コラム
【医師監修】ワセリンの効果や注意すべきポイントについて
2022.12.05|乾燥肌・スキンケア
保湿剤として病院で処方されたり、薬局やドラッグストアで見かけたりするワセリン。「乾燥肌の対策にワセリンがいい」とよくいわれますが、直接肌に付けるものだからこそ、副作用はないのかが気になります。今回は、ワセリンの副作用の有無や使用上の注意点についてご紹介します。
ワセリンの効果とは
ワセリンとは石油を精製した保湿剤で、色は精製度に応じて淡い黄色から白色をしています。保湿剤といっても、ワセリンそのものに保湿成分が含まれているわけではなく、肌の表面に油膜を張ることで皮膚の内側からの水分蒸発を防ぎ、肌の乾燥を阻止すると考えられています。また、油膜には外部の刺激から皮膚を守る保護効果も期待できるので、オムツかぶれや靴擦れなど、摩擦によって引き起こされる肌のトラブルの予防にも重宝します。
●ワセリンの使い方
このような保湿・保護効果を生かして、乾燥が気になる部分に薄く塗るなど保湿ケアに用いられることが多いワセリン。入浴後や洗顔後など皮膚が湿っている時に、化粧水や乳液などで肌を保湿した後、仕上げにワセリンを塗ると、就寝中の肌の乾燥からしっかり守ってくれます。
また、少量のワセリンを唇に薄く伸ばすように塗ると、唇の乾燥を防ぎ、リップクリームの代わりとして使えます。口紅を塗った上にワセリンを薄く塗れば、口紅の色落ち防止にもなるので、メイク直しの時間がない時に便利です。
さらに、髪の毛の保湿や保護にも効果が期待できます。シャンプー後、タオルドライした髪全体にワセリンをもみ込んでおくと、ドライヤーで乾かす時に油膜がバリアの役割を果たし、熱風や摩擦によるダメージから髪を守ってくれるでしょう。
このほか、軽度の擦り傷や切り傷の処置にもワセリンが使えます。ワセリンで傷口を覆って保湿・保護することで、傷口の乾燥が防げます。それにより、細胞の再生を促進する成分を含む液の滲出を促すため、傷を早くきれいに治すことができると考えられています。まず、傷口をきれいに洗ってワセリンを薄く塗り、その上から絆創膏を貼って保護します。痛みがある場合は、傷口よりやや大きめに切ったラップを用意し、ラップにワセリンを塗って傷口に当ててから絆創膏を貼るとよいでしょう。
ワセリンに副作用はある?
基本的には、ワセリンによって副作用が引き起こされることはほとんどなく、ワセリンの使用によるアレルギーの心配もほとんどないと考えられています。石油が原料だと聞くと、肌に良くない印象を受けるかもしれませんが、精製の段階で肌に刺激の強い不純物はほとんど取り除かれているため、赤ちゃんから大人まで、年齢を問わず安心して使用できるといわれています。
ただし、ワセリンは製品によって精製度が異なり、アトピー性皮膚炎や敏感肌の人が精製度の低い製品を使用すると、かぶれやかゆみ、発疹などの接触性皮膚炎を引き起こすことがあるようです。万が一このような症状が現れた場合は、ただちに使用を中止し、医療機関を受診するか、薬剤師に相談してください。その際、使用した製品を持参するか、製品名を伝えるようにしましょう。また、手や口に付着したワセリンが、食べ物を介して口に入る程度なら摂取しても問題はないとされていますが、誤って大量に摂取してしまった場合は、吐き気や下痢などを引き起こす可能性があるため、小さな子どもが扱う際は注意しましょう。
ワセリンを使うときの注意点
ワセリンは安全性が高く、日常的に使用しても問題ないとされていますが、使用の際は次の点に気を付けましょう。
●使用前にパッチテストを行う
先に述べた通り、ワセリンによる副作用の心配はほとんどないと考えられていますが、念のため使う前に二の腕の内側に少量を付け、肌が赤くなったりかゆくなったりしないか確認してから使用しましょう。特に、アトピー性皮膚炎の人や、以前に塗り薬によるかぶれなどのアレルギー症状が現れたことがある人は、パッチテストを行うようにしてください。
●顔には精製度の高い「白色ワセリン」を使う
ワセリンは精製度が高いものほど、肌への刺激も少なくなります。一般的に薬局やドラッグストアで販売されているのは、不純物の少ない「白色ワセリン」と呼ばれるものです。顔に使用する時はこの白色ワセリンを選びましょう。また、赤ちゃんや敏感肌の人に使う時は、白色ワセリンの中でも精製度の高い製品を選ぶようにしましょう。
●少量を薄く付ける
ワセリンを多く塗り過ぎると、ベタつきやテカリが気になります。顔に塗る場合には、まず米粒2つ分程度を手に取り、足りなくなったら同量をプラスするようにしましょう。ワセリンを手のひらに取ったら温めながら薄くのばし、顔を包みこむように軽く押し当てます。その際、手で顔をこすると摩擦で皮膚を傷めるので、手の位置を何度か変えて付けましょう。
また、ヘアケアに用いる際も、乾燥しやすい毛先は念入りに塗るとよいですが、髪の毛全体に付け過ぎるとベタつくので気を付けてください。指先で少しずつ塗っていくようにすると、付けすぎを防げます。
●容器内を清潔に保ち、保管場所に気を付ける
基本的に、白色ワセリンは腐敗や酸化といった変質が起こりにくく、防腐剤などが無添加の製品も多く市販されています。しかし、汚れた手でワセリンに触れると雑菌が混入する恐れがあります。綿棒やスパチュラを使用するか、きれいに洗った手でとるようにしましょう。チューブ型の製品を使用するのも衛生的でオススメです。
また、フタを開けっぱなしにしたり、直射日光が当たる環境で保管したりすると変質の原因となります。日差しが当たらず、高温多湿にならない場所で密栓して保管してください。開封後は、製品に記載された使用期限を目安に使いましょう。
●赤ニキビができている時は使用を控える
ワセリンには薬効成分はなく、抗炎症作用もありません。ニキビの原因や状態によっては、ワセリンの保湿・保護効果が有効に働くこともあるようですが、アクネ菌が毛穴の内部で増殖して症状が進行した赤ニキビの場合は、ワセリンの油膜で毛穴をふさぐことで、かえって症状を悪化させてしまう恐れがあります。ニキビが気になる時は安易な使用は控えましょう。
まとめ
肌への刺激や副作用の心配が少ないワセリンは、顔や身体の保湿からヘアケアにもと、さまざまな用途に使える優れもの。紹介した注意点に気を付ければ、目元や唇などデリケートな部分や、赤ちゃんの肌にも安心して使うことができます。薬局やドラッグストアでも手軽に購入できるワセリンを、毎日のスキンケアに取り入れてみてはいかがでしょうか。
- 監修者
- 医師・木村眞樹子
都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。
木村医師よりコメント
ワセリンは油でできているため暖かい時期には柔らかく、寒い時期には固くなります。また、肌の上に乗せると温められて柔らかくなるので、肌に塗るときには手にとって伸ばすと薄く伸ばすことができて扱いやすくなります。副作用などはほとんどありませんが、使い方を間違えるとワセリンの効果が発揮されませんので、特徴を理解して使うようにしてください。