コラム

【医師監修】乾燥肌とアトピー性皮膚炎の違いは?見極め方から治療方法まで徹底解説

2023.01.27|乾燥肌・スキンケア

乾燥肌で皮膚がカサカサになると、不快なかゆみの症状だけでなく、ときには炎症も伴います。つらい症状が続き「もしかしてアトピー性皮膚炎?」と疑問を抱いたことがある方も多いかもしれません。

アトピー性皮膚炎は乾燥肌がベースになっている場合が多いため、徹底した保湿ケアで肌にうるおいを与えることが重要です。

今回は、乾燥肌とアトピー性皮膚炎の違いから見極め方までわかりやすく解説します。アトピー性皮膚炎の原因や治療法も紹介するので、肌のかゆみや炎症に悩まされている方は、ぜひご一読ください。

アトピー性皮膚炎は皮膚に炎症が起こる病気

アトピー性皮膚炎になると、皮膚にかゆみがでるなどの症状があらわれます。症状が長引く場合もありますが、きちんと治療することで寛解をめざすことが可能です。

まずは、アトピー性皮膚炎の症状と原因について詳しく解説します。

アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎とは、皮膚に赤みのあるブツブツした湿疹ができ、強いかゆみが生じる病気です。症状が良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返します。

乾燥して皮膚がむけたり、かさぶたになったりするケースもありますが、強いかゆみを我慢できずに掻いてしまうと、さらに症状が悪化することもあります。

また、年齢によって湿疹ができる部位が異なるところも特徴です。乳児期には頭・顔、幼小児期は腕や膝の関節、思春期は首・胸・背中にできやすく、加齢とともに有症率は減少する傾向にあります。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎は、食べ物や生活環境、ストレス、生活環境に含まれるダニなどが複合的に重なり発症すると考えられています。年代ごとに主な原因とされるものは違い、赤ちゃんは食べもの、成人はストレスや生活環境などが多いです。

アトピー性皮膚炎になると、皮膚のバリア機能が低下し、肌内部の水分が蒸発しやすくなります。外部のさまざまな刺激に免疫が過剰反応を起こして炎症しやすくなるうえに、肌の水分量が足りないことから乾燥にも悩む方が多いのです。

また、アトピー性皮膚炎を発症する方は、ぜん息、アレルギー性鼻炎などを抱える家族がいることも多く、アトピー性皮膚炎になりやすい「アトピー素因」を持っている傾向が強くなっています。

乾燥肌とアトピー性皮膚炎の違いは?

乾燥肌とアトピー性皮膚炎は、どちらも乾燥した肌質が基盤にありますが、乾燥肌は「肌の状態」、アトピー性皮膚炎は「皮膚の病気」を指します。

乾燥肌とは、肌の水分が失われてうるおいがなくなり、皮膚がカサカサした状態のことです。本来、肌にはうるおいをキープするバリア機能が備わっていますが、加齢や紫外線ダメージによりバリア機能が低下すると、乾燥肌になってしまいます。

一方、アトピー性皮膚炎は、乾燥肌をベースとしてかゆみや湿疹が繰り返しあらわれる皮膚の病気です。成人は6ヶ月以上、乳幼児は2ヶ月以上、慢性的に皮膚炎を繰り返すことが定義とされており、湿疹や炎症は左右対称に発生する傾向にあります。

乾燥肌とアトピー性皮膚炎のどっち?判断するための検査方法

乾燥肌とアトピー性皮膚炎は、症状の具合を視診と触診で確認して判断されるもので、医療機関でも見極めるための特別な検査はありません。

しかし最近は、アレルギーの重症度を調べる「TARC」という血液検査で示された数値を判断材料にすることもあります。TARCの数値によって、アトピー性皮膚炎の薬の種類を決める、薬の量と強さを調節するなどの処置をとることが可能となりました。

また、かゆみや炎症があるにも関わらず、自分自身で「乾燥肌だから大丈夫」と決めつけることは望ましくありません。乾燥がひどい場合や、肌に湿疹などの異常があらわれている場合には、きちんと医療機関で相談し適切な治療を受けるようにしてください。

アトピー性皮膚炎の治療方法

アトピー性皮膚炎は、適切な治療を行って症状をコントロールすることで寛解をめざすことができます。

アトピー性皮膚炎の治療には、皮膚を清潔に保ってうるおいをキープすること、薬物によって皮膚の炎症を抑えること、悪化因子を見つけて排除することが必要不可欠です。

ここからは、薬によってアトピー性皮膚炎を治療する方法について、詳しく解説します。

ステロイド外用薬による薬物療法を行う

アトピー性皮膚炎は強いかゆみを伴うため、炎症をできる限り早く抑える必要があります。炎症を抑えるためによく使われるのが、「ステロイド外用薬」です。

ステロイド外用薬は、炎症を抑える作用の強さによって5段階に分けられており、症状に合わせて適した強さのものが処方されます。

ステロイド外用薬は、炎症が起きている部位や状態によっては、数回塗りなおさなくてはなりません。塗る量と塗り方は、医師の指示に従うようにしてください。使い方を間違ってしまうと、効果が十分に得られないこともあります。

