VOL.154 【医師監修】便秘の症状に嘔吐はある?考えられるほかの疾患や対処方法を解説
便秘の症状がありつつ嘔吐もあった場合、嘔吐の原因が便秘にあるのか知りたい方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、便秘の症状に嘔吐はあるのか、便秘以外の原因の場合、可能性の1つとして考えられる疾患を紹介します。
吐き気を伴う辛い便秘のときでも手軽にできる便秘改善方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
便秘で嘔吐することはある
便秘でお腹が張ったり膨らんだりすると、食欲が減退したり、吐き気や嘔吐の症状が出る場合があります。
便秘になると腸内に有害物質が発生し悪玉菌が増え、これが吐き気や嘔吐の要因となる場合もあります。
便秘による嘔吐(吐き気)で考えられる疾患
便秘で嘔吐の症状がある場合、必ずしも便秘が原因とはいい切れません。
便秘と嘔吐(吐き気)の症状がある場合は、以下にあげる病気の可能性も考えられます。あくまでも1つの可能性ではありますが、心当たりがある場合は医療機関を受診するようにしましょう。
腸捻転・腸閉塞
腸が捻じれてしまう疾患で、比較的起こりにくいですが便秘や嘔吐の症状のほか、激しい腹痛、発熱などを伴うことがあります。
慢性的な便秘や加齢、薬の服用が原因としてあげられます。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群の場合、便秘や下痢の症状が出て、稀に嘔吐や吐き気も伴います。排便前に腹痛を感じるケースが多いです。原因は主に自律神経の乱れが考えられます。
潰瘍
胃潰瘍や十二指腸潰瘍は便秘や吐き気、胸痛や下血、吐血の症状があります。皮膚や粘膜が傷つく病気で、空腹時にみぞおち辺りに痛みを感じるケースが多いです。
大腸がん
大腸がんは日本でも罹患数が多い傾向にある病気で、便秘や嘔吐のほか、腹痛、便が細くなるなどの症状が現れる傾向があります。血便や下血の症状もあります。
便秘による嘔吐(吐き気)の症状があるときの対処法
便秘に伴う嘔吐や吐き気の症状がある場合は、以下のような対処法を参考にしてみてください。
- ・衣服をゆるめて胸やお腹を楽にする
- ・内関(ないかん)と呼ばれる手首の内側のツボを押す(手のひらを上にして、手首を曲げたときにできるしわから指3本分ほど離れた部分、手のひらを握ったときにできる2本の筋の間にあります。)
- ・クッションを使って体を起こすなど、楽だと感じる姿勢にする
- ・寝ているときに嘔吐した場合は、気管に入らないよう体と顔を横向きにする
- ・嘔吐後は背筋を伸ばして座り、体を前方に傾ける
便秘や嘔吐(吐き気)の症状があるときの食事
便秘症状に加えて嘔吐や吐き気の症状がある場合は、無理に食べようとしなくても良く、基本的に絶食が必要です。その際、絶食により脱水と低血糖に注意する必要があるため、スポーツドリンクや経口補水液がおすすめです。
嘔吐や吐き気の症状が落ち着いたら、1日3食の食事を心がけるようにしましょう。とくに、朝食は抜かずに食べることが大切です。
人間は寝ている間に腸管が最も活発に活動するため、朝食はお腹にとって良い刺激となり、1日の中で朝が最も排便をしやすいタイミングになります。
手軽にできる便秘改善方法
通常の便秘改善法として食事のほか運動習慣などがありますが、嘔吐や吐き気の症状があるときは無理に行わないことが大切です。
以下では、辛い便秘の症状があっても手軽にできる便秘改善方法を紹介するので、無理のない範囲でできることから試してみましょう。
お腹のマッサージを試してみる
マッサージで腸を刺激することで、排便を促す効果に期待ができます。
時計回りに「の」の字を描くマッサージや、S状結腸の硬くなった部分を押す腸揉みマッサージなどが効果的です。吐き気の症状が軽くなったときに試してみましょう。
生活リズムを整える
生活リズムを整えることで排便リズムが改善されることもあります。排便リズムを作るために、毎日決まった時間にトイレに行く習慣を身につけると良いでしょう。
また、睡眠不足は腸の動きを鈍らせる傾向にあるため、睡眠時間をしっかり確保することも大切です。
リラックスする時間を設ける
腸のぜん動運動は自律神経とも密接に関係しており、ストレスが溜まると自律神経が乱れ、便秘の要因となります。
日常でストレスを完全に解消するのは難しいですが、リラックスする時間を設けるよう心がけましょう。
市販の便秘薬を試してみる
便秘が改善されない場合は、市販の便秘薬を試してみるのも1つの方法です。
便秘薬にはさまざまな種類がありますが、酸化マグネシウムが配合された便秘薬は腸を刺激する成分を含まない非刺激性の便秘薬なので、お腹が痛くなりにくく、クセになりにくい特徴があります。
使用する際は用法用量を守り、ほかの薬を飲んでいたり持病があったりする方は、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしましょう。
便秘と嘔吐(吐き気)が治まらない場合は医療機関を受診しよう
便秘が原因で嘔吐する場合もありますが、必ずしも便秘が原因とは限らないので、気になる症状がある方は医療機関を受診しましょう。
嘔吐や吐き気の症状がある場合、通常の便秘改善(食事や運動など)は実施が難しいかもしれません。今回紹介した改善方法を無理のない範囲から始めてみましょう。
- 白畑医師よりコメント
- 便秘と嘔吐は密接な関係があります。便秘や吐き気を認める方は日常から食事や運動、投薬など便秘予防を心がけましょう。しかし、便秘の症状で嘔吐の頻度は多いですが、吐き気症状が継続する場合は、便秘以外の病気の可能性もあるため必ず医療機関を受診しましょう。
- 監修者
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医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。