VOL.161 【医師監修】酸化マグネシウム便秘薬とは?特徴や服用前のチェック項目を紹介
便秘に悩んでいる方のなかには、便秘薬を試してみようか迷っている方もいるのではないでしょうか。また、どのような種類の便秘薬が良いのか、便秘薬の副作用が気になり、服用をためらっている方もいることでしょう。
便秘薬を初めて飲むなら、酸化マグネシウム便秘薬を試すと良いでしょう。
今回は、便秘の症状のおさらいをするとともに、酸化マグネシウム便秘薬の基礎知識や服用のタイミング、服用前のチェック項目を紹介します。便秘薬の使用以外で便秘を改善する方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
便秘の定義と症状をおさらいしてみよう!
2023年に刊行された「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症-」(編集:日本消化管学会)で、便秘の定義が見直されました。
内容は、「本来排泄するべき便が大腸内に滞ることによる兎糞状便、硬便、排便回数の減少や、便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難を認める状態」と定義されています。
便秘の3大症状は、「排便回数が減少する」「排便に困難感がある」「残便感がある」ですが、症状の感じ方や程度は個人差がとても大きいのも事実です。
また、便通トラブル以外にも、腹痛、肩こり、頭痛、食欲不振、睡眠障害などを自覚することがあり、慢性的な便秘では日常生活に支障をきたす場合があります。
さらに、前述のガイドラインでも、慢性便秘症は「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたし、身体にもさまざまな支障をきたしうる病態」と定義されています。
便秘を早めに改善するには「酸化マグネシウム」から試してみよう
便秘を早めに改善したい場合には、「酸化マグネシウム」から試すのが良いでしょう。なぜ酸化マグネシウムの便秘薬を試すのが良いのか、基礎知識や特徴を紹介します。
酸化マグネシウム便秘薬とは
酸化マグネシウムは、1823年(江戸時代)に日本に持ち込まれ、現在まで下剤として広く用いられてきました。
経口で服用すると、胃酸などの消化液と反応し、重炭酸マグネシウムや炭酸マグネシウムに変化して大腸内に送られます。腸内の浸透圧があがるので、浸透圧を維持するために大腸内に水分を引き寄せ、便を柔らかくする作用があります。
このような作用メカニズムから、酸化マグネシウム便秘薬は浸透圧性下剤に分類されています。
また、酸化マグネシウムの便秘薬は、長年使用されてきた経験から、少ない用量でも便通をコントロールしやすいです。
肝臓や腎臓などへの臓器障害性が低く、安全性が高い便秘薬ではあるものの、服用にあたっては副作用(高マグネシウム血症)の発現にも注意しなければなりません。
とくに、高用量(1日に1.5~2グラム)服用している方、長期間(1ヶ月以上)服用している方、高齢者(65歳以上)の方、腎機能に異常のある方は、高マグネシウム血症をおこす可能性があることに留意しましょう。
そのため、持病がある方や高齢者の方、長期的に服用する方は、あらかじめ医師や薬剤師に相談し、必要な際には血液中のマグネシウム濃度の測定を検討してもらいましょう。
酸化マグネシウム便秘薬でお腹が痛くなりにくい理由
前述のとおり、酸化マグネシウムの便秘薬は、腸壁から腸管内に水分を引き寄せる作用があります。そのため、便中の水分量が増えて便がやわらかくなり、便のかさが増して大きくなります。
かさが増した便によって腸が刺激を受け、腸のぜん動運動が促されます。腸の運動を強く刺激しないので、お腹が痛くなりにくい、非刺激性の便秘薬です。
酸化マグネシウム便秘薬がクセになりにくい理由
“クセ”とは肉体的・身体的な依存を指します。酸化マグネシウム便秘薬の有効成分がこのような依存性をもたらすことは、医学的に証明されておりません。
また、酸化マグネシウム便秘薬は腸の運動を強く刺激するわけではないので、だんだんと効かなくなる可能性は低いと考えられています。
そのため、酸化マグネシウム便秘薬で便通をコントロールできていれば、便秘薬をたくさん服用したり、もっと強い下剤を求めたりする依存性は低いと考えられています。
酸化マグネシウム便秘薬を服用するタイミング
酸化マグネシウム便秘薬の効果(水分を引き寄せる効果)が現れるのは服用してから8~12時間程度です。
