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VOL.156 【医師監修】浣腸の常用は問題ない?気になるリスクやそのほかの便秘対処法も解説

ひどい便秘に悩み、ひとまず浣腸を常用して便秘を改善したいと考えている方もいるでしょう。しかし、浣腸を常用しても問題はないのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

今回は、浣腸がどのような便秘に効果的なのか、浣腸を常用するリスクを解説するとともに、浣腸以外の便秘改善方法を紹介します。

浣腸は常用しても大丈夫?

一般的に浣腸とはグリセリン浣腸のことを指します。浣腸液は主にグリセリンと水で構成されています。これらの成分が身体的な依存性をもたらすことは医学的に証明されていないので、浣腸の使用を過度に恐れる必要はありません。

浣腸剤は内服薬では改善しにくい便秘に対して使用します。とくに直腸内に溜まっている便が排泄しにくい状態の「排便困難型」の便秘に効果的です。排便困難型の便秘かどうかは、医療機関で肛門内圧検査をすることで診断ができます。

そのため、浣腸を使用するのが効果的な便秘で、かつ直腸内の便を空っぽにする目的に対し、浣腸を常用することは問題ありません。

反対に、浣腸を使用しても効果があまり得られない便秘(=排便回数が減少しているタイプの便秘や、直腸内に便が溜まっていない状態)に対し、浣腸を常用することは適正な使用とはいえません。

また、長期にわたっての浣腸の常用は避けるようにしてください。浣腸の使用と並行して、内服薬の使用、生活習慣や排便習慣の改善などで便秘の改善を目指し、最終的には便秘薬に頼らずに排便ができるようにしていきましょう。

浣腸を常用するリスク

然るべき便秘に対して浣腸を常用することは、前述のとおり問題ありません。

しかし、長期にわたって浣腸を常用することで、心因的な依存や排便機能を弱める可能性があるので注意しなければなりません。

この「心因性な依存」というのは、「便秘解消のために浣腸する行為が習慣化して、浣腸なしには排便できないのではないかと考え、浣腸行為を止められない」ことをさします。

浣腸が習慣性にもつながるため、長期にわたる常用は避けるようにしましょう。

浣腸とは、肛門から薬液を注入する特殊な投薬方法です。そのため、浣腸を正しく使用しないと直腸を傷つけてしまうリスクがあります。

また、浣腸を使用する場合には、「浣腸後に十分に便意が強まるまで排泄を我慢する」、「血圧が大きく変動するおそれがある」、「体液量の減少で身体が脱水状態に陥るおそれがある」といった身体的な負担もあります。

長期にわたって浣腸を常用すると、このような身体的な負担や危険性も高まるため、限定的な使用に留めることが望ましいといえます。

浣腸を常用するほどつらい便秘は病気の可能性も

病気の症状として便秘が現れるというケースがあります。

代表的な病気として、大腸がん、クローン病のような腸に疾患が潜んでいる場合のほか、糖尿病や甲状腺機能低下症などの全身性疾患があげられます。

以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

  • ・排便できずに腹痛やお腹の張りが続く
  • ・便に血や粘液が混じっている
  • ・下痢と便秘が交互に訪れる
  • ・強い腹痛がある
  • ・嘔吐や発熱がある

浣腸とあわせて日常でできる改善方法

便秘の改善効果を実感できるまでには時間がかかります。長期にわたって浣腸を常用しないためにも、あわせて食・生活習慣で便秘を改善する必要があります。

以下では、日常生活でできる便秘の改善方法を紹介します。

決まった時間にトイレに行く

便意の有無にかかわらず、毎日決まった時間にトイレに行き、排便するための時間を取って習慣化するようにしましょう。

便秘になると、便意を感じにくくなる場合があるので、たとえ便意を感じていなくてもトイレに行くことが大切です。

また、排便姿勢も大切です。洋式トイレの便座に座って前屈みの姿勢を取り、膝の位置がへその位置よりも少し高くなるようにする(例えば、かかとを上げる、足置き台を使う)と、理想的な排便姿勢がとれます。

食物繊維の多い食事を摂る

1日3食、食物繊維の多い食事を摂ることで便の量が増え、腸を刺激してぜん動運動を促すことができます。

食事の内容が偏っていたり、過度なダイエットで食事量が減っていたりすると、便のもとになる量が少なくなり、排便回数が減ってしまう便秘になりやすいです。

この場合、食事を見直すことで便秘が解消することがあるので、食物繊維の多い食品(穀類や豆類、海藻類、きのこ類、野菜類、果物など)を積極的に摂りましょう。

また、一般的に起床後は腸管がよく動き、朝食を食べることでさらに腸の動きが活発になるため、朝食をとることはとても大切です。朝食後にトイレへ行くことも、排便習慣をつけるために適しています。

適度に運動をする

適度な運動をすると、自律神経系が刺激され、腸のぜん動運動が促されるので排便しやすくなります。

また、運動はストレス解消にもつながるため、自律神経の乱れを整えてくれます。ウォーキングなどの有酸素運動や腹筋・骨盤底筋を鍛える運動を試すと良いでしょう。

酸化マグネシウム便秘薬を使用する

酸化マグネシウム便秘薬は、浸透圧の作用で大腸内の水分量を増やすことで、便を柔らかくして排出しやすくします。排便回数や排便量が減少している便秘のタイプでは、改善効果を実感しやすいでしょう。

酸化マグネシウム便秘薬は市販薬としても入手しやすく、5歳以上のこどもから使用可能です。用法用量を守って正しく服用してください。

ただし、便秘薬だけを頼るのではなく、生活習慣とあわせて便秘改善を目指しましょう。

長期にわたる浣腸の常用は控え、ひどい便秘は医療機関に相談しよう

浣腸を用いるに相応しい便秘に対して、浣腸を常用することは可能ですが、使用を続けると心因的な依存や身体機能低下を招くおそれがあるため、長期にわたって使用することは控えたほうが良いでしょう。

また、浣腸を常用しなければいけないほど便秘がひどい場合は、その裏で病気が潜んでいるかもしれないので、医療機関を受診し、大腸の検査を受けるようにしましょう。

症状によっては浣腸とあわせて日常生活の工夫で便秘を改善できる可能性があるため、今回紹介した便秘改善方法をぜひ試してみてください。

白畑医師よりコメント
便秘に悩む方は生活習慣の改善や見直し、投薬などで対応し、改善されない場合は浣腸を正しい知識で使用してみましょう。浣腸を用いるに相応しい便秘に対して、浣腸を使用することは可能ですが、常用すると心因的な依存や身体機能低下を招くため、長期にわたって使用することは控えましょう。また浣腸をしても便秘が改善しない場合は必ず医療機関を受診しましょう。
監修者

医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。