コラム
【医師監修】赤ちゃんのスキンケアにヘパリン類似物質がオススメな理由
2022.12.08|乾燥肌・スキンケア
赤ちゃんの肌は、柔らかくすべすべしたイメージですが、実はとてもデリケート。日常のちょっとした刺激でも肌トラブルを起こしがちなので、普段からのスキンケアが欠かせません。その際、ヘパリン類似物質を含む保湿剤がよいと耳にすることがありますが、具体的にはどのような効果があるのでしょうか。今回は赤ちゃんの肌の特徴と、ヘパリン類似物質がおすすめな理由を解説します。
赤ちゃんにスキンケアが必要な理由
●赤ちゃんの肌の特徴
赤ちゃんの肌は大人と同じ構造をしていますが、肌表面の表皮部分は大人よりも薄く、肌全体の厚みも大人の半分ほどです。そもそも表皮は、肌内部の水分を保持するとともに、外的刺激から肌を守るという”バリア”の役割を果たしていますが、赤ちゃんは表皮が薄いため、バリア機能そのものも未熟なのです。その上、汗やよだれ、おむつによる摩擦など日常的なちょっとした刺激によって、細菌やホコリなどが肌内部に侵入しやすく、傷つきやすいです。さらに、赤ちゃんの皮脂分泌量は、生後3カ月ごろまでは多いものの、それを過ぎるとどんどん減って肌の乾燥が始まります。こうした肌のバリア機能の未熟さと乾燥のしやすさによって、「乳児湿疹」や「アトピー性皮膚炎」といった肌トラブルが起こりやすいと考えられています。
●乳児湿疹とは
乳児湿疹とは、生後2週から数カ月の間に多くみられる湿疹の総称で、症状やできる場所などで、さまざまなタイプがあります。以下が主なものです。
・脂漏性湿疹
生後1~3カ月ごろ、皮脂と頭の汚れが混ざってできる黄色いかさぶた状の湿疹で、おでこやまゆ毛、髪の生え際などにみられます。
・新生児ざそう
生後1週から3カ月ごろ、頬やおでこにできる赤いブツブツで、かゆみはありません。
・あせも
顔や首、背中やわきの下など汗の多い部分にでき、かゆみをともなうこともあります。
そのほか、「おむつかぶれ」や「よだれかぶれ」なども多くの赤ちゃんにみられます。また、頭や顔から始まった湿疹が体にも広がり、それが2カ月以上続く場合は「アトピー性皮膚炎」の可能性があります。いずれの乳児湿疹も、予防や治療には毎日のスキンケアが重要とされているので、保湿剤などを適切に使って、肌の乾燥とバリア機能の低下を防ぐことが大切です。
赤ちゃんのスキンケアにヘパリン類似物質がオススメ
ヘパリン類似物質は、人の肝臓で生成される糖類の一種「ヘパリン」に似た保湿成分で、乾燥肌やアトピー性皮膚炎の治療のために長年採用されてきました。肌内部の角質層まで浸透し、作用するのが特徴で、水分を引き寄せてそれを保ち続けることで肌を潤します。保湿力に優れている上、副作用などの心配もほとんどなく、安全性が高いとされることから、肌がデリケートな赤ちゃんにも安心して使えると考えられています。
ヘパリン類似物質が配合された主なスキンケア製品には、保湿効果が高い順に、クリーム、ローション、スプレーがあり、ドラッグストアなどで購入できるものもあります。赤ちゃんの肌の状態や、使用する部位、使用感などに合わせて選んでください。
ヘパリン類似物質入りの保湿剤を使った赤ちゃんのスキンケア法
入浴後やオムツ交換の後、食事の後などは、肌が乾燥しやすくなっているため、こまめに保湿をしましょう。特にお風呂の後は、皮膚が柔らかく保湿剤が浸透しやすいといわれています。お風呂上がりの5~10分以内に保湿剤を塗るとよいでしょう。ティッシュペーパーが肌にくっつく程度が使用量の目安とされています。
顔に塗る場合は、保湿剤を点状にのせ、円を描くようにくるくると広げていきます。乾燥しやすい口や目の周りは丁寧に塗りましょう。小鼻のわきや耳の後ろも忘れずに塗ってください。体に塗る場合も保湿剤を点在させ、手のひらで優しくマッサージするように伸ばしていきます。わきの下や首回り、足のつけ根などはシワをのばして塗るのがポイント。強くすり込むと刺激になることがあるため要注意です。
なお、ヘパリン類似物質には血液が固まるのを防ぐ作用があるため、ひどいおむつかぶれやあせもなどで出血している場合には使用を避けてください。目を見て話しかけながら塗ると、赤ちゃんも安心でき、いいスキンシップになるでしょう。
まとめ
さまざまなトラブルを引き起こす乾燥から、大切な赤ちゃんの肌を守ってくれるヘパリン類似物質。全身に使えて副作用もほとんどないことから、毎日のスキンケアにこまめ取り入れていきたいところです。ドラッグストアなどでも、ヘパリン類似物質が配合された保湿剤が購入できるため、効果的に使用しましょう。
- 監修者
- 医師・中島由美
金沢医科大学医学部を卒業後、大学病院で小児科、市中病院で内科医として勤務。皮膚科、美容皮膚科でも研鑽を積み、2018年クリスタル医科歯科クリニックにて内科、アレルギー科、美容皮膚科を開設。内科院長として勤務。
中島医師よりコメント
赤ちゃんの肌はバリア機能が少なく、汗やホコリ、オムツ擦れなどで肌荒れを起こすことがあります。赤ちゃんの肌を毎日観察して、肌を外的刺激から守るためにも、毎日保湿を行いましょう。ヘパリン類似物質を手のひらで優しく肌に塗ると良いでしょう。