ただし、個人差があります。便秘の方のなかには、腸の動きそのものが鈍っていることもあるため、服用してから大腸に送られて効果を発揮するまで1~数日かかることもあります。
就寝前に酸化マグネシウム便秘薬を飲むと、翌朝の排便のタイミングで丁度良く効果が現れやすいです。
なお、医療機関で処方された酸化マグネシウム便秘薬を服用する際には、医師の指示(用法用量)に従うようにしてください。
酸化マグネシウム便秘薬を服用する前にチェックしておくこと
酸化マグネシウムは便秘薬として長年使用されているため、ほかの食品や薬との相互作用も知られています。
酸化マグネシウム便秘薬を服用する前に、チェックしておかなければならない点を以下で解説します。
大量の牛乳を飲んでいないか
酸化マグネシウム便秘薬を飲んでいるときに大量の牛乳を飲むと、血液中のカルシウム濃度が高まることがあります。この“大量”の目安量は、一度に500ミリリットル以上、1日に1000ミリリットル以上と考えられています。
酸化マグネシウム便秘薬を服用する際には、コップ1杯の水、またはぬるま湯と一緒に飲むと良いでしょう。
ほかの薬を飲んでいないか
酸化マグネシウム便秘薬は、ほかの薬の吸収や排泄に影響を与えることが知られています。持病などでほかの薬を服用している場合には、酸化マグネシウム便秘薬を服用する前に医師や薬剤師に相談しましょう。
また、胃酸の分泌を強力に抑えるお薬を服用している場合は、酸化マグネシウム便秘薬を服用しようとしても、酸化マグネシウムの効果が十分に発揮されないおそれがあります。
酸化マグネシウム便秘薬以外に便秘を改善する方法
便秘の改善には、食生活の改善と適度な運動を取り入れてみましょう。以下でポイントを解説します。
食生活を改善する
排便回数が減っている便秘の場合、食物繊維を積極的に摂ることで便秘の改善効果を実感できることがあります。食物繊維には、主に水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。
水溶性食物繊維は腸内の善玉菌を増やしたり便を柔らかくしたりする効果が期待でき、不溶性食物繊維は便の量を増やして腸を刺激したりする効果が期待できます。
そのほかに、腸内環境を整える意味でも、乳酸菌食品を摂ることもおすすめです。
また、1日2リットル(目安)の水分を摂ることを心がけましょう。体が脱水状態に陥っていると、腸内での水分吸収が強く起こり、便が硬くなりやすいのです。
朝にコービーなどのカフェインを摂るのもおすすめです。腸の運動を促す効果が期待できますが、カフェインは利尿作用もあります。摂りすぎは水分不足を招くおそれもあるため、注意しましょう。
適度な運動をする
運動をすると血液の循環がよくなり、腸の動きが促進されます。また、腹部の筋肉が強化され、便の排出を助けてくれます。
さらに、便秘の原因となるストレスの解消効果も対できます。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動、腹筋運動がおすすめです。運動は無理のない範囲で少しずつ負荷をかけながら習慣化・継続化させることが大切です。
生活習慣の改善と酸化マグネシウム便秘薬で便秘を改善しよう
便秘の解消に、酸化マグネシウム便秘薬を試してみる方法があります。酸化マグネシウム便秘薬は、お腹が痛くなりにくく、クセにもなりにくい特徴があります。
また、安全性が高い便秘薬ですが、長期にわたって服用する場合や高齢の方、腎機能が低下している方は、副作用に注意する必要があります。
酸化マグネシウム便秘薬には、飲み合わせの悪い飲み物や薬があります。便秘薬を服用する前に、飲み物や薬との相性を医師や薬剤師に確認しておきましょう。
なお、便秘に対しては、便秘薬に頼る前に生活習慣の改善、食事の見直しが必要です。それらを継続しながら便秘薬を使用することで、便秘を解消しやすくなるでしょう。
- 高山医師よりコメント
- 酸化マグネシウムは日常の臨床でも非常によく用いる薬剤です。安全性が高く依存もしない良い薬です。ただし、効果には個人差があります。また、自己判断で過剰に内服したりすると副作用が出ることがあります。ぜひ、お気軽に医師や薬剤師にご相談ください。
- 監修者
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医師:高山 哲朗
かなまち慈優クリニック 理事長
平成14年慶應義塾大学卒業、慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長。