも強くなったりする傾向があります。
黄体ホルモン(プロゲステロン)による影響をコントロールするのは難しいのですが、紹介した腹部マッサージや腹式呼吸を行えば、ガス溜まりによるお腹の張りを緩和できるかもしれません。
また、便通を改善するために酸化マグネシウム便秘薬を試してみるのも良いでしょう。
生理前のお腹の張り、おなら、便秘を根本から改善したいと考えるなら、生理前だけでなく、日ごろから便秘になりにくい生活習慣を身につけることが重要です。
栄養バランスの良い食事と水分摂取を心がけつつ、軽い有酸素運動を習慣づけてみると良いでしょう。
- 高山医師よりコメント
- ホルモンの影響は人によって異なりますが、時に耐えがたいこともあるかと思います。現在は便秘の薬も様々あります。生活習慣を改善しても効果が乏しい場合には、医療機関でもご相談ください。
- 監修者
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医師:高山 哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
平成14年慶應義塾大学卒業、慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長。