タクロリムス外用薬で過剰な免疫反応を抑制する

タクロリムス外用薬は、過剰になっている免疫反応を正常に整える働きを持つ軟膏剤です。ステロイド外用薬とは異なるメカニズムで炎症を鎮めていくため、ステロイド外用薬を減らしていく際や、顔に使われることもあります。

塗ったあとに、一時的に痛みやかゆみが生じることもありますが、アトピー性皮膚炎の症状の落ち着きに合わせて、これらの副作用も軽減します。ただし、皮膚が膿んでいると使えないため、自己判断で塗らずに医師の指示に従うようにしてください。

JAK阻害薬を服用する

JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬は、アトピー性皮膚炎の改善をめざす内服薬で、2020年に登場しました。JAK阻害薬で治療する際にも、ステロイドやタクロリムスといった外用薬は併用します。

JAKとは、免疫を活性化するときに信号を出す役割を果たす酵素のことです。このJAKの動きを阻害することで過剰な免疫反応を抑制し、炎症の改善をめざします。

1日1回だけ内服すれば良いので手軽なのですが、小児や妊娠中の方、授乳中の方は服用できません。症状が軽快して使用を中止する際には、医師の判断を仰ぐようにしましょう。

アトピー性皮膚炎を悪化させる原因を取り除く

アトピー性皮膚炎の肌は、外部からの刺激に敏感になっている状態なので、肌状態を悪化させる原因を取り除かなくてはなりません。

アトピー性皮膚炎を悪化させるものとして、ダニ、ほこり、汗などが挙げられます。部屋の掃除はこまめに行い、汗をかいたらすぐにタオルでふき取って、肌を清潔に保つよう努めましょう。

また、ストレスや生活環境が原因でアトピー性皮膚炎が引き起こされているのであれば、生活習慣の改善に取り組むことをおすすめします。適度にストレスを発散し、バランスの良い食事をとり、十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活を心がけてください。

また、生活に関わるストレスだけでなく、かゆみのせいで眠れない、皮膚の赤みが恥ずかしくて外出したくないなど、アトピー性皮膚炎に関連するストレスはさまざまあります。ストレスを抱える状態が続くと、より症状が悪化する可能性もあるため、困ったときには医師に相談するようにしましょう。

アトピー性皮膚炎の方のスキンケア方法

アトピー性皮膚炎の寛解をめざすためには、皮膚を清潔に保ち、肌にうるおいを与えることが大切です。ここからは、アトピー性皮膚炎の方に適したスキンケア方法を紹介します。

汗や皮脂を洗い流す

汗や古い皮脂は、アトピー性皮膚炎を悪化させる原因につながる可能性があります。1日1回は入浴して、石けんを使用して汗や不要な皮脂を洗い流しましょう。

体を洗うときには、洗浄力が高すぎないものを選び、しっかりと泡立ててからこすらないように洗います。アトピー性皮膚炎の炎症でシワになっている部分には、汚れがたまりやすいので丁寧に洗ってください。

また、長く湯船に浸かったり、熱いお湯を浴びたりすると、かゆみを悪化させる場合があります。39~42℃程度のぬるめのお湯で、短めの入浴を心がけましょう。

入浴後に保湿剤を塗って乾燥肌をカバーする

アトピー性皮膚炎の肌は乾燥した状態なので、保湿剤を使って皮膚にうるおいを与えることが大切です。

とくに入浴後は、肌から水分が失われやすい状態になるため、入浴後5分以内を目安にして保湿ケアを行ってください。肌への刺激が少ないアイテムを選び、化粧水で水分を入れてから、手のひらでたっぷりと保湿剤を塗り広げましょう。

炎症がひどく、化粧水や保湿剤がしみるのであれば、肌を保護しながらうるおいを閉じ込めてくれる白色ワセリンの活用もおすすめです。

保湿ケアは継続することが大切なので、乾燥が気にならない時期にも手を抜かず、毎日しっかりと肌を乾燥させないようケアしていきましょう。

アトピー性皮膚炎は、乾燥肌をベースとした病気

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみや赤みのある湿疹が発生する慢性的な病気です。肌がカサカサ乾燥した状態なので、皮膚がむけてかさぶたができることもあります。

症状がひどくつらい場合には、医療機関で相談して適切な治療に取り組みましょう。良くなったり悪くなったりを繰り返す病気ですが、きちんと治療を行うことで寛解をめざせます。

薬による治療と合わせて、日々の肌ケアも徹底してください。入浴で汗や皮脂を洗い流して皮膚を清潔に保ち、入浴後には早めに保湿剤を塗ることをおすすめします。

ストレスや生活習慣など、アトピー性皮膚炎につながる要因をできる限り減らして、アトピー性皮膚炎の寛解をめざしましょう。

川﨑医師よりコメント

大人でも季節の変わり目だけ症状がでる、軽いアトピーの方は多数おられます。症状が出る場合は早めに医療機関にて適切な薬を処方してもらうのをおすすめします。

医師・川﨑加織
監修者
医師・川﨑加織

皮フ科かわさきかおりクリニック院長。医学博士、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会専門医。 兵庫医科大学病院初期研修医、皮膚科入局からキャリアをスタートし、病院やクリニック勤務を経て、現クリニックを開院。 皮膚科専門医として、女性医師として、母として、患者さんの心と身体に寄り添うことを信条としている。

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