VOL.148 【医師監修】便秘時に使う浣腸とは?効果や使い方、メリット・デメリットを紹介
頑固な便秘に悩み、浣腸を使用するべきか迷っている方もいるでしょう。
市販の浣腸剤は水とグリセリンを主成分とし、薬液を肛門から注入し、腸壁に刺激を与えてぜん動運動を促すと同時に、便を柔らかくして排泄を促す効果があります。
とくに、直腸内に溜まった便を排泄するのに効果的なのが浣腸です。
今回は、便秘解消に用いる浣腸の作用や成分、正しい使い方、メリット・デメリットをまとめて解説します。
便秘時に使う浣腸の効果とは?
一般的に浣腸剤といえば、50%グリセリン液を含む医薬品を指します。肛門から薬液を注入して、直腸に溜まった便を効果的に排泄したい場合に使用します。
グリセリン浣腸が排便を促すメカニズムは次のように考えられています。肛門から薬液を注入すると、グリセリン液が腸内に流れ込み、直腸内圧があがることで排便中枢が刺激されて、ぜん動運動を促します。
また、グリセリン液が便に浸透して硬い便を柔らかくし、便の滑りもよくするため、直腸に溜まった便が排出しやすくなります。
2ステップでわかる!浣腸の正しい使い方
浣腸の正しい使い方を2ステップにわけて紹介します。
ステップ1.事前準備
浣腸液は湯煎で人肌程度に温めます。ただし、液を熱くし過ぎると、注入したときに腸の粘膜に炎症が起きてしまうおそれがあるため注意しましょう。
浣腸液が温まったら浣腸のチューブ先端に装着されているキャップを取り外します。先端にワセリンやオリーブオイルなどを塗っておくと、肛門への挿入がスムーズになります。
ステップ2.薬液を注入
浣腸には即効性があります。薬液を注入すると急激に便意をもよおす可能性があるので、注入はトイレの近くで行うようにしましょう。
注入時の体位に気をつけましょう。医療機関での浣腸処置は一般的に体の左側を下にして横になった状態で行われます。この体位では、挿入時に余計な力が入りにくく、注入した薬液が腸管に流れこみやすいといわれています。
ノズルの短いイチジク型の浣腸を使用する際には、様式トイレの便座にやや前かがみになるように座って処置する場合もあります。
薬液はゆっくり注入します。注入速度は、30グラムの浣腸で10秒程度の時間を目安とします。注入した後は浣腸のチューブを肛門から静かに抜きましょう。そして、ティッシュペーパーや脱脂綿で肛門部を押さえ、便意が十分に強まってから排泄します。
便秘解消に浣腸を使うメリットとは?
便秘解消に浣腸を使うメリットを2つ紹介します。
年齢・性別を問わず使用できる
グリセリン浣腸液の主成分は水とグリセリンです。グリセリンはパームヤシを原料とする植物由来成分で、食品や化粧品にも使われています。
グリセリン浣腸は年齢・性別を問わず使用できますが、使用時には医師や薬剤師の指導助言、製品の説明書きなどを参考にしましょう。
また、市販薬には10グラムから40グラムまで10グラム刻みで製品ラインナップがあるため、使用年齢に応じて薬液の量を選択しましょう。
即効性があり、排便タイミングをコントロールしやすい
浣腸には即効性があり、直腸に溜まった便を排泄したいタイミングで使用できます。使用後は直ぐに便意をもよおすことが多いのですが、ある程度は排泄を我慢するとより効果的です。
ただし、必要以上に便意を我慢することは、迷走神経反射(血圧低下)を起こすおそれがあるため、苦しくなったら無理せずトイレで排泄しましょう。
便秘解消に浣腸を使う際の注意点
浣腸を使う前に、注意点も確認しておきましょう。以下では浣腸を使う際の注意点を紹介します。
痔や出血がある方・妊娠の可能性がある方は使用できない
肛門周辺に痔がある方、腸に出血がある方、下部消化管の手術直後の方は、浣腸自体を控えましょう。
妊婦または妊娠している可能性がある女性は、浣腸を使用しないほうが良いでしょう。浣腸を使用すると子宮の収縮が誘発されて早流産の危険性があるためです。
また、心臓に重い持病のある方、硬い便が多量に溜まっている方、高齢者は、事前に医師や薬剤師に使用の可否を相談しましょう。
副作用が出る可能性がある
