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VOL.157 【医師監修】浣腸にワセリンは使っても良い?適切な使い方を解説

グリセリン浣腸は肛門に薬液を注入して使うため、痛みや違和感を覚える方もいるでしょう。痛みや違和感を緩和するために、潤滑剤としてワセリンを使っても良いのか気になるところです。

今回は、浣腸を挿入するときにワセリンは使用可能かどうか、使い方まで詳しく説明します。

浣腸にワセリンは使って問題ない?

まず、浣腸にワセリンを使うことは問題ありません。グリセリン浣腸を使用する際に、ノズルの先端にワセリンを薄く塗って使うことがあります。

グリセリン浣腸は、肛門からノズルを挿入して薬液を注入します。ワセリンは浣腸の挿入時の痛みや不快感を軽減し、ノズル部分の滑りを良くしてスムーズな挿入が期待できます。

ワセリンを使った浣腸の方法

ワセリンを使って浣腸をする場合、どのタイミングでつければ良いのか、適切な浣腸の手順とあわせて解説します。

ステップ1. 浣腸の先端にワセリンをつける

湯煎で浣腸液を人肌程度(40度程度)に温めておくと、注入時の違和感が抑えられるでしょう。45度程度のお湯に、容器内の浣腸液がしっかり浸かるように、浣腸容器ごと温めます。

ただし、浣腸液を熱くしすぎると、注入した際に腸の粘膜が火傷したような状態になるので注意しましょう。

浣腸ノズルの先端にあるキャップを外し、ノズルの先端(1~2センチ程度)にワセリンを薄くつけます。ただし、浣腸液が出てくる穴をワセリンで塞がないようにしましょう。

ステップ2. 横になった状態で薬液を注入

浣腸すると短時間で便意を感じることが多いため、トイレの近くで浣腸を行うと良いでしょう。

体の左側面を下にして横になった状態でノズルを挿入します。うまく入らないときは一旦抜いてやり直しましょう。その状態で無理矢理挿入を続けるのは避けてください。ノズルが直腸粘膜に当たって傷つけてしまう可能性があります。

また、ノズルを挿入する深さは、こどもで3~4センチメートル、大人でも6センチメートルまでに留め、それ以上は挿入しないようにしましょう。こどもの場合は、一人での使用は避けるようにしてください。

ノズルを挿入したら薬液をゆっくりと注入します。注入のスピードは、30グラムの浣腸液で10秒くらいの時間を目安にします。注入後は、ティッシュペーパーや脱脂綿で肛門を押さえ、十分に便意が強まってからトイレで排泄してください。

なお、便意の強まり方には個人差があるため、便意を我慢する時間は目安に過ぎません。1~2分程度の我慢でも強い便意がある場合には、その時点で排泄しても構いません。過度に便意を我慢しないようにしましょう。

ワセリン以外の潤滑油

浣腸をスムーズにしてくれる潤滑油はワセリン以外の選択肢もあります。なるべく不純物の入っていないものを選ぶと良いでしょう。

例えばオリーブオイルです。オリーブオイルはオリーブの果実からつくられる植物油で、潤滑を目的に使用されることもあります。また、赤ちゃんの肌にも使用するベビーオイルでも良いでしょう。

これらのオイルは、綿棒浣腸の潤滑油に使用することもあります。赤ちゃんの便秘には綿棒浣腸で対処することがあり、綿棒の先にオリーブオイルやベビーオイルを塗布して、綿棒で肛門部を刺激して排便を促します。

ワセリンやオリーブオイルなどが用意できない場合は、グリセリン浣腸液(内容液)を少量だけティッシュに出して、ノズルに塗布するのも良いでしょう。グリセリンはヤシ油などからつくられる植物油で、湿潤や粘滑を目的に使用される成分です。

ワセリンを使って浣腸をする際の注意点

ワセリンを使うことでスムーズに浣腸ができるようになりますが、浣腸を使用するにあたって以下3つの注意点があることを覚えておきましょう。

持病や体調によって使用を控える

浣腸の使用自体を控えたほうが良い場合があります。

例えば、腸管から出血がある方、肛門周辺部に痔の症状がある方、激しい腹痛がある方、妊婦の方や妊娠している可能性のある方などは、浣腸を使用する前に必ず、医師や薬剤師に使用の可否を相談するようにしてください。

立った状態で挿入しない

浣腸の操作は、横になった状態(浣腸の形状によっては、トイレの便座に座った状態でも可)で慎重に行うようにしてください。

立った状態では、肛門周辺の筋肉に余計な力が入ってしまいスムーズにノズルが挿入できず、直腸粘膜を傷つけてしまう危険性があります。

副作用が出たらすぐに使用を止める

浣腸を使用して副作用が出たら、すぐに浣腸液を排泄してください。

その後は浣腸を使用することは控え、場合によってはその後に医師の診察を受けるようにしましょう。

副作用の症状として立ちくらみが現れたら、その場で体を横にするか、しゃがんで頭の位置を低くして安静にしてください。

また、肛門部の熱感や不快感が続いたり、排便時に血が混じったような便が出ていたりすれば、すぐに医師の診察を受けるようにしてください。

浣腸以外の便秘対策

便秘を解消するためには浣腸に頼りすぎず、根本的な解消を目指した対策をすることも大切です。以下では基本の便秘対策を3つ紹介します。

適度な運動をする

ウォーキングやジョギング、筋肉トレーニングなど、適度な運動で腸が刺激されると便が出やすくなります。

便秘の原因のひとつでもあるストレスや不安の軽減にも、運動は効果があります。毎日同じ時間に運動することで生活リズムも整ってくるでしょう。

食事の栄養バランスを整える

栄養バランスが偏った食事をしいていると便秘になりがちです。

1日3食バランスの良い食事を摂ることが大切です。野菜や果物などの食物繊維、ヨーグルトなどの乳製品は便秘解消効果が期待できます。また、水分は1日2リットルを目安に、こまめに摂取することが望ましいでしょう。

酸化マグネシウム便秘薬を試してみる

酸化マグネシウム便秘薬は大腸内の水分量を増やし、便をやわらかくしてくれる効果があります。

非刺激性のためお腹が痛くなりにくく、クセになりにくいのが特徴です。硬い便による排泄困難や、排便回数や排便量が減ってきたら試してみると良いでしょう。

ただし、便秘の症状が長く続く場合、酸化マグネシウム便秘薬を長期で服用する場合は医療機関を受診しましょう。

ワセリンを活用して浣腸をストレスなく使おう

ワセリンを使うことで浣腸挿入時のストレスを低減することができます。痛くならない浣腸の使用方法を知って、自身や家族の便秘改善に役立てましょう。

浣腸に抵抗がある方は酸化マグネシウム便秘薬も検討してみてください。

白畑医師よりコメント
便秘に悩む方は生活習慣の改善や見直し、投薬などで対応し、改善がない場合は浣腸を正しい知識で使用しましょう。浣腸を使用する際は、ワセリンを上手に使用し安全に快適に使用しましょう。また、浣腸を使用しても便秘が改善しない場合は、必ず医療機関を受診しましょう。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。