グリセリン浣腸には副作用があります。例えば、血圧変動や直腸不快感、肛門部違和感などがまれに出現すことがあるため、浣腸剤を使用した後の体調の変化にはとくに注意しましょう。
直腸の粘膜を傷つけないようにする
浣腸を使用する際に最も注意すべき点は、浣腸のノズルが直腸の粘膜を傷つけないようにすることです。
浣腸ノズルを肛門から挿入しているときに少しでも抵抗を感じたら、無理やり挿入しようとせず、いったんノズルを引き戻し、挿入角度を変えて対処してください。
便秘症状がないときに使用しない
直腸付近に便が溜まっていないのに浣腸を繰り返すことは避けましょう。浣腸しても効果がほとんど見られないばかりか、浣腸を繰り返し使用することで心因的な依存が生じてしまうおそれがあります。
浣腸以外の便秘解消方法
浣腸に頼らずに、自身でできる便秘の予防・解消方法を5つ紹介します。
便意を我慢しないで早めにトイレに行く
便意を感じたら、早めにトイレに行く習慣をつけましょう。排便を我慢する習慣がついてしまうと、便が直腸に下りてきても排便反射が弱まり、便意を感じにくくなることがあります。
また、朝食後にはトイレに行って排便姿勢をとるなど、決まった時間に排便する習慣をつけることも大切です。
適度な運動やマッサージをする
適度に運動することで、腸のぜん動運動を促す効果が期待できます。腹部の筋肉を鍛えれば、腸の動きや排便をサポートする効果が期待できるでしょう。
まずはウォーキング、ヨガなどの有酸素運動や腹筋運動を試してみましょう。運動することが難しい場合には、おへそまわりに「の」の字を書くように腸をマッサージするのもおすすめです。
意識的に水分を摂取する
水分が少なく硬い便は排便しにくく、便秘につながりやすいです。硬い便が気になる方は、1日2リットルの水分を意識し、こまめに摂取するようにしましょう。
また、起床時にコップ1杯の冷たい水を飲むと、腸のぜん動運動を促す効果が期待できます。
食事で食物繊維を摂る
食物繊維は、便のカサ増しを期待できる不溶性食物繊維と、便を柔らかくすることに加えて、腸内細菌のエサとなって腸を整える効果が期待できる水溶性食物繊維に大別されます。
食物繊維が多く便秘解消におすすめの食材は、穀物や芋類、果物、生野菜、きのこ類、藻類などです。これらの食材を取り入れながら、1日3食をバランスよく食べることが大切です。
酸化マグネシウム便秘薬を使用する
酸化マグネシウム便秘薬は、腸管内に水分を引き寄せることによって硬い便を柔らかくし、便秘に効能効果があります。
また、お腹が痛くなりにくく、クセにもなりにくいのも酸化マグネシウムの特徴です。日ごろから便が硬く、スムーズな排便を望んでいる方は、この市販薬を試してみると良いでしょう。
浣腸を正しく使って頑固な便秘を解消しよう
浣腸は、肛門から薬液を注入することで腸壁に刺激を与え、直腸に溜まった便の排泄を促す医薬品です。
即効性があり、年齢や性別によらず使えますが、正しく・安全に使うことが必要です。
また、持病や体調によっては浣腸を使用できないこともあるので、使用に不安がある方や使用しても効果が出ない方は、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
- 白畑医師よりコメント
- 便秘に悩む方は日常生活改善・適切な食事や運動、投薬を心がけ『便秘の予防』に取り組みましょう。便秘は予防が最も大事であり、ひとたび便秘になってしまうと薬も効果が不十分になります。その際の便秘の解消の1つとして浣腸は有効であり適切な使い方を熟知しながら浣腸のメリットとデメリットを考えた上で便秘治療に取り組んでいきましょう。
- 監修者
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医師:白畑敦
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学藤が丘病院、市中病院で消化器外科医として勤務。大腸肛門病疾患でも研鑽を積み、2017年しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開設。大腸疾患(内視鏡治療・便秘治療・炎症性腸疾患など)・肛門疾患(痔核手術・便失禁治療など)を専門分野として